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| ▲ 施設の外観 |
リハビリテーション・透析治療を通じて地域医療に貢献
大分市にある医療法人光心会諏訪の杜病院は、「あなたらしさに寄り添う医療を」というビジョンのもと、質の高いリハビリテーションと透析治療の提供を通して地域医療に貢献している。
法人の沿革としては、平成9年に医療法人を設立し、同院の前身となる「諏訪の杜クリニック」を開設したことにはじまる。当時、市内には専門的なリハビリテーションを行う医療機関が不足していたことから、平成12年に診療所を廃止し、新たに40床の「諏訪の杜病院」を開設した。
現在はリハビリテーションと透析治療の中核病院として地域医療を支えており、平成19年10月には大分県高次脳機能障害支援拠点機関の指定を受けている。さらに、法人施設としては、在宅療養支援診療所や有料老人ホーム、デイケアセンター、訪問看護、訪問介護、訪問リハビリテーションを運営し、退院後の在宅療養を支える体制を整備している。
同院は、令和6年10月に病院の新築移転を行い、新病院を完成させるとともに、医療機能の強化と療養環境の改善を図っている。
新築移転を実施した経緯について、理事長・院長の武居光雄氏は次のように説明する。
「当院は、平成12年に40床で開設し、翌年45床に増床しましたが、病床の飽和状態が続いていました。旧病院は住宅密集地に立地していたため、手狭で増床に伴う建物の建て替えには規制が多く、地理的アクセスも悪かったことから新築移転を実施しました。新病院の開設にあたっては、旧病院から車で10分ほどの場所にある土地を確保し、病床の拡大とともに、リハビリテーションと透析治療の機能強化、患者の療養環境の改善を図りました」(以下、「 」内は武居理事長の説明)。
なお、新築移転に伴い、旧病院を改装し、市内に3カ所あった有料老人ホームを統合して移設するとともに、病院以外の在宅診療所やデイケアセンター、訪問看護、訪問介護などを1カ所に集約することにより、効率的な人員配置と利用者の利便性向上につなげている。
新築移転に伴い、病床を拡大
新病院の敷地面積は約1万6000u。建物は2階建てで、1階は総合受付、外来、検査室、手術室、リハビリテーション室などが入り、2階は病棟となっている。病床数は一般急性期病棟25床、回復期リハビリテーション病棟75床の計100床で、新築移転前の45床から増床した。
「施設設計の特色としては、2階建てで天井を高くして開放感のある空間をつくり、病室も広い設計にすることで快適な入院環境を提供しています。また、建物全体の横幅は130mと横長の設計とすることで、患者が横移動をする機会を増やし、リハビリテーションや訓練につなげています」。
患者が意欲的にリハビリテーションに取り組むための工夫としては、1階に高性能なリハビリテーション機器を取り揃えたリハビリテーション室のほか、2階に屋上や病棟でもリハビリテーションを行うことのできる環境をつくった。
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| ▲ 令和6年10月に移転新築した諏訪の杜病院の総合受付 | ▲ 回復期リハビリテーション病棟の多床室。病室は広い設計にすることで快適な入院環境を提供 |
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| ▲ 各病棟には広いデイルームを設置し、食事やリハビリテーション場所として使用されている | ▲ 2階には、天気や気候のよい時期に屋外でリハビリテーションに取り組むことのできる環境をつくった |
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| ▲ 病棟は回廊型で廊下幅を広く設計したことで、入院患者のリハビリテーションスペースとしても活用される | ▲ 広々した空間のリハビリテーション室。最新のリハビリテーション機器を取り揃える |
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| ▲ 職員専用のラウンジを設置し、職員がゆっくりと食事や休憩ができる環境を提供 |
あらゆる疾患のすべてのステージでリハビリテーションを提供
実践するリハビリテーションの取り組みでは、医師や看護師、リハビリテーション職、ソーシャルワーカー等の多職種がチームとなり、質の高いリハビリテーションを提供している。
「回復期リハビリテーション病棟では、主に脳卒中や骨折、廃用症候群、腎疾患、心疾患、難病などのあらゆる疾患のすべてのステージに対してリハビリテーションを提供しています。頻度でいうと、脳血管障害や骨折が多くなりますが、当院では高次脳機能障害と、腎臓機能障害や心臓機能障害、呼吸器機能障害などの内部障害に力を入れ、内科的な治療と同時にリハビリテーションを行っています」。
先進的な治療にも積極的に取り組んでおり、脳卒中のリハビリテーションでは磁気によって大脳を刺激し、脳の神経活動性を活性化させる治療法「TMS」(経頭蓋磁気刺激法)、運動麻痺や高齢者のリハビリテーションでは、筋肉に電気刺激を与え、筋収縮を促すことで筋力増強や筋萎縮の予防、運動機能の改善を図る治療法「EMS」(神経電気刺激療法)を実施している。
また、1階のリハビリテーション室には、退院に向けて自宅を想定した生活訓練を行うADL室を設置するほか、ドライビングシミュレーターを導入している。
「障害により車の運転ができなくなると、とくに地方では生活が難しくなるため、高性能なドライビングシミュレーターを活用した運転支援プログラムを実施することにより、退院後の地域生活を支えています」。
これらのリハビリテーションの実践により、回復期リハビリテーション病棟の在宅復帰率は80%後半と高い水準を維持し、施設基準は「回復期リハビリテーション病棟入院料1」を取得している。
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| ▲ リハビリテーション室にはADL 室を設置するほか、ドライビングシミュレーターを活用した運転支援訓練プログラムを実施 |
包括的腎臓リハビリテーションを実践
さらに、実践する透析治療の特色として、透析に運動療法や食事療法、心理サポート等を組みあわせる「包括的腎臓リハビリテーション」に取り組んでいる。
包括的腎臓リハビリテーションは、「腎疾患や透析医療に基づく身体的・精神的影響を軽減させ、症状の調整や生命予後を改善し、心理・社会的ならびに職業的な状況を改善することを目的に、運動療法、食事療法、薬物療法、心理的サポートなどを行う、長期にわたる包括的なプログラム」と定義されている。
同院では、透析治療を熟知した医師、看護師、臨床工学技士、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、歯科衛生士などが、それぞれの専門性を活かしながら、一人ひとりの患者に関わりながら、包括的なリハビリテーションを提供している。
「どうしても”リハビリテーション=運動“と思われがちですが、運動療法はあくまでもリハビリテーションの一つの方法論に過ぎません。食事や生活の指導、心理的サポートのほか、原疾患をコントロールする治療も同時に行うことにより、機能回復で高い効果を生み、透析患者の生活の質を高めることにつなげています」。
武居理事長は、「包括的腎臓リハビリテーション」を提供することによる効果を長年にわたり国に働きかけ、令和4年度の診療報酬改定で「透析時運動指導等加算」が新設されるきっかけとなった。
「多くの医師から協力を得て、1,000症例以上の患者データを取ったところ、明らかに包括的腎臓リハビリテーションを実施したケースでよい結果が出ました。シミュレーションでは、透析患者に適切な包括的リハビリテーションを提供して入院を防ぐことで、年間600億円の医療費を削減する効果が見込まれることを提言しました。加算は包括的なリハビリテーションではなく、運動指導に対するものではありますが、大きな一歩だと思っています」。
また、大分県高次脳機能障害支援拠点機関としては、高次脳機能障害の診断・治療を実施するとともに、患者の就学や就労に向けた継続的な支援を行っている。県外からも多くの患者を受け入れ、法人内外の福祉事業所等と連携しながら社会復帰を支えており、支援者研修にも注力しているという。
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| ▲ 透析センターは、同時透析最大44 人まで受け入れが可能で、夜間透析にも対応 |
発展途上国での医療支援に取り組む
さらに、同法人は、海外支援活動事業として開発途上国の医療、福祉環境の改善に向けた支援活動を実施し、平成25年からケニア共和国において貧困層居住地域を中心に、無償巡回診療や児童検診、現地の医療従事者の育成に取り組んでいる。
「海外支援活動は学生のときから関心があり、いずれ実施したいという想いがありました。しかし、海外の医療支援活動は短期ミッションであることが多く、診療と治療のみで現地スタッフの教育まで手が回らないことから、支援を引き上げてしまうと何も残らないケースが少なくありません。そのため、自分たちがマネジメントできる範囲で、永続的に支援できる体制づくりに取り組んでいます」。
永続的な支援を行う体制づくりでは、平成25年に無償巡回診療・学童検診を行うNGO「DREAM WORLD HELTHCARE PROGAMME」を設立するとともに、日本の医療法人に該当する『GRAND FOREST JAPAN HOSPITAL』を立ち上げ、平成27年に首都ナイロビにメディカルセンターを開設して診断と治療を開始。さらに、令和元年に経産省の「ケニアにおける日本式リハビリテーション導入実証事業」の実施を経て、翌年にリハビリテーションセンターを開設した。
「無償巡回診療は当初月1回でしたが、現在は年間30回以上実施しています。ケニア人医師を数名雇用し、人材育成にも力を入れています」。
人材育成では、現地の医師や看護師、リハビリテーション職などの医療従事者を定期的に諏訪の杜病院に招き、研修を受け入れることにも取り組んでいるという。
開発途上国での医療支援の取り組みが評価され、同法人は令和6年度に保健衛生や福祉向上などに貢献した団体・個人を表彰する「保健文化賞」(主催:第一生命保険株式会社、後援:厚労省)を受賞している。
先進的なリハビリテーションと透析治療の提供により地域医療を支えるとともに、海外支援活動を展開する同法人の今後の取り組みが注目される。
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| ▲ 海外支援活動として、ケニアで巡回診療や児童検診、医療従事者の人材育成に取り組んでいる |
医療法人光心会 諏訪の杜病院
理事長・院長 武居 光雄 氏
今後の展望としては、これまで取り組んできた疾病により障害をもった人たちの社会参加を支え続けることが当院の使命だと考えています。もう一つは、難病だけでも300種類以上あり、まだスポットのあたっていない障害者が多く存在していますが、そのほとんどがリハビリテーションを受けていません。そのような人たちのリハビリテーションを何とかしてあげたいという想いがあります。旧病院は、ハード面が不十分でしたが、新病院でハード面、ソフト面とも整備することができましたので取り組んでいきたいと考えています。
<< 施設概要 >>
| 理事長/院長 | 武居 光雄 | 病院開設 | 平成12年 |
| 病床数 | 100床(一般病棟25床、回復期リハビリテーション病棟75床) | ||
| 診療科 | 内科、外科、循環器内科、リハビリテーション科、整形外科、腎臓内科、人工透析内科、泌尿器科、放射線科、血液内科、消化器内科、呼吸器内科、脳神経外科、神経内科、形成外科、皮膚科、肝臓内科、心臓血管外科、アレルギー科 | ||
| 法人施設 | 在宅療養支援診療所、有料老人ホーム、デイケアセンター、訪問看護、訪問リハビリテーション、訪問介護 | ||
| 住所 | 〒870-1121 大分県大分市大字鴛野118番の1 | ||
| TEL | 097−502−1277 | FAX | 097−502−1288 |
| URL | https://k-suwanomori.com/ | ||
■ この記事は月刊誌「WAM」2025年10月号に掲載されたものを一部変更して掲載しています。
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