「障害者差別解消法」制定までの経緯と概要について
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障害者差別解消法制定までの流れ | |
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2010(平成22)年6月29日 |
「障害者制度改革のための基本的な方向について」閣議決定
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2010(平成22)年11月 〜2012(平成24)年9月 |
差別禁止部会における検討
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2012(平成24)年9月14日 | 「障害を理由とする差別の禁止に関する法制」についての差別禁止部会の意見 |
2013(平成25)年4月26日 | 「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律案」閣議決定・国会提出 |
5月29日 | 衆議院内閣委員会において可決 |
5月31日 | 衆議院本会議において可決 |
6月18日 | 参議院内閣委員会において可決 |
6月19日 | 参議院本会議において可決 |
6月26日 | 「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」【通称:障害者差別解消法】(平成25年法律第65号)公布 |
2013(平成25)年6月26日に公布された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(平成25年法律第65号)の主な内容は次の通りです。
この法律は、障害者基本法の基本的な理念にのっとり、障害者基本法第4条の「差別の禁止」の規定を具体化するものとして位置づけられており、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることによって、差別の解消を推進し、それによりすべての国民が、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的としています。
政府は、障害者の差別の解消の推進に関する基本方針として、差別解消に関する施策の基本的な方向、行政機関等及び事業者が講ずべき措置に関する基本的な事項等を定めることとしています。
基本方針案を作成しようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、障害者政策委員会の意見を聴かなければなりません。また、内閣府において関係行政機関の連携の確保等のための体制整備を図りつつ、基本方針案を作成し、行政機関等及び事業者が適切に対応するために必要なガイドライン等の基本となる考え方を示すとともに、ガイドラインの運用状況の把握や基本方針の見直し等を行います。
(1)「差別的取扱い」の禁止
行政機関等及び事業者が事務または事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならないものとされています。
(2)合理的配慮不提供の禁止
行政機関等及び事業者が事務または事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならないものとされています。
なお、民間事業者については、「私的自治」の点に配慮し、「合理的配慮不提供の禁止」は努力義務として意識啓発・周知を図るための取り組みを進めることとし、法的義務とするか否かは、本法施行後の状況を踏まえて検討することとされています。
(3)具体的な対応
ア ガイドライン(対応要領・対応指針)の策定
(ア)行政機関等の職員のための対応要領の策定
行政機関の長、地方公共団体の機関等は、基本方針に即して、行政機関等の職員が適切に対応するために必要な要領(対応要領)を定めることとされています(地方公共団体の機関及び地方独立行政法人については努力義務)。
なお、対応要領を定めようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければなりません(地方公共団体の機関及び地方独立行政法人については努力義務)。
(イ)事業者のための対応指針の策定
各事業分野を管轄する主務大臣は、基本方針に即して、事業者が適切に対応するために必要な指針(対応指針)を定めることとされています。
なお、対応指針を定めようとするときは、あらかじめ、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講じなければなりません。
イ 事業主による差別解消の推進のための措置
行政機関等及び事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う措置については、「障害者の雇用の促進等に関する法律」(1960(昭和35)年法律第123号)によることとされています。
ウ 環境の整備
行政機関等及び事業者は、必要かつ合理的な配慮を的確に行うため、自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければなりません。
(4)実効性の確保
各事業分野を管轄する主務大臣は、特に必要があると認めるときは、対応指針に定める事項について、事業者に対して報告を求めたり、助言、指導、勧告を行うことができるとされました。これに従わなかったときや虚偽の報告を行ったときは、過料が課されます。
(1)相談及び紛争の防止・解決のための体制の整備
国及び地方公共団体は、障害者及びその家族その他の関係者からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応ずるとともに、紛争の防止または解決を図ることができるよう必要な体制の整備を図ることとされています。
(2)啓発活動
国及び地方公共団体は、障害を理由とする差別の解消について国民の関心と理解を深めるとともに、特に、障害を理由とする差別の解消を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うものとされています。
(3)情報の収集、整理及び提供
国は、障害を理由とする差別の解消に関する施策の推進に資するよう、国内外における障害を理由とする差別に関わる情報の収集、整理及び提供を行うものとされています。
(4)障害者差別解消支援地域協議会の設置
国及び地方公共団体は、関係機関等により構成される「障害者差別解消支援地域協議会」を組織することができます。
同地域協議会は、障害を理由とする差別に関する情報の交換、障害者からの相談及び事例を踏まえた協議並びに差別解消のための取り組みを行うとともに、同地域協議会を構成する機関等に対し、事案に関する情報の提供及び意見の表明その他の必要な協力を求めることができます。
この法律は、2016(平成28)年4月1日から施行されます。
施行後3年を目途に、合理的配慮のあり方等の法律の施行状況について検討を加え、必要があると認めるときは見直しが行われます。
監修者 山本雅章 調布市 子ども生活部部長
鈴木雄司 東京福祉大学社会福祉学部 保育児童学科教授