社団法人 企業福祉・共済総合研究所(理事長代行:石光 哲哉、東京都港区)は平成22年度老人保健健康増進等事業(老人保健事業推進費等)補助金を受けて「介護労働者の労働環境改善等に関する調査研究事業」を2011年3月末まで行い、この度、「平成22年度老人保健健康増進等事業 介護労働者の労働環境改善等に関する調査研究事業〜介護労働者定着のための福利厚生施策の考察と提言〜事業報告書」をとりまとめましたので公表いたします。
本事業は、介護労働問題の制度的・構造的な「低賃金」と「重労働」が重視されるが、「福利厚生」を切り口として、特に「衛生要因」のケアによる労働環境改善を考察し、介護労働者の定着、人材確保等に資する施策提言を行うことを目的としています。
【事業概要】
近時、介護労働に関する議論の多くは「低賃金」と「重労働」に収斂、膠着し、新たなる進展が導きづらい状況にあり、これを打開する新たな視点・テーマの提供が喫緊の課題である。本事業では、これまでの介護労働に関する議論では取り上げられることのなかった「福利厚生」を切り口とすることで、その議論に新たな視点を提供するとともに、どちらかといえば軽視されがちである「衛生要因」のケアを通じて、「仕事のやりがいはあるのに辞めていく」介護労働の現状に対応するだけでなく、これからの介護労働に参入しようとする求職者にとっても魅力ある環境づくりの具体的処方箋を導くものである。
(1) アンケート調査は、「訪問介護」、「通所介護事業所」、「介護老人福祉施設」、「介護老人保健施設」、 各400事業所、計1,600事業所への郵送調査を実施した。その結果、466件の事業所より回答を得ることができた。また、同時に介護職員に対する調査も行い、1,307名の回答を得ることができ、先進事例として12事業所を訪問し、ヒアリング調査を実施した。
(2) 全6回にわたる委員会、アンケート調査結果ならびにヒアリング調査結果を通じて、介護事業所の区分(通所事業所、特養施設、老健施設、訪問事業所など)に係わらず介護職員の定着には、事業所や職員同士の日頃からのコミュニケーションや、仕事と家庭の両立支援(事業所内託児支援や親族介護支援など)、職員の能力や技術の向上支援、継続的な体力の維持を図るうえでは心身の健康保持を支援することが重要であることが整理された。
また、今後の提言事項として、ア.介護職員のための健康保険組合の設立の必要性、イ.低賃金を補完するうえでの介護事業所ならびに介護職員のための生活支援に関する情報提供の仕組みの構築、の2点があげられた。
(3) 2011年3月25日に成果還元(介護事業者向け)セミナ−を実施した。成果セミナ−として「介護職員の定着と福利厚生の役割」と題し、福利厚生研究の第一人者である西久保浩二氏(山梨大学教授)の基調講演(約1時間)をはじめ、事務局の調査結果の概要発表ならびに介護事業者の取り組み例を紹介し、西久保教授とゲストスピ−カ−によるパネルディスカッションを行った。本成果還元セミナーでは、賃金の福利厚生の機能の相違を整理し、介護職員の離職の理由が報酬だけではない点に言及したうえで、今後必要とされる福利厚生からの支援や横断的な仕組みの必要性を示した。
また、事例では小規模事業所においても介護職員の離職を抑止するための身近な取り組みが紹介されたことにより、経営的な資源が限られていても、参加者が取り組める可能性を示唆することができた。
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