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サービス取組み事例紹介
医療

— 滋賀県米原市・社会福祉法人ひだまり 近江拠点 —

地域の医療ケアニーズに複合施設で対応

福祉医療機構では、地域の福祉医療基盤の整備を支援するため、有利な条件での融資を行っています。今回は、その融資制度を利用された滋賀県米原市の近江拠点を取りあげます。同拠点は、重症心身障害児者対応の放課後等デイサービス、生活介護、看護小規模多機能型居宅介護などを併設し、共生ケアに取り組んでいます。実践するケアの取り組みについて取材しました。

▲ 施設の外観

地域の福祉向上と共生社会の実現を目指す


 滋賀県米原市にある社会福祉法人ひだまりは、地域に根ざした高齢者福祉・障害福祉サービスを提供し、地域の福祉向上に貢献することに取り組んでいる。
 同法人は、平成15年にNPO法人を設立し、民家改修型の高齢者デイサービスを開始したことに始まる。事業の立ち上げ後、看護師であった理事長の永田かおり氏が、重症心身障害児の母親から相談を受け、障害児の一時預かりを行ったことが障害福祉サービスを開始したきっかけとなった。その後、地域の支援ニーズに対応した高齢福祉・障害福祉事業を展開し、平成27年6月に社会福祉法人を設立。
 現在は、米原市内に本郷、一色、米原、近江の4つの拠点をつくり、高齢者福祉事業では地域密着型特別養護老人ホーム、認知症高齢者グループホーム、看護小規模多機能型居宅介護、居宅介護支援、通所介護、小規模多機能型居宅介護など、障害福祉事業では放課後等デイサービス、生活介護、短期入所、相談支援事業などを運営している。


令和3年に共生型サービスを行う複合施設を開設


 同法人は、令和3年4月に近江拠点において、共生型サービスを行う施設を開設した。同施設は、重症心身障害児者対応の放課後等デイサービス、生活介護、短期入所をはじめ、看護小規模多機能型居宅介護(以下、「看多機」)、訪問看護、居宅介護支援、障害者相談支援を併設した複合施設である。共生型の指定を受ける事で、スタッフが相互の事業所の業務を行うかたちで運営している。
 共生型サービスを行う施設を開設した経緯について、永田理事長は次のように説明する。
 「米原市のある県北部エリアは、重症心身障害児者を受け入れる施設が少なく、県南部の施設に車で片道2時間かけて通わなくてはならず、住み慣れた地域での生活を継続することが困難な状況にありました。需要がありながら整備されていないことが地域課題となっていたことから、米原市と隣接する長浜市に開設の計画を相談したところ、両市から補助金を受けることができました。さらに、湖北保健医療圏の慢性期の完結率は22.9%と他圏域と比べて著しく低く、大半の患者は近隣の圏域や府県へ流出していたことから、看多機を併設することにより、地域の在宅療養を支える体制を整備しました」。
 開設地については、米原市の所有地を無償貸与されるとともに、元公立保育所であった建物の無償譲渡を受け、改修と増築を行い、開設に至っている。
 建物は、平屋建てで、施設内は各事業所をパーテーションで区切る程度にし、スタッフが往来しやすくするとともに、事務所は単体の訪問看護ステーションを含め、1カ所に集約することにより、スタッフが障害・高齢部門に関わらず、ケアの提供やさまざまな情報共有を図りやすい環境をつくった。


 ▲ 生活介護の浴室は、特殊浴槽とミスト浴装置を設置。利用者の身体状況や希望にあわせて入浴方法を選べる  ▲▼ 看護小規模多機能型居宅介護は、「通い」、「宿泊」、「訪問介護」、「訪問看護」を一体的に提供するとともに、医療ニーズや看取りにも対応
 ▲ 事務所は、スタッフがさまざまな情報を共有するため、訪問看護を含めて1 カ所に集約した

医療的ケアの必要な子どもから成人までを支援


 同施設の特色として、重症心身障害者児者対応の放課後等デイサービス「青空ひだまり」(定員10人)、生活介護「大空ひだまり」(定員10人)、ショートステイ(4室)を併設し、医療的ケアが必要な子どもから成人までの支援を行っている。
 現在、放課後等デイの登録者数は39人で、そのうち重症心身障害児と医療的ケア児は9人となっている。生活介護の登録者数は31人で、重症心身障害者の利用者は18人にのぼり、支援度合いが最も高い障害支援区分6の利用者が8割近くを占める。
 日中の活動中は、看護師が常駐して主治医の指示に基づき、必要に応じて医療的ケアを提供。主な医療的ケアとしては、喀痰吸引、経管栄養(胃ろう、腸ろう、鼻腔)、気管切開、人工呼吸器による酸素療法、排せつ等に必要な留置カテーテル、インスリン注射などに対応している。
 「支援体制としては、単独の訪問看護ステーションを含め、施設全体で15人ほどの看護師を配置し、メインの業務は決めているものの、放課後等デイや生活介護、訪問看護なども兼任しています。このように看護師がマルチに働き、横断的なケアをしていることが複合施設の運営を支えています」(永田理事長)。
 リハビリの提供では、理学療法士、作業療法士を配置し、利用者の状態に応じた適切な運動や安全で快適な体勢を保つポジショニングを実施。生活のなかでのリハビリを取り入れ、生活の質を高めることを重要視し、機能訓練とともに集団での役割をもてることを意識しながら、一人ひとりの利用者にあわせたプログラムを提供している。


▲ 重症心身障害児者に対応した放課後等デイサービス(写真上)と生活介護。医療ケアが必要な子どもから成人までの支援を行う

入浴支援で保護者の負担を軽減


 「生活介護の入浴支援では、特殊浴槽とミスト浴装置の2種類を設置し、利用者の身体状況や希望にあわせて入浴方法を選択することが可能となっています。一方、放課後等デイは入浴介助の加算はありませんが、重症心身障害児は成長とともに身体が大きくなると、自宅で家族が介助することが難しくなるため、放課後等デイを利用する子どもに対しても入浴支援を提供することで、家族の負担を軽減しています。また、重症心身障害児者は肺機能が低いことが多く、気管切開をしているケースもあるため、肺への負担が少なく、お湯に浸からないミスト浴のほうが安全だと考え、導入しています」(永田理事長)。
 さらに、ショートステイと日中一時支援を実施し、保護者のレスパイトケアを提供する体制を整備した。学齢期の子どもがショートステイを利用する際には、施設内で一日中過ごすのではなく、平日であればスタッフが学校への送迎を行い、夕方から放課後等デイで預かり、ショートステイを利用してもらうことで、生活のリズムを崩さないことを大切にしているという。
 「ショートステイは、親自身の健康面や子どもの将来の生活を考えても、必要なサービスですが、自分の都合で子どもを預けることに抵抗感がある保護者が少なくありません。開設当初は利用が想定していたよりも少なく、ニーズがあることと、利用が多いことは別だということをあらためて実感しました。現在は利用件数が増えていますが、開設から2年が経ち、施設に対する信頼関係が構築されてきたことが大きいと思います」(永田理事長)。


アセスメントステイや看取りに対応


 定員29人の看多機「笑みの家ひだまり」は、「通い」、「宿泊」、「訪問介護」、「訪問看護」を一体的に提供するとともに、医療ニーズにも対応している。
 現在は、病院と在宅の中間機能としての役割を果たすアセスメントステイに力を入れている。具体例として、病院の退院後、看多機の宿泊機能を1週間ほど利用してもらい、宿泊中に看護師、理学療法士、ケアマネジャー、介護職などの多職種による機能評価を行い、必要な医療的ケアの確認と在宅環境の調整など実施。看多機の機能を活用しながら在宅療養を支え、利用者の状態の安定につなげている。
 また、ターミナルケアとして、利用者がどこで最期を迎えたいのかを聞き取り、自宅での看取りが不安であれば、看多機で看取りまで対応している。コロナ禍には、家族が立ち会えるように外部から直接入室できる動線をつくり、対応したケースもあったという。
 医療連携について、滋賀県では先駆的に重症心身障害児者の支援に取り組むびわこ学園を中心とする医療的ケアの支援ネットワークをつくり、多くの医療機関が参画している。このネットワークの会合や勉強会に参加し、情報共有や連携体制を構築しているという。
 さらに、行政とは、高齢福祉分野の困難事例の受け入れや、緊急措置の預かりなどで日常的な連携を図っている。とくに、金曜夕方から日曜にかけては、他法人が緊急措置に対応することが難しいため、同法人が積極的に受け入れているという。  


複合的な課題を抱える家族のサポートを実現


 複合施設を開設したメリットとして、障害の有無に関わらず、子どもから成人までどのような年齢層の利用者に対しても、受け入れができることをあげる。
 「実際に障害のある子どもをもつ方が、自分の父親は小多機、子どもは放課後等デイを利用しているケースがあります。複合的な課題を抱える家族に対して複合施設でサポートできることは利用者・家族にとっても安心感があり、一緒に暮らし続けられることが最大のメリットだと思います。また、高齢者福祉・障害福祉サービスの複合施設を運営することは、スタッフにとっても視野が広がり、ケアの質が高まっていることを実感しています」(永田理事長)。
 複合施設の運営で難しいことや課題について、同法人理事・経営推進部長の安藤修氏は次のように説明する。
 「例えば、特養などの入所施設は稼働率を管理することで経営は安定しますが、当施設のように通所・訪問サービスが中心の場合、流動的で各事業所の管理者がしっかり管理しなければ、収支が安定しない面があります。さらに、当法人は小規模事業所が16カ所あり、事業所ごとに必要な資格を有する管理者を配置しなくてはならず、なかには兼務ができない部門もあるため、相当な人数が必要となります。管理者の力量はケアの質にも関わるため、管理者の育成は急務の課題です。一方で、企業や医療・福祉施設では、ポスト不足といわれ、スタッフが自分のキャリアデザインが描けず、働くモチベーションが低下するケースがありますが、当法人はポスト自体はあるので、向上心や意欲があるスタッフの頑張りに応じて管理者になれる環境があることは、働くモチベーションを高めることにもつながると思います」。
 共生型サービスを展開する複合施設として、地域の多様な支援や医療ニーズに対応する同施設の今後の取り組みが注目される。  


 ▲ 複合施設に設置した法人内保育所。障害のある子どもと一緒に遊ぶ環境もある ▲ 放課後等デイサービスには、自閉症等の子どもが利用する療養室を設置
 社会福祉法人ひだまり
理事・統括本部長
安藤 修氏
 ▲ テラスは、日中活動やイベントなどに活用している
管理者の育成に取り組む
社会福祉法人ひだまり
理事長 永田 かおり氏
 今後の展望としては、生活介護の定員を20人に増員する予定です。さらに、地域における障がい者の住まいに関する支援が不十分であると感じているため、障がい者グループホームの新設を検討しています。
 人材育成は経営における重要な要素であることから、今年度から管理者向けの経営勉強会を毎月開催し、事業経営や利用者サービス、そして職員のエンゲージメントに関する知識を深めています。
 また、人材確保の視点から、当法人では外国籍の職員5 名を雇用しており、今後も増員を目指しています。日本語を学んでもらい、介護福祉士の資格を取得してもらう計画です。そして将来的には、日本にご家族を招くことができる環境を整えることを目指しています。



<< 施設概要 >>
理事長 永田 かおり 開設 令和3年4月
開設施設
併設施設:【近江拠点】 放課後等デイサービス「青空ひだまり」(定員10人)、生活介護「大空ひだまり」(定員10 人)、短期入所「星空ひだまり」(4 室)、看護小規模多機能型居宅介護「笑みの家ひだまり」(定員29 人)、訪問看護ステーション「ひだまり」、居宅介護支援事業所「居宅ひだまり」、相談支援事業所「虹色ひだまり」
法人施設:【本郷拠点】 地域密着型特別養護老人ホーム、小規模多機能型居宅介護
【一色拠点】 デイサービス、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護、共用型デイサービス
【米原拠点】放課後等デイサービス、総合事業通所型サービス
住所 〒521−0082 滋賀県米原市能登瀬1322-1
TEL 0749−54−3355 FAX 0749−54−3366
URL https://hidamari-shiga.jp


■ この記事は月刊誌「WAM」2023年10月号に掲載されたものを一部変更して掲載しています。
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