被災福祉施設復興事例紹介
|
▲ 介護老人福祉施設 田子のまち | ▲ 交流ホール |
宮城野の里では、トイレ用水には雨水を使用したり、非常用電源の設置など、万が一に備えていましたが、非常用電力は短時間で尽きてしまったため、トイレ用水のくみ上げもできず、人海戦術で乗り越えたということです。同法人の他施設の経験では、電気はガスよりも早く復旧したため、オール電化としていた施設では調理をすることはできましたが、暖房はガスを利用していたため、暖をとることが大変だったそうです。その後も余震で何度もガスが止まったりしたため、不安な日々が続きました。
避難所としての経験を通して感じたのは、「地域とのつながりがいかに重要であるか」ということだそうです。食料の確保については、特に実感したそうです。
地域の方が家にある食料を持ってきてくれたり、農家の方が野菜を持ってきてくれたりしました。また、停電により工業地帯の冷蔵庫が稼働しなくなってしまったこともあり、業者の方が冷蔵庫にあった食料を持ってきてくれたりしました。地域の方に支えられながら、このような日々が約1ヶ月続きました。
「地域の方が『ここには、たくさんの高齢者がいる』と、自分たちが思っていた以上に施設の存在を認識してくれていたおかげ」(法人事務局長 海和さん)とおっしゃっていました。
震災の経験を生かして、田子のまちは平成25年9月に開所しました。避難所としての教訓を生かしたつくりになっています。
施設内の会議室は区切ることができ、避難所としても利用できるようにしました。プライバシーの確保に努め、また、ミニキッチンも併設しました。非常用電源は、3日間持続可能なものを設置しました。「3日間」には理由があります。震災時、3日後に民医連から物資が届いたことから、3日間は自力で乗り切ろうという考えによるものです。
共同スペースには暖炉を設置しています。震災のあった3月は、まだまだ寒い時期でしたので、暖をとり、かつ、暖炉の熱を利用して調理にも生かすことも想定しています。
災害時における宮城野の里との連携も考慮しています。宮城野の里は都市ガスを利用しているので、田子のまちはLPガスを採用しました。ライフラインが寸断された時でも、どちらかが復旧すれば、復旧した施設に利用者や避難してきた人を集めようという考えです。
▲ 会議室(区切ることができます) | ▲ 共同スペースに設置された暖炉 |
「地域とのつながり」を大事にする田子のまちは、地域に開かれた施設となっています。
田子のまちに入るとすぐ、レストランがあります。利用者とその家族の交流の場としても、ご利用いただく機会があるということです。理美容室は、地域の理美容師の協力を得て開店しています。これらは、地域の方も利用することができます。会議室の貸出しも行っており、併設のミニキッチンも使うことができます。その他にも、図書ブースや売店(予定)もあります。
▲ レストラン | ▲ 図書ブース |
人材確保については、学生数が減っていることもあってご苦労もあるようですが、田子のまちでは、様々な取組みを行っています。
田子のまちでは採用の「準備室」を設置し、早めの行動・情報発信を行って人材を確保しました。法人の進む方向を示したパンフレットやDVDを作成し、学校に配布しました。また、田子のまちでは、学生の施設見学をいつでも受け入れています。実際に施設や職員の姿を見てもらうことで、将来自分が働いている姿を想像しやすくするためです。また、職員研修にも力を入れており、介護研修室も設置しています。
▲ 介護研修室 |
田子のまちでは、「二度とないこの瞬間(とき)を“あなたらしく”輝ける場所に」という基本理念のもと、福祉サービスの提供をしています。食事や睡眠、入浴の時間は、各々の生活リズムを大事にし、「家もいいけど、ここもいい」と思ってもらえるような場所づくりを心掛けています。
また、宮城野健康福祉友の会を通した地域活動を展開しており、地域全体を支える施設として、今後も活躍されることでしょう。
法人名 | 社会福祉法人宮城厚生福祉会 | 理事長 | 福岡 眞哉 氏 |
法人施設 | 介護老人福祉施設 田子のまち、介護老人福祉施設 十符・風の音、ケアハウス宮城野の里、デイサービスセンターくりこまの里、古川ももの木保育園、柳生もりの子保育園、下馬みどり保育園、乳銀杏保育園、就労継続支援事業工房歩歩、仙台市宮城野児童館 | ||
旧施設所在地 | − | ||
新施設所在地 | 宮城県仙台市宮城野区田子字富里153番 | ||
福祉医療機構融資額 | − | ||
設立時期 | 平成9年3月 | 再建時期 | 平成25年9月 |
URL | http://www.kou-fuku.or.jp/tago/index.html |