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被災福祉施設復興事例紹介
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〜 宮城県 岩沼市 〜

社会福祉法人ライフケア赤井江

「特別養護老人ホーム赤井江マリンホーム」の復興事例紹介

取材日 平成26年7月3日
東日本大震災により、死者186人、行方不明者1人、住家、非住家あわせ8,000棟以上の被害を受けた宮城県岩沼市(出典:宮城県庁ホームページ【平成26年5月31日現在】)。その沿岸部で事業を営んでいた、「特別養護老人ホーム赤井江マリンホーム」の復興状況を取材した。

被災地域(旧施設所在地)、再建地域(新施設所在地)と岩沼市浸水区域マップ


被災地域(旧施設所在地)、再建地域(新施設所在地)と岩沼市浸水区域マップ

※浸水区域データの出典:国土交通省都市局『復興支援調査アーカイブ』データ


平成26年1月から事業を再開した「特別養護老人ホーム赤井江マリンホーム」

 社会福祉法人ライフケア赤井江が運営する特別養護老人ホーム赤井江マリンホームは、被災した沿岸部から3kmほど内陸に拠点を移し、平成26年1月から運営を再開しました。
 平屋建てであった赤井江マリンホームは、4階建の複合型施設に生まれ変わり、かつて同じ敷地内に隣接されていた、老人デイサービスセンター、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所は同施設建物内に設置され、新たに地域密着型特養のサービスも同施設建物内で提供しています。
 緊急時には地域住民の避難所としての役割も担えるよう、建物の設計がなされ、生活インフラの停止にも備えのある施設となっています。

▲ 特別養護老人ホーム赤井江マリンホーム等施設外観 ▲ 旧マリンホーム跡地

職員を一人も解雇せず復興した「特別養護老人ホーム赤井江マリンホーム」

 社会福祉法人ライフケア赤井江は昭和55年10月、日本三大稲荷の一つともいわれる「竹駒神社」、松尾芭蕉のゆかりの地である「武隈の松(二木の松)」でも有名な宮城県岩沼市に設立されました。
 昭和56年5月には特別養護老人ホーム赤井江マリンホーム、同ショートステイを開設。その後、デイサービス、居宅介護支援、訪問介護等の事業所を順次開設し、事業展開を行ってきました。平成23年には、法人として3か所目となる認知症対応型グループホームを新たに建設していました。1つの敷地内で特別養護老人ホーム赤井江マリンホームを基幹施設として、複合的なサービス提供を行なってきた同法人ですが、これらの施設は沿岸からわずか250m程度の位置にあったため、建設中であったグループホームを含め7事業所が東日本大震災の津波により全壊するという被害を受けました。
 施設・建物は壊滅的な被害を受けましたが、幸いにして人的な被害はなく、職員48名・利用者96名の144名全員が無事に避難することができました。
 後に事務長の鈴木さんは全員が助かった理由を次のように分析しています。
 @地震後確かな情報をカーラジオで得たこと、A地震発生9分後には避難を開始できたという早い決断と行動があったこと、B人的支援が得られた仙台空港を避難所に選んだこと、C前年のチリ地震の教訓を活かし、避難時間や持ち出し物品等が確認できていたこと、D職員のチームワークと介護力が発揮され柔軟な対応ができたこと。
 施設再建にあたっては、人的な被害を出さなかった優秀な人材を流出させないようにと、社会福祉法人ライフケア赤井江では、給与カット等の措置を取らずに人材の確保に努めました。大切にされた考え方は、「職員を一人も解雇せずに再建することが出来れば、本当の意味での復興といえるのではないか」(法人理事 小助川さん)とのことです。


被災時の教訓を生かして

 再建後の施設は、津波が庭先程度までしか来なかった地域に建設されました。津波への備えとして、利用者の居住スペースは4階建て施設の2階以上としています。給与データ等が管理されているサーバも2階以上へ置くこととしました。新しい建物では、津波から利用者はもちろん、必要なデータも守ります。これは、各種データが津波により流され、復旧の支障となった教訓が生かされています。
 また、食料の備蓄庫、自家発電装置(4台・1週間分)、ガス台の設置、井戸水(生活用水として毎分40リットル供給)の活用といった、既存のインフラとは独立した生活基盤インフラも整備して、今後の万が一の災害にも備えています。

▲ 災害時備品庫 ▲ 自家発電装置

 建設資金については、資材高騰の影響もあり、当初計画よりも44%増の費用となったそうですが、国の補助金等以外に福祉医療機構の災害復旧資金11億3千万円ほどの融資を利用し、賄うことができたとのことです。


地域の避難所としての役割を担う

 再建後の施設は、岩沼市と災害協定を結び、地域の避難所としての役割も担います。1階から屋上まで繋がる避難階段を設置することで、緊急時には近隣住民の方がすぐに施設の屋上まで避難できるようにしています。また、定期的に地元の消防の方を招いて、施設職員へ心肺蘇生などの救命講習も行われています。

▲ 屋上からの風景(地域の避難所の役割も担う) ▲ 直接1階から屋上へ上れる避難階段を設置

人材確保が困難

 現在の稼働率は70%程度とのことで、稼働率を上げていくためには、人手不足を解消しなければならないとのことです。人的な配置基準は当然満たすとしても円滑な事業運営には、それ以上の人手の確保が必要とのことでした。
 ハローワークへの求人募集をはじめとした考え得る対応はすべて行っているとのことですが、全国的に人手不足ということもあり、人材不足への対応は困難とのことでした。

地域の中核を担う施設へ

 それでも人材確保のためには、地域の方に施設を知っていただくことが重要であると、地域ボランティアの受入れを始めたり、地域で行う行事に施設を提供したりと、地域との連携に積極的に取組まれています。そのような甲斐もあって、特別養護老人ホーム赤井江マリンホームの事業再開から間もないにもかかわらず、同法人へはグループホームを新設してほしいとの要望も地域から届いているとのことです。
 今後は、一歩ずつ地域との連携を進められ、地域に無くてはならない施設として、活躍されることを期待せずにはいられません。


<< 法人概要 >>
法人名 社会福祉法人ライフケア赤井江 理事長 上野 春雄 氏
法人施設 特別養護老人赤井江マリンホーム、デイサービスセンターくろまつ荘、マリンホーム介護支援センター、マリンホーム地域包括支援センター、グループホームあぶくま、小規模多機能型居宅介護朝日、グループホーム朝日
旧施設所在地 宮城県岩沼市下野郷字浜243番地39
新施設所在地 宮城県岩沼市押分字新田東109−2
福祉医療機構融資額 1,131,700千円
法人設立時期 昭和55年10月17日 施設再建時期 平成26年1月
電話 0223-29-2141 FAX 0223-29-2142
URL http://www.akaikoh.or.jp/


取材動画


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