連載コラムコーナー
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その後、冷水はコイルの周りの暖かい空気により水温が上がり、吸収式に戻ります。そして、吸収式で温度が下げられ、また、配管を通って、ファンコイルへと送られます。その繰り返しによって、冷房をします。暖房は、温水を流します。
吸収式は、冷房・暖房をするうえで重要な役割を果たしています。故障が生じると冷暖房が停止し、施設としての機能が停止してしまう恐れがあります。
また、配管がすべてのファンコイルにつながっているので、全体的な空調になっていて温度制御が一定になります。そのため個々の部屋では、スイッチによるファンの風量を変えるくらいの制御しかできません。
吸収式が冷暖房を行うにあたり重要な役割を担っていることは、おわかりいただけたと思います。とくにこのような重要な機器については、日頃のメンテナンスおよび耐用年数等を考慮し、更新の時期を判断しなくてはなりません。
そこで、改修方法ですが、配管およびファンコイルは既存のままで改修せず吸収式だけをガスヒートポンプチラー(以下、チラー)に取替える方法です。チラーは、ガスで動かすため消費電力は小さく、また、吸収式に比べ1台の容量は小さくなっています。そのため台数を多く設置しなくてはなりませんが、ファンコイルの動いている台数に応じてチラーを動かすので、全台数動いている時もあれば、1台だけ動いている時もあります。動いている台数が少なければ、省エネになります。
また、チラーコントローラーおよび各部屋の個別リモコンの組み合わせで細かい制御が可能になります。ガス使用量は増えるものの電気使用量は下がり、CO2排出の削減にもつながる環境にやさしい設備といえます。
もう一つの改修方法をご紹介します。空調設備システムは、既存のままで、改修せずに新たにガスコージュネレーションという別の設備システムを設置するという方法です
このシステムは、ガスを使って発電機を動かし、電気と熱を取り出し利用するというシステムです。ガスで発電した電気を施設内の照明器具やポンプ・ファンといった機械の電源として利用します。また、発電時に出る排熱を利用しボイラーの補給水温度を上げることで、ボイラーの稼働を抑え省エネにもつながります。
ガスで発電機を動かすためガスの使用量は増えますが、電力会社からの電力で使用していた照明器具やポンプ・ファンといった機械の電気料金を発電機による電源で賄い、排熱利用でボイラーの稼動を減らすことによって、前記のシステム同様に電気料金やCO2排出の削減になります。
更新・改修時期が予測できれば、違うシステムでの更新や既存のシステムに1つプラスする方法などを余裕をもって検討でき、維持管理費用を削減することができます。それぞれの施設の状況により最善策は異なりますが、周期表および改善計画書を作成することで適正な機器選定と予算措置が講じられます。常日頃から、周期表の活用と設備の状況の把握をすることで、かしこい建物維持管理が可能になります。一度検討しておくことをお勧めします。
※ この記事は月刊誌「WAM」平成26年11月号に掲載されたものです。
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