生活困窮者自立支援関連情報
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▲ 平成25 年度の助成事業で作成したハンドブック「ひとり親家庭 応援します!」。できる限り専門用語を使わず、誰もが理解ができる内容にこだわった。判型は、女性のカバンに収まるA 5 サイズにした | ▲ 社会福祉会館内にある、ひとり親家庭福祉会ながさきの事務所 |
ハンドブックの作成にあたっては、長崎県の福祉読本作成に携わってきた元小学校校長を中心に、弁護士、支援団体関係者で構成する編集委員会を立ち上げ、内容について議論した。行政の発行する制度・施策に関するパンフレット等は、知識をもたない当事者にとって内容を理解することが難しいという声があったことから、できる限り専門用語を使わず、伝わりやすい言葉を選ぶことで誰でも理解できる内容とすることにこだわった。目次の項目と解説ページの色を使い分けることや、字体も若い人から高齢者までなじみやすい教科書体を採用するなど工夫をしている。
「関係者だけで作成したガイドブックは、どんなにわかりやすく作っても当事者が理解できない部分が必ず出てきます。そのため、一つひとつの項目をつくるたびにひとり親の方にも確認してもらい、わかりにくいという意見が出れば、編集委員会で作り直すことを繰り返し行いました。また、すべての項目にQ&Aを掲載してイメージをつかみやすくしていることも特徴です。質問項目の作成においてもアンケートを実施し、当事者の理解が少ない支援などについて選定しています」(山本事務局長)。
完成したハンドブックは3,000部発行し、関係機関や保育所、ハローワークなどに配布するほか、市内の学童保育には、ひとり親家庭一世帯に一冊が手元に届くように約1,000部を配布した。
また、ひとり親家庭からの相談を受け、個々にあった支援策をコーディネートする役割を担う、専門性の高い相談員の養成講座を平成25年9月〜26年1月の期間に10回にわたり開催している。
参加者の公募には、新聞広告や地域のフリーペーパーを活用したところ、30人を超える応募があり、最終的に19人が受講した。参加者は全員女性で、なかには自身もひとり親家庭で、これまでの経験を活かし支援していきたいと考える人もいたという。
講座のプログラムは、生活保護受給や生活福祉資金の手続きなど制度・施策に関する講義をはじめ、法律、コーチングの手法、就労支援のための履歴書・職務経歴書の記載方法や面接の受け方など幅広い内容となっており、各講座の終了後には毎回レポートを提出してもらった。講師は、日頃の業務で連携する行政や弁護士、生活困窮者の支援を行う団体、病院関係者などに引き受けてもらうことで、スムーズにプログラムを組むことができたという。
また、講座のプログラムでは、ロールプレイを多く取り入れた。
「ロールプレイでは受講者を4人1グループにして、相談者、カウンセラー、傍観者の役に割り振ります。相談者役は自分の本当の悩みを相談し、カウンセラー役がどのように答えるかをみて、講師がアドバイスをしていきます。終了後にはセッションをして、それぞれの役の感想をレポートにまとめ提出してもらいました。やはり相手の気持ちを理解するためには、相談者の立場や受ける立場、第三者的にみる立場を体験することが必要だと考えています」(山本事務局長)。
講座修了者には、同法人が認定する資格を付与しており、受講者19人のうち17人が認定を受けた。
講座終了後には、養成した相談員による総合的な相談窓口を設置し、ひとり親家庭の相談に対応していくとともに、実際の相談を受けることでスキルを高めている。養成した人には仕事の空いている時間に交代で相談に入ってもらい、山本事務局長を中心に職員がサポートする体制とした。
相談者は9割以上が女性であり、女性からは就職や生活費などの収入面、男性からは子どもを預けられる支援や思春期の対応など生活面に関する相談が多いという。
「最近の傾向として、経済力がなくても行政がなんとかしてくれると思い、離婚を考える若い母親が増えています。保証人がいなければ家を借りられないことや実際に受けられる支援を説明し、本当に離婚する時期であるかを確認しており、ひとり親家庭だけでなく、その前の段階からの支援も必要になっています」(山本事務局長)。
養成した相談員のなかには、ひとり親家庭の人もいるため、相談内容と自分の辛い経験をリンクさせ、引きずった気持ちを自宅に持ち帰ってしまうケースがある。気持ちをいったん整理しなければ次の相談を受けられず、支える側も精神的に疲れてしまうため、相談を受けた後には、山本事務局長から30分ほどのカウンセリングを受け、必ず気持ちを整理するよう配慮している。
「相談員はどうしても知っている制度・施策について話しがちになるのですが、相手は話を聞いてほしいと思っていますので、まずはしっかり傾聴して、相手の話している内容から真意を引き出し、理解していくことが大切です。また、相談というのは必ず本人に考えてもらわなくてはいけないので、『自分の経験ではこうだった』と話してしまうと、相談者がそれに誘導されてしまうことがあります。それが本当の気持ちかわかりませんし、それによってその方の人生を決めてしまう可能性があるということを、養成した相談員に伝えています」。
なお、相談窓口を設置した平成26年1月21日〜3月31日に対応した相談件数は109件にのぼった。
山本事務局長は事業の成果の一つとして、ひとり親家庭に対する支援をわかりやすく解説したハンドブックを作成し、広く配布できたことをあげる。これまで行ってきた相談窓口などの周知方法として、行政の広報誌に掲載する方法などがあるが、ひとり親家庭の人は地域の自治会に入っていないことが多く、広報誌を通じて知ってもらうことは難しいという。今回の事業で支援が必要な人や悩みを抱える人に届けることができたため、同法人に寄せられる相談件数は飛躍的に増えたという。配布先の関係機関からも非常に好評で追加の要望が殺到し、現在は在庫がわずかとなっている。行政等の専門職にとっても、もう一度制度・施策について考えるなど、意識改革につながったという。
また、養成講座によって地域で不足する専門性の高い相談員を17人育成できたことも大きな成果である。
「これまで法人内においては、私が一人で多くの相談支援を抱えていたこともあり、何かあった時に他の人が対応できる体制をつくることは長年の課題でもありました。今回の事業で、少しでも解消につながったことはよかったと思います。養成者のなかには、当法人が委託運営する『長崎県ひとり親家庭等自立促進センター』で3人、母子家庭を含む子育て女性の就職支援を実施する『ハローワーク長崎マザーズコーナー』で1人が雇用され、支援員として活動しています。全国にある母子会から事業概要や養成プログラムの組み方についての問い合わせが多くあるなど、高い関心が寄せられました」。
そのほかの養成者からも、それぞれの地域のなかで相談支援を行っているという報告を受けており、支援に広がりが出てきている。
▲ 一般社団法人ひとり親家庭福祉会ながさき 理事長 福地 照子氏 |
法人名 | 一般社団法人ひとり親家庭福祉会ながさき | ||
住所 | 〒850-0054 長崎県長崎市上町1番33号 社会福祉会館3階 |
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電話番号 | 095-828-1470 | FAX | 095-828-1476 |
理事長 | 福地 照子 | 法人設立 | 昭和44年1月 |
URL | http://www.nagasakishi-boshikai.jp/ | ||
助成実績 | 平成25年度 「ひとり親家庭就労支援相談員養成事業」(助成額:287万3千円) | ||
事業概要: ひとり親家庭が「自分にあった適切な支援を受け、一人ひとりが安心して暮らすことのできる」ことを目的に、ひとり親のための支援をわかりやすく解説したハンドブックを作成するとともに、個々にあった支援策のコーディネートを行う相談員を養成し、相応的な相談窓口を設置する事業 |