特別養護老人ホームの経営特性
介護老人保健施設は、在宅復帰、在宅療養支援のための地域拠点となる施設およびリハビリテーションを提供する機能維持・改善の役割を担う施設として定義され、介護報酬においても在宅復帰・在宅療養等支援指標で、その機能が明確にされています。基本報酬は、超強化型、強化型、加算型、基本型、その他型に分類され、近年、上位類型の割合が増加傾向にあります(図表1)。特別養護老人ホームと同様に長期療養だけを目指すと在宅復帰・在宅療養等支援指標が低くなり、在宅復帰を試行すると稼働率が低迷し、結果として収益低下を招くことにつながります。在宅復帰と在宅療養支援の両方の機能を保持するバランスが求められています。
経営指標の傾向
2024(令和6)年度の介護報酬改定に向けた介護事業経営実態調査結果(図表2)では、介護老人保健施設では、2022(令和4)年度決算において平均差引比率が赤字と発表されました。黒字であった前年度と比較すると看護・介護職員(常勤換算)1人当たり利用者数が低下、つまり職員数が増加し、給与費率が上昇しています。その結果、差引比率がマイナスに転じています。その状況から前回の改定では基本報酬等の見直しが行われ、比較的収益回復の傾向にあります。
上位類型への移行を考える場合は、人員数に十分な留意が必要です。在宅復帰・在宅療養支援等指標の10ある各項目を最低限維持するには、各項目のどの数字を意識するかを明確にして、業務が過剰に煩雑にならないバランスを考えることが重要です。
また、介護老人保健施設では、看護職員の配置割合は2/7が目安とされ、特別養護老人ホームより看護職員配置割合が多く求められています。看護職員と介護職員の役割を明確にしすぎると、非効率が生じます。ともに利用者の生活を支えるものという共通認識のもと、連携をはかることが結果として効率化につながります。
強化型が陥るリスク
在宅復帰・在宅療養支援等指標において、超強化型なら70点、強化型なら60点以上と高い数値が求められ、とくに配点の高い在宅復帰率とベッド回転率の2つの指標の値が重要となってきます。ベッドの回転率を上げ、点数を維持する傾向がありますが、平均在所日数が低下し、新規利用者が十分に確保できず、または、入所までの期間が長くなり、結果として稼働率が低下する状態に陥いる傾向にあります。
この時、多忙感から人員増加を求む声が現場職員からあげられ、結果として人員増加により給与費が増加し、統計値の状態に陥る傾向にあります。各種指標から適正配置を意識し、慎重な判断により人員数を管理することが求められます。
医療機関との連携による稼働率向上
稼働率の向上のためには、医療機関との連携が不可欠です。介護老人保健施設においては、前回の改定で初期加算Tが創設され、医療機関との定期的な情報共有を行っている施設も少なくありません。積極的なアプローチをしていない施設は、相対的に認知度が低下する結果に陥っています。毎月必要となる新規受け入れ数を適切に把握しつつ、医療機関との連携強化を図ります。
LIFE関連加算との関係性
介護老人保健施設は介護保険施設の一つであるとともに、施設長は医師であることが求められています。今後、後期高齢者数の増加に伴い医学的管理を必要とする利用者の増加傾向が見込まれます。LIFE関連加算は、今後のニーズへの対応策として設けられたものです。LIFE関連指標の浸透や活用までには時間を要しますが、意識づけとしても各種のLIFE関連加算の算定が期待されます。
地域拠点としてのリハビリテーション機能
病院から退院後、在宅に戻るには、継続したリハビリテーションの関与が求められます。介護老人保健施設では、在宅復帰・在宅療養等支援指標においても訪問リハビリテーションや通所リハビリテーション、そして短期入所療養介護のサービス提供が求められています。施設内だけでなく、在宅を含めたリハビリテーションの提供には、記録やリハビリテーション会議のあり方を含め、リハビリ職員の業務効率化が不可欠となります。
リハビリ職員は、時に1日の実施単位数(20分1単位)を上限まで組み込み実施する場合もあります。1日の実施単位数の目安を決め、短期集中リハビリテーションなど多様な加算の業務を十分担えるよう、他職員との業務分担の見直しを行っていきましょう。また、地域によっては、訪問リハビリテーションの潜在的ニーズが見込まれます。
※ この記事は月刊誌「WAM」2025年11月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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