被災福祉施設復興事例紹介
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▲ 特別養護老人ホームあいぜんの里外観 | ▲ 地盤沈下し、入り口にできた段差 |
特別養護老人ホームあいぜんの里は、デイサービスセンターを併設して、平成10年4月に定員70名で開設。平成22年4月には20床の一部ユニット型を増床して、これまで事業運営を行ってきました。地域との連携では、町内会合同納涼大会、ふれあいお楽しみ会、ボランティア活動といった各種活動に施設を開放して交流を深めてきました。地域住民にも親しまれていたせいか、東日本大震災では本来の指定避難場所は別にあったものの、あいぜんの里へと避難する方も大勢あり、近隣の施設からの避難者を含めて200名ほどの受け入れを行いました。震災時は、建物の一部損壊により、ユニット20名の利用者を多床室へ避難させることが強いられ、停電、電話・携帯等の連絡手段が全て不通、ボイラーも停止し、生活に必要なインフラが使えない困難な中で、緊急避難所としての役割を担いました。
被災後、損壊した建物の修復のための資金については、国の補助金等以外に福祉医療機構の災害復旧資金1億9千万円ほどの融資を利用しました。震災時の速やかな対応が復旧の助けになったとのことです。修復後は、数日間停電をした経験を踏まえ、施設全体で1週間から10日程度の電気を賄えるようにと、自家発電装置の増設も行いました。これには、地域全体が暗闇となる中で施設に明かりが燈ることは、灯台の灯火のように地域住民の安心の拠り所になるのではないか、との思いがあったそうです。
今後は「地下水膜ろ過システム」の導入も検討されています。財源の確保等の課題はあるものの震災時に水を確保することは非常に重要であるため、「どうしてもやりたい」(施設長 古川さん。以下同じ)とのことでした。
▲ 震災後、増設した自家発電装置 | ▲ 非常時は自家発電装置に切り替わり電源が供給されるコンセント。わかりやすく「赤」が目印となっている。 |
現在の課題としては、人材確保があげられるとのことです。震災前からの職員の方で、被災したことを受けてご家族の都合等からも離職を余儀なくされる方がいたり、また、新しい職員を確保することについては、地域の特別養護老人ホームとも協同して就職相談会を開くなどの新たな取り組みを行ってはいるものの、大手総合スーパーが震災復興を見越して地元に開設したことで、そちらに人材が流れてしまい、通常時に増して人材の確保が困難になってしまったとのことです。
このように新規での人材確保が難しい中で法人独自に取り組まれていることは、今いる職員の“働きやすさ”の向上です。
就業規則等の整備を行い、正職員と準職員で差があった休暇制度を改善したり、若手の子育て世代の職員の方が多いため、「子どもの行事休暇」を特別有給休暇として設けたりといった休みやすい環境を整えています。さらに今後はキャリア段位制度の導入など職員のモチベーションアップにつながる仕組みの導入も検討されています。
今後の取り組みとして、実施したいことはたくさんあるとのことでしたが、一方で社会福祉法人の在り方等に関する検討会の報告書が示されたこと、平成27年度からは改正介護保険法が施行されること、運営する一部ユニット型の収益が”平成23年8月18日の改正省令による一部ユニット型特別養護老人ホームの廃止”に伴って減収になることなど、取り巻く環境も変化し、対応が迫られることも多いため、人的にも資金的にも環境的にも「今はやりたいことも“ジッ”と我慢をするときか」と、より慎重を期さざるを得ない思いも言葉の節々から感じました。
そうした経営的に厳しい状況の中にありますが、施設長の古川さんは「地域のあらゆる困りごとにしっかりと耳を傾けましょう」と日頃から職員に伝えています。
この言葉を通して、今後も「地域の拠り所」として信頼され、また、昨年からは、釜石市と福祉避難所としての契約も締結したことで、「安心の拠り所」としても益々活躍されることを期待せずにはいられません。
法人名 | 社会福祉法人清風会 | 理事長 | 小泉 嘉明 氏 |
法人施設 | 特別養護老人ホームあいぜんの里(ショートステイ含む)、あいぜんの里デイサービスセンター、あいぜんの里在宅介護支援センター | ||
施設所在地 | 岩手県釜石市大字平田第2地割51番地7 | ||
福祉医療機構融資額 | 192,500千円 | ||
法人設立時期 | 平成9年 | 施設開所日 | 平成10年4月1日 |
URL | http://aizen-iwate.jp/ |