早急な再建に尽力した「特別養護老人ホーム恵心寮」
東日本大震災により被災した特別養護老人ホーム恵心寮。1階は津波が押し寄せ、甚大な被害を受けました。特別養護老人ホーム恵心寮では、幸いなことに人的被害はありませんでした。だからこそ、入居者が少しでも早く安心した生活を取り戻すことができるよう、早急に施設を再建したかったということです。
被災した特別養護老人ホーム恵心寮から5〜6km内陸に移動し、平成26年7月に津波の心配のない高台に再建しました。
|
|
▲ 再建した特別養護老人ホーム恵心寮 |
▲ 被災した特別養護老人ホーム恵心寮 |
万全に備えた防災対策
社会福祉法人なかつうみ会の防災対策は、東日本大震災の約1年前、チリ地震の教訓が生かされたということです。チリ地震により、初めて大津波警報が発令されました。避難所は近隣の中学校と決めていましたが、実際に避難してみると、全員を避難させるには時間がかかりすぎるということが分かりました。もし、宮城沖で津波があった際は30分以内に避難しなければという認識があったため、避難先を中学校ではなく特別養護老人ホーム恵心寮の2階へと変更し、実際に東日本大震災当日は2階に避難しました。
再建した特別養護老人ホーム恵心寮では、備蓄等は2階に置いており、3日間は自力で過ごすことができるよう準備していました。備蓄庫には、食糧や毛布、カイロ、ランタン等を備えており、貯水タンクもあります。
備蓄の他にも、防災対策がとられています。緊急時の特殊コンセントがあらゆる場所に設置されており、自家発電時にのみ使用できるそうです。自家発電機は、特別養護老人ホームが25秒停電すると自動で稼働するようになっています。また、ポータブル発電機もあり、職員全員が使えるように研修も行っています。
|
|
▲ 自家発電機 |
▲ 特殊コンセント |
人材の確保に苦戦
特別養護老人ホーム恵心寮は、人材確保が最優先の課題となっています。気仙沼市は、震災後に人口の1割が減少しました。周辺地域では、職種を問わず人材確保が困難な状況であり、福祉関係のカリキュラムがある高校もなく、若手職員の確保はとても厳しい状況ということです。社会福祉法人なかつうみ会では、3つの特別養護老人ホームを運営していますが、いずれの施設においても職員の確保が課題となっているそうです。
人材確保の取り組みとして、ハローワークへの掲載、就職相談会やセミナーへの参加、学校訪問等を実施しています。また、法人内でリクルートの特命チームを作り、人材確保に努めています。今までは利用者向けのパンフレットを作成していましたが、採用に関するパンフレットを作成したり、ホームページにも求人情報を掲載したりしています。
地域交流
特別養護老人ホーム恵心寮では、様々な行事を通して自治会との交流を深めたり、ボランティアの活動(花植えや干し柿づくり)等、地域との交流を積極的に行っています。地域交流室には舞台を設置することもでき、餅つき等のイベントも開催されています。
また、特別養護老人ホーム恵心寮に隣接する駐車場(にいつきパーキング)で、毎週土曜日に開催される「軽トラ市(軽トラの荷台で物産の販売する市)」にも参加しています。
|
▲ にいつきパーキング(展望ラウンジからの眺め) |
利用者の心落ち着く場所として
特別養護老人ホーム恵心寮は、全体的に木の温かさを感じることができる造りになっており、利用者が落ち着くことができる“家”としての気配りがされています。以前の特別養護老人ホーム恵心寮に愛着のある利用者もいらっしゃいます。当時は、1本の太い木の梁が天井にありました。新しい特別養護老人ホーム恵心寮でも、それをイメージして木の梁を見せるようにしています。
また、娯楽室ではユニットごとにイベントを企画したり、お誕生日会を開いたり、利用者やその家族が利用できる図書室もあります。展望ラウンジからは、気仙沼を一望することができ、カモシカや野うさぎ等の動物も姿を現すことがあるそうです。
|
▲ 展望ラウンジ |
気仙沼市は人口の減少に伴う人材不足、防潮堤の建設等、いまだ抱える課題がありますが、利用者や地域全体を支える存在として、特別養護老人ホーム恵心寮の活躍を祈るばかりです。
<< 法人概要 >>
取材動画