特定非営利活動法人わーかーびぃー
一人ひとりの声に耳を傾け事業を展開する特定非営利活動法人わーかーびぃー
地域生活支援に取り組む特定非営利活動法人わーかーびぃー
北海道札幌市厚別区に拠点を構える特定非営利活動法人わーかーびぃー(以下、「わーかーびぃー」という。)は、住み慣れた地域で住民のだれもが安心して共に生活できるようにと、「共生」を経営理念に掲げて、居宅介護、重度訪問介護、生活介護、短期入所、相談支援といった障害者の地域生活を支援するサービスを中心に活動しています。
わーかーびぃーの活動は、松坂理事長が平成12年当時の勤務先の社会福祉法人で取り組んだ、24時間対応型のレスパイトケアサービスがそもそもの始まりです。
「兄弟の授業参観日に行くことができない」、「買い物に行くのも難しい」というような重度の行動障害がある子どもを抱える親の姿や声を見聞きし、「少しでも役に立つことができれば」という思いで、当時制度外であったレスパイトケアサービスを始めたとのことです。
松坂理事長は当時の状況を『「親がいるのに、なぜホームヘルパーが子どもの面倒を見なければいけないのか」と言われてしまうような、まだまだ行政にも理解が得られなかった時代で、全国的にもレスパイトケアに取り組んでいく動きが出始めた頃だった。』と振り返ります。
その後、平成15年に支援費制度が始まり、ようやく在宅支援サービスにも制度的な光があたってきた中で、松坂理事長はより一層地域の生活支援サービスを強化することに力を注ぎます。平成16年1月に社会福祉法人から独立し、わーかーびぃーを設立しました。同年4月には、元の社会福祉法人から在宅支援部門の事業移管を受けて事業を開始して以降、同じ札幌市の厚別区に在宅支援サービス等を行う事業所「びぃーはいぶ」、「ますとびぃー」、北区には「とんとん」を開設して事業を展開してきました。
また、わーかーびぃーとは別に社会福祉法人えぽっくを平成17年に設立し、特定非営利活動法人ではできなかった通所サービスも開設しています。
その他、共同住居等を営む株式会社を含め、それぞれの法人格の特性によって支援するサービスを振り分け、グループ全体で多角的に支援を行っています。
室蘭市での取り組みのきっかけ
八丁平共生型センター「はっち」 |
札幌市厚別区にある本部からこの事業所だけ地理的に120キロも離れていますが、「八丁平共生型センターはっち」の誕生のきっかけには、松坂理事長がレスパイトケアを始められた時と同様に、障害当事者の方やそのご家族の声がありました。
北海道では、肢体不自由の障害を抱える方は中学校までは地元の特別支援学校に通いますが、高校からは地域に特別支援学校がないことも多く、地元から離れた学校に入学し、寄宿舎での生活を始めるケースが多いとのことです。
「八丁平共生型センターはっち」の利用者である大地一史さん(写真)もその一人で、中学校までは地元室蘭市の北海道室蘭養護学校に通い、高校は札幌市に引っ越し、寄宿舎のある北海道真駒内養護学校に入学しました。
大地一史さん |
札幌市で生活をすることになった大地さんはそのときに松坂理事長と出会い、「高校卒業後は住み慣れた室蘭市に戻って生活がしたい」という意向を伝えました。
その後、高校を卒業した大地さんは室蘭市に戻り、高校時代に培った「自立した生活を行う力」をより育むことやご家族の介護負担の軽減という観点から、自宅ではなく、共同住居での生活を選びました。大地さんと重度の肢体不自由の障害のある他2名の合計3名での共同生活です。この共同住居は、入居者3名のご家族、さらには養護学校の先生が資金を出し合って一般住宅を購入しています。
この住居は「があだぱーと」と名付けられ、地域住民も気軽に集まって障害を持つ方との交流ができるように、地域の会議やサークルの集まり、バーベキューなどにも活用されています。
施設入所でも在宅ともひと味違う、「地域で暮らす」ためのもう一つの形です。
多機能型地域交流ハウス「があだぱーと」 |
「があだぱーと」の開設当初は、昼間は地元のサービス提供事業者が支援に入り、夜間は入居者3名のご家族が交代で泊まって見守りを担当されていました。「子どもの夜間のケアを家族以外の誰かに任せるのは不安」という気持ちがご家族にあったのではないかとのことです。
しかしながら、ご家族が年々重ねる年齢への不安感や大きくなってくる”泊まり”への負担感から、大地さんと松坂理事長のつながりをきっかけに、平成19年からはわーかーびぃーが夜間の支援に入ることになりました。
わーかーびぃーにとっては、120キロ離れた“他所の地域”に支援に入るということで、人材確保をはじめとする課題がありましたが、スタッフ一人が札幌から室蘭市に異動し、さらには応援スタッフが加わることで、入居者のご両親が担ってきた部分を少しずつ肩代わりしていきました。
最初の半年間は話し合いや練習を繰り返していましたが、現在では日中の支援と週6日間の夜間の支援をわーかーびぃーが担っています。
はっちの誕生に向けて〜旧地区会館を利用した福祉でまちづくり〜
「があだぱーと」への支援を皮切りに、わーかーびぃーは室蘭の地域でも必要とされる存在となっていきましたが、その象徴とも言える「八丁平共生型センターはっち」はどのように誕生したのでしょうか。
「があだぱーと」がある室蘭市八丁平地区は、市内でも比較的緑豊かな地域で、閑静な住宅が並ぶ人口5,000人ほどの地域です。
町内会としての福祉活動や高校のボランティア活動も盛んな地域で、高齢者と高校生、障害者がともに地域の花壇作りを行ったり、祭礼などでも一緒に汗を流す姿が見られるなど世代間交流も行われています。
一方で、地域活動の拠点として活用されていた地区会館が老朽化により他に新築移転し、周囲に住んでいた多くの高齢者が活動の場を失ってしまうといった状況も地域に生まれていました。
元々の会館は旧会館として空き家となり、そのまま残っていたため、同地区では旧地区会館の活用が大きな課題でした。また、「があだぱーと」で暮らす障害のある方やご家族、それからわーかーびぃーのスタッフからも旧地区会館を「障害のある人や地域の人の拠点としてリニューアルできないか」という声が上がりました。
「意見交換」が地域のネットワークに〜WAM助成を活用して〜
そこで、旧地区会館の再生に向けて、わーかーびぃーが平成22年度のWAM助成を活用し、「地域協働による共生型障がい者総合支援事業」として取り組むことになります。障害のある方のためだけのサービスの創出だけでなく、住民の誰もが安心して地域で暮らしていく環境をどうつくるか、まちづくりも視野に入れた旧地区会館の再生です。
わーかーびぃーが最初に取り組んだことは、地域住民の声を集めることです。まず、住民が旧地区会館をどのようにしたいのかを把握するため、養護学校保護者・教員、肢体不自由児者父母の会会員・当事者、地域住民、社会福祉協議会職員、町内会関係者と多方面に声を掛けて、意見交換会を開催し、計画段階から話し合いに参加してもらうようにしました。
意見交換会は、研究機関や専門家にも協力してもらい、客観的な議論、意見出しができる自由な雰囲気作りを目指して、各分野の方が個別に集まる回と全ての参加者が集める回をそれぞれ複数回設定するという工夫をしたことで、さまざまな立場の方から自由に意見を出してもらうことができたとのことです。
WAM助成を活用してこれらの活動を行った結果、「地域のニーズの把握」、「地域住民の参加」といった、当初の目的を達成できただけではなく、“地域のネットワークづくり”といった効果も生まれました。
WAMとしても、方向性を決めることに目的を絞って、計画的に実施された活動として高く評価しています。
このような成果を受けて、平成23年度に室蘭市が建物を改修するための補助金を国に要望し、旧地区会館は「障害者総合支援法に基づくサービスの提供施設」兼「地域住民の交流の場」としての機能を持つ「八丁平共生型センターはっち」として生まれ変わりました。
今では、地元の老人クラブ関係者の施設利用や「そば打ち」のイベント開催、ウクレレやマンドリンの演奏会、展覧会の開催、火曜日・木曜日は喫茶コーナーの開設といった活動が行われています。今後は「健常の児童やそのご家族、あるいは地元の高校とのつながりを深めることに力を入れていきたい」とのことです。
一人の意見には複数の声が隠れている
松坂理事長は、わーかーびぃーの取り組みについて、「『たった一人の障がいのある方からの希望する声や願い』にこたえること。これが一つひとつの取り組みの原点。」と説明していただきました。
一つの声に耳を傾け、その声を取り巻く環境に真摯に向き合ってきたことは法人設立のきっかけとなったレスパイトケアサービス、地元ではない地域への支援参入、さらには旧地区会館の再生による福祉の街づくりに至ったことに現れています。今後の事業展開においても当事者主体、ニーズから考えるという強い姿勢を感じます。
平成25年度、わーかーびぃはWAM助成を活用して、肢体不自由者の地域生活志向の高まり、親の高齢化や死亡による自宅介護の限界等の状況が広がる中で、全国各地において肢体不自由者の住まいの場づくりを促進することを目的として、地方の市町村での実践例の抽出と検証を行いながら、医療ケアの必要な重症心身障害者の地域移行推進モデル事業の実施に取り組んでいます。
だれもが住み慣れた地域で安心して暮らすことができるように、この助成事業の取り組みをきっかけとして、地域移行推進となるモデルが全国へ波及していくことを期待しています。
法人名 | 特定非営利活動法人わーかーびぃー | 開所時期 | 平成16年1月29日 |
所在地 | 札幌市厚別区上野幌3条4丁目1−12(法人本部) | ||
電話 | 011-893-1199 | FAX | 011-893-5599 |
代表者 | 松坂 優 氏 | 連絡担当者 | 河口 一廣 氏 |
運営事業 | 居宅介護、重度訪問介護、生活介護、行動援護、短期入所、指定相談支援、日中一時支援、移動支援等 | ||
URL | https://workerbee.or.jp/ |