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▲ 施設の外観 |
質の高い医療、保健、福祉を提供
山形県米沢市にある一般財団法人三友堂病院は、「信頼と融和で築こうよい病院」という法人理念のもと、地域に密着した質の高い医療、保健、福祉サービスを提供し、社会に貢献していくことを目指している。
法人の沿革としては、明治19年に前身となる三友舎を創設したことにはじまる。その後、三友堂病院と組織を改め、平成25年に一般財団法人化している。法人施設は、急性期医療を担う三友堂病院と回復期・慢性期医療を担う三友堂リハビリテーションセンターの2病院をはじめ、サービス付き高齢者向け住宅、デイケア、訪問看護、訪問介護、居宅介護支援事業所を併設する三友堂地域リハ・ケアセンター、看護専門学校を運営。急性期医療を中心に時代の要請に応じた医療を提供することに努め、地域医療の充実と発展に尽力してきた。
医療機関の再編モデルとして注目
同法人は、令和5年11月に三友堂病院と三友堂リハビリテーションセンターを統合し、同じ市内で急性期医療を担う米沢市立病院の同一敷地内に新築移転を行い、機能分化・医療連携を図っている。公立病院と民間病院が経営母体はそのままに同一敷地内に併設することは全国的にも例がなく、今後の医療機関の再編モデルとして注目されている。
米沢市の医療提供体制と統合移転を行った経緯について、理事長の仁科盛之氏は次のように説明する。
「当院が所属する置賜二次医療圏の人口は、令和2年度の約20万人から令和22年度には約14万7,000人に減少し、高齢化率は33.5%から39.4%まで上昇することが推計されています。人口減少と高齢化に伴い、医療需要の減少による病床稼働率の低下、医師をはじめとする医療スタッフの不足により、とくに救急医療体制の維持が困難となり、医療機能の再編は喫緊の課題となっていました。医師不足や常勤医師の高齢化がさらに加速することが予測されるなか、米沢市立病院でも医師をはじめ、医療スタッフの確保が厳しいとの話があり、今後2つの病院で急性期医療を維持していくことは困難であることは明白であり、研修医を派遣する大学病院からも急性期医療の一本化を求める声があがっていました」。
こうした課題を解決するため、米沢市は平成29年度に「米沢市医療連携のあり方検討委員会」を発足し、救急医療の維持・強化についての議論を開始した。その結果、米沢市立病院と三友堂病院が機能分化・医療連携を進め、米沢市立病院は救急・急性期医療を担い、三友堂病院は回復期機能に特化するとともに、慢性期の人工透析、緩和ケア、訪問看護、健診部門などを担うこととなり、医療連携の強化を図るため、米沢市立病院の敷地内に両院が新病院を開設する計画の方向性が示された。その後、山形県地域医療構想調整会議の場において議論を重ね、事業計画が承認されている。
同時に、今後の人口減少や疾病率の変化などに対応した病床再編を実施。再編前の三友堂病院は、高度急性期5床、急性期114床、地域包括ケア54床、緩和ケア12床の計185床、三友堂リハビリセンターは回復期リハビリテーション120床であったが、再編後は回復期リハビリテーション90床、地域包括ケア87床、緩和ケア22床の計199床とし、回復期機能の強化を図った。一方、米沢市立病院は高度急性期5床、急性期263床、回復期リハビリテーション54床の計322床から高度急性期18床、急性期245床の計263床とし、両院とも病床規模を減床し、ダウンサイジングを図った。
なお、今回の事業計画は、「骨太の方針2019」における医療機能の再編、病床数の適正化に沿った計画として令和3年1月に厚生労働省より地域医療構想の「重点支援区域」に選定され、総合確保基金の優先配分を受けている(補助金総額9億円超)。
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▲▼ 地域包括ケア病棟の病室(4人室)とデイルーム | ▲ 令和5年11月にリニューアルした三友堂病院の総合受付 |
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▲ 各病棟の中央に設置したスタッフステーションは、窓ガラスや仕切りがなく、患者・家族が声をかけやすい設計となっている |
地域医療連携推進法人を設立し、連携を推進
さらに、令和5年9月に米沢市と同法人で地域医療連携推進法人「よねざわヘルスケアネット」を設立し、果たすべき役割を明確化し、機能分化を図ることにより、地域医療の提供体制の維持・強化と経営の効率化を図ることを目指した。具体的な連携としては、高額医療機器の共同利用、病床融通や医療従事者の人事交流、患者情報の共有、患者の紹介・逆紹介などを推進することで合意している。
また、統合移転にあたっては、病院の後方施設として、令和6年2月に三友堂リハビリセンターの跡地に介護医療院を開設しており、旧三友堂病院の跡地については有効活用に向けた検討を行っている。
令和5年11月に新病院を開設
令和5年11月にリニューアルオープンした三友堂病院の敷地面積は約1万3,200u。建物は7階建てで、1階は検査部門と健診部門、2階は総合受付、外来、診察室、人工透析室などが入り、3〜7階部分が病棟となっている。
1〜5階部分には、調剤薬局、レストラン・コンビニ、院内保育所、会議室、給食センターなどが入るアメニティセンターを併設し、隣接する米沢市立病院とつなぎ、共同利用を行っている。これらの設備を共同利用することにより、イニシャルコスト(初期費用)は約1億円の削減につながり、給食センターを共有することで年間約4,000万円のコストカットを実現している。
施設設計の特色としては、各病棟のスタッフステーションをフロアの中央に設置することで、どの病室からも距離が近く、入院患者の管理に適した設計となっている。スタッフステーションには窓ガラスや仕切りがなく、声をかけやすいと患者・家族からも好評だという。人工透析の受け入れは、これまでの最大80人から160人に拡大したほか、1階に検査部門と健診部門を集約し、人間ドックなどの健診業務はすべて同院が受け入れる体制を整備した。
回復期リハビリテーション病棟では、米沢市立病院と連携し、より多くの患者に質の高いリハビリを提供できる体制をつくり、地域包括ケア病棟ではポストアキュート(※1)、サブアキュート(※2)、レスパイト入院の患者を受け入れている。また、緩和ケア病棟では、がんの終末期医療においてはACP(アドバンス・ケア・プランニング)を実践し、患者・家族に寄り添いながら、痛みや不安を緩和する医療を提供している。
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▲▼ 統合再編に伴い、人工透析の受け入れはこれまでの最大80人から160人に拡大 | ▲ 広々とした空間のリハビリテーション室 |
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▲ 吹き抜けで開放感のある1階には、検査部門と健診部門を集約 | ▲ 緩和ケア病棟には、サンルームを設け、穏やかに過ごせる療養環境をつくった |
医療連携による効果
米沢市立病院との医療連携の取り組みとしては、両院の経営陣が集まるミーティングを毎月開催し、それぞれの状況や課題を共有しながら解決に向けた検討を行っている。
患者情報の共有については、開院にあわせて米沢市立病院と同じ電子カルテを導入し、相互参照できるシステムを構築しており、CTやMRI、血管撮影装置などの検査機器の共同利用も開始している。今年1月には、地域医療連携推進法人の事業として両院の全職員を対象にした接遇に関する研修を実施している。
「機能分化・医療連携の効果としては、やはり救急医療を一本化できたことが大きいと思います。患者の紹介・逆紹介を推進することにより、回復期リハビリテーション病棟の稼働率は90%以上で推移しており、回転率も含めて高水準を維持することができています。当院の患者の急変時にも迅速に対応していただいています」(仁科理事長)。
一方、医療連携の課題について、事務部長の中山隆氏は次のように説明する。
「米沢市立病院とは以前より、人事交流のあり方について協議する機会を設けてきました。公立病院には公務員のルールがあり、在籍出向などのさまざまな提案を行ってきましたが、なかなか合意には至らず、ようやく放射線技師2人が5年間の期限付きの在籍出向というかたちで開院時に出向しています。また、開院に合わせて転籍したスタッフは、医師6人、臨床検査技師3人、放射線技1人となっています。しかしながら、通勤事情や他領域の急性期をやりたいスタッフが他の医療機関に移ったケースも少なくありません」。
また、検査機器の共同利用については、平日は問題ないものの、夜間・休日の連絡や撮影した画像データを送る際に患者の紐づけ作業がネックとなり、スムーズに確認できないこともあるため、そのあたりの改善が必要だとしている。
そのほかにも、地域医療連携推進法人の目的や連携を紹介するリーフレットを作成し、地域の医療機関や介護施設に配布することにより、将来的に参加してもらえるよう普及に向けて取り組んでいるという。
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▲ アメニティセンターは、調剤薬局やレストラン、コンビニ、会議室、院内保育所、給食センターなどを設置し、米沢市立病院と共同利用することにより、大幅なコストカットを実現 | ▲ 病院の2〜 5階部分は、アメニティセンターを併設し、米沢市立病院とつないでいる |
多機能型病院として地域ニーズに対応
今後の展望としては、米沢市立病院との連携をさらに強化し、多機能型病院として地域の医療ニーズに応えていくことをあげている。
「そのためにも地域住民に今回のプロジェクトを理解してもらえるよう啓蒙していくとともに、要望やニーズをきちんと把握して、米沢市立病院と一緒に対応していく必要があります。今後は連携を強化したうえで他の医療機関や介護施設等を巻き込んだネットワークを構築することも考えています。また、当院単体としては、回復期・慢性期、緩和ケアの専門医と認定看護師を確保し、質の高い医療提供につなげていきたいと考えています。さらに在宅医療を整備していくことで、地域住民が安心して生活できる地域づくりに取り組んでいきたいと思います」(仁科理事長)。
病院の統合再編とともに、公立病院との機能分化・医療連携を図り、地域医療を支える同院の今後の取り組みが注目される。
一般財団法人三友堂病院 理事長 仁科 盛之氏
今後、当地域と同様に医療提供体制を維持するため、医療機能の再編が必要な地域が増えるなか、「米沢モデル」として全国から注目されています。隣接している利点を活かし、さまざまな展開ができると思いますので、一つひとつ課題を解決しながら、連携を強化していきたいと思います。
(※1)ポストアキュート…急性期は過ぎたが、入院治療を必要な患者を受け入れる機能
(※2)サブアキュート …状態が悪化した在宅医療の患者を受け入れる機能
<< 施設概要 >>
理事長 | 仁科 盛之 | 開設 | 明治19年 |
病院長 | 穂坂 雅之 | ||
病床数 | 199床(回復期リハビリテーション病棟90床、地域包括ケア病棟87床、緩和ケア病棟22床) | ||
診療科 | 内科、消化器内科、呼吸器内科、循環器内科、内分泌・代謝内科、腎臓内科(人工透析)、神経内科、精神科、心療内科、外科、整形外科、脳神経外科、リハビリテーション科、緩和ケア内科・緩和ケア外科、皮膚科 | ||
法人施設 | 三友堂地域リハ・ケアセンター(サービス付き高齢者住宅、通所リハビリテーション、訪問看護ステーション、ヘルパーステーション、居宅介護支援センター)、三友堂クリニック・三友堂介護医療院/三友堂看護専門学校 | ||
住所 | 〒992−0033山形県米沢市福田町2−1−55 | ||
TEL | 0238−24−3700 | FAX | 0238−24−3709 |
URL | https://sanyudo.or.jp |
■ この記事は月刊誌「WAM」2024年9月号に掲載されたものを一部変更して掲載しています。
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