第2回: すべての会議に共通する組織マネジメント上、重要な2つの役割
会議は理念を浸透させるための絶好の機会
前回は、福祉・介護の職場で行われるさまざまな会議・ミーティングについて、それぞれの目的、必要性の明確化が重要であることを述べました。それぞれの会議・ミーティングに別々の目的と必要性があること、それぞれの会議・ミーティングで行うべきことを明確化し示すことで、出席メンバーのモチベーションが高まります。
一方で、すべての会議には、裏テーマともいえる、組織マネジメント上、重要な2 つの役割があります。1つめは、「組織の理念を浸透させること」、2つめは「職員間のコミュニケーション」です。
組織の理念を、ホームページやパンフレットへの掲載、事業計画への記載、スタッフルームでの掲示、朝礼での唱和などにより職員に周知している施設も多いでしょう。しかし、理念を浸透させるとは理念を覚えさせることではありません。理念を日々の行動のなかに反映させることです。その絶好の機会が会議なのです。
「組織運営についての内容を情報伝達する場」とされることが多い職員会議では理念について話がされることも多く、それはもちろん大切なことです。しかし、「理念を日々の行動のなかに反映させる」という視点から考えると、リーダー会議、フロア会議など、「現場の職員が利用者サービスについて考える、決定する場」においてこそ、理念を思い出すこと、理念に基づいた決定が求められるのです。
こうした場においては、職員同士の人間関係、人員体制や給与などの労働環境、施設のハード面、支援が難しい利用者・家族などに対する不満が出やすいものです。個々の職員が抱いている不満を共有することによるストレス解消効果はあるのでしょうが、それだけで終わってしまってはまったく建設的ではありません。現場の職員が集まって、悩み、迷い、時にはそれぞれが自分の意見ばかりを主張し対立してしまうような時にこそ、理念に立ち返り、「自分たちがどこに向かうべきなのか」を共有してみましょう。また、会議のなかで何かを決定をする時には、理念や部門の方針と照らしあわせて「これで大丈夫!」と出席メンバー全員で確認する習慣をつけるのもよいでしょう。
発言のハードルを下げることは議長の重要な役割
さて、裏テーマの2つめ「職員間のコミュニケーション」ですが、会議の価値は、出席メンバー同士が「互いに」意思や感情、思考を「伝達しあう」ことにあります。極論を言うなら、会議で一言も発言しないメンバーは、その会議にいる意味がないのです。
しかし、そのような職員個人を一方的に責めてはいけません。福祉・介護職は「縁の下の力持ち」としての要素を多くもつ専門職であるがゆえに、人前で声高に自分の意見を主張するのは苦手、できるだけ目立ちたくないというタイプが少なくありません。会議で発言すること自体のハードルが高いのです。ですから、このハードルを下げることが議長の重要な役割となります。皆さんも議長の時には必ず出席メンバー全員に発言を促していると思いますが、「○○さんはどうですか?」といった漠然とした促し方では、会議に慣れていない、発言が苦手なメンバーは「それでいいです」、「△△さんと同じ意見です」となってしまいがちではないでしょうか。
こうしたメンバーには「○○さんのユニットは来週、実習生が来て忙しくなると思うけど、この日程で大丈夫ですか?」など、ポイントをしぼって声かけしてみましょう。そのメンバーにとって、より身近な切り口を示して発言を促すことで、その職員ならではの気づき、発言を引き出すことができるかもしれません。
前回述べた、「それぞれの会議の主たる目的」とともに「組織マネジメント上の重要な役割」を常に意識しながら会議を進行してみてはいかがでしょうか。
※ この記事は月刊誌「WAM」平成27年5月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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