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兵庫県明石市・医療法人財団光明会 明石こころのホスピタル

密度の濃いチーム医療を実践し、早期退院をサポート

 近年、精神科医療を取り巻く環境が大きく変化している状況のなか、兵庫県明石市にある明石こころのホスピタルは、急性期に特化した精神科専門病院として、密度の濃いチーム医療を提供し、患者の早期退院・地域移行につなげている。その取り組みを取材した。

※この記事は月刊誌「WAM」平成28年12月号に掲載されたものです。


精神科専門病院として地域の精神科医療を支える


 兵庫県明石市にある医療法人財団光明会・明石こころのホスピタルは、精神科専門病院として昭和6年の設立以来、「人間への深い眼差しをもった精神医療の実践」という理念のもと、地域の精神科医療を長年にわたり支えてきた。精神科の急性期に特化した同院の病棟編成は、精神科救急入院料病棟(スーパー救急病棟)200床、精神科急性期治療病棟54床となっており、新規入院患者の6割以上を3カ月以内に退院させるなど厳しい施設要件・配置基準のあるスーパー救急病棟は、全国的にも有数の病床数となっている。
 外来は精神科一般をはじめ、心療内科や摂食障害、児童思春期から大人の発達障害まであらゆる精神疾患に対応し、入院患者は統合失調症を中心に、高ストレス社会の影響からうつ病、覚せい剤・危険ドラッグなどの薬物関係の依存症患者が急増している傾向があるという。
 入院治療では、症状が活発な急性期の患者に対して、24時間365日の救急体制をとり、密度の濃いチーム医療を実践。短期間、集中的に質の高い医療を提供し、入院患者の早期退院・地域移行につなげることで、平均在院日数は精神病床の全国平均が約270日であるのに対し、同院では高齢者も含め80日以内という高い水準を維持している。


病院改革により、退院促進・地域移行を方針に掲げる


 近年、精神疾患の患者にあっても早期の地域移行が推進されているなか、同院が急性期病院としての機能を強化する方針を打ち出したのは今から13年前、院長代行・副院長の熊野肇氏が県立淡路病院から着任し、病院改革に着手したことがきっかけであった。
 病院改革を実行した経緯について、熊野院長代行は次のように語る。
 「当時の病院は、5年以上の入院患者が半数にのぼるなど旧態依然としており、医療なのか生活の場なのかわからないような状態にあり、このままでは経営が成り立たなくなることは明らかでした。そのため、病院改革では徹底した退院促進・地域移行の方針を打ち出し、救急・急性期としての機能強化に取り組みました。これらの方針のもと、ピーク時に344床あった病床数を段階的にダウンサイジングし、病床の適正化を図ることで密度の濃い医療を提供できる体制をつくりました」。 
 また、当時は地域で退院後の在宅療養を支えるサービスが十分ではなかったため、院内にデイケア・デイナイトケアを併設したほか、自宅で患者の容態の変化があればすぐに対応できる精神科の訪問看護にも力を入れ、退院後のフォロー体制を整備した。近年、精神科の薬物療法は副作用の少ない単剤化の流れがあるが、同院では早期退院につなげるため、病院改革を実行した早い段階から単剤化に取り組んでいる。病院改革では、急性期への移行に向けて、医療スタッフにこれまでの働き方を変えてもらう必要があり、法人の方針をしっかりと理解してもらうことに苦労したという。なかには離職するスタッフもいたが、院内研修や外部研修を活用しながら現場で指導していくことで理解を深めた。さらに病院改革では、精神科は医療のなかでも患者への対応が遅れていると感じていたことから、患者に対する接遇や人権についての教育にも力を入れた。 
 同様に患者・家族に対しても、退院後の地域生活への不安を取り除いてもらえるまで、繰り返し説明を行ったという。


▲総合受付とラウンジは、天井が高く採光のよい広々とした空間

精神科のイメージを払拭する新病院を完成


 さらに同院は、建物が老朽化したことから、耐震化整備と施設機能の強化のために病院の全面建て替えを実施した。着工から竣工まで約2年の期間を経て、平成26年9月に新病院が完成している(WAM医療貸付事業利用)。
 また、新病院の完成にあたり、病院名を「明石こころのホスピタル」(旧明石病院)に改称した。病院名をやわらかい響きにすることで精神科に対する偏見や怖いといったイメージを払拭したいという想いが込められている。
 新病院のコンセプトについて、副院長・看護部長の岡山多寿氏は次のように語る。
 「施設設計では、”精神科病院らしくない“明るく開放的なデザインを採用するとともに、患者さんの快適な入院環境のために病室の半数以上を個室にしました。地域に開かれた病院を目指すことをコンセプトに掲げ、院内にはレストランやコンビニなどを設置しているのですが、日頃から地域住民に利用してもらい、病院を身近に感じていただくことで、発症したときにも気軽に受診してもらいたいと考えています」。


▲ゆったりしたスペースの外来待合室 ▲病院1 階の廊下には、癒しの空間としてホスピタルギャラリーを設置

チームを病棟専従にすることで質の高いケアを実現


 短期の集中的な治療を行う体制については、医師、看護師、精神保健福祉士、薬剤師、臨床心理士、作業療法士、理学療法士、栄養士などの多職種で構成するチーム医療を実践する。同院では電子カルテを導入しているため、基本的には疾病ごとのクリニカルパスに基づいてチーム医療が流れるかたちになっている。「当院のチーム医療の特徴としては、医師をはじめとするすべての専門職を病棟ごとの専従にしていることがあげられます。病棟に常にチームがいることで患者さんにとって安心感がありますし、スタッフも連携が図りやすくなります。さらに病棟を疾病別に分けているので、それぞれのチームは精神科医療のなかでも専門性が高まり、質の高いケアを提供できることが大きな武器になっています。このような体制をつくるためには、多くの専門職が必要になりますが、患者さんにとっていちばんよい環境をつくることが何よりも重要なことなので、診療報酬上ではなく、必要人員で配置を考えています」(岡山副院長)。
 チーム医療をしっかりと機能させるためには、職種間の垣根をなくし対等な立場でそれぞれの専門性を活かすことが重要であると岡山副院長は指摘する。同院の場合、病棟で陣頭指揮をとっていた岡山副院長が看護部長とリハビリテーションの部長を兼任し、その後、副院長に就任したことが大きく、職種全体をフォローできるようになったことで、一つの部署・職種が突出するのではなく、フラットな関係のチームをつくることのできる要因となった。そのほかにも、文化祭や運動会、駅伝大会など、スタッフが一致団結できるイベントを定期的に企画していることが職種の垣根をなくすことにつながっているという。
 なお、同院には病棟のチームのほか、糖尿病やCVPPP(包括的暴力防止プログラム)、ICLS(医療従事者向け蘇生トレーニング)などの多職種チームがあるが、これらはすべてスタッフによって自発的につくられたチームだという。日頃から職種間でコミュニケーションをとっていることが、このような自主的な活動につながっている。

▲患者に快適な入院生活を送ってもらうため、新病院では半数以上を個室にした▲外来治療を行うデイケア・デイナイトケアでは、病棟と同様に多職種によるチーム医療を実践

デイケア・訪問看護を設置し、退院後の在宅療養をサポート


 退院後のフォロー体制では、院内に併設したデイケア・デイナイトケアで外来治療を行っている。病棟と同様に多職種のチームで服薬の自己管理や疾患別のプログラムを支援し、患者の自分らしい生活を支えている。
 訪問看護では、看護師10人をはじめ、精神保健福祉士、作業療法士などの多職種を配置し、患者の病状にあわせて多職種がチームを組んで訪問する。夜間にも対応し、容態の変化があればすぐに対応できるため、患者が安心して在宅療養を送ることが可能となっている。
 そのほかにも、兵庫県から職場復帰支援事業所 「リワーク」(定員19人)の認定を受け、復職支援に取り組んでいる。
 「『リワーク』では、主にうつ病で休職している患者さんに対して、認知行動療法などの職場復帰プログラムを実施するとともに、職場との話しあいもしていきます。患者は20〜30代が中心で公務員や看護師などの職業の方も多いのですが、職場復帰率も高く、毎回定員いっぱいの状況となっています」(岡山副院長)。

▲各病棟に設置したデイコーナーは、開放的な空間で海を一望することもできる ▲併設するレストランは、面会に訪れる家族だけでなく地域住民にも利用される

看護師の教育体制の充実が人材確保につながる


 医療スタッフの確保は全国的な課題となっているなか、同院では医師・看護師ともに配置基準を大きく上回る必要人員数を確保することができているという。
 医師については、精神科医療の症例数が豊富であることが大きな特色となっており、救急で多忙な勤務環境にかかわらず、20人以上を確保している。
 一方、看護師についても、病院改革を実行した際に多くの退職者が出たものの、現在は新卒・経験者とも応募が集まり、質の高い人材を採用することができている。
 「看護師の採用では、IT室に2人のスタッフを配置し、ホームページやインターネットの看護師サイトを見やすく工夫していますが、精神科らしくないイメージ戦略はとても重要だと考えています。また、当院は看護師の教育にはかなり力を入れているのですが、研修体制などの情報を詳しく掲載しています。基本的に看護師は学ぶことが好きなので、応募した理由でも教育制度の充実をあげる人が多くなっています」(岡山副院長)。
 看護体制については、看護師が常にペアとなり、互いに補完・協力しあうPNS(パートナーシップ・ナーシング・システム)を採用し、新人でも安心して業務に取り組むことができる環境をつくっている。
 教育体制では、段階ごとに研修が組み込まれるクリニカルラダーの導入のほか、全体研修やさまざまなラダー別研修を企画・開催。十分な人員を確保していることで、多くのスタッフが外部研修などに出かけても病棟が回るため、看護師は自分の受けたい研修を選択して看護技術や知識を習得することができる環境となっている。
 また、役職はラダーに基づきあがっていくシステムとなっており、ポスト数も制限せず基準を満たせば役職につけるため、スタッフが意欲的に研修に取り組むことにつながっている。 急性期に特化した精神科専門病院として、密度の濃いチーム医療を実践し、患者の早期退院・地域移行につなげる同院の取り組みが今後も注目される。


質の高い医療を標準化し、継続させる
医療法人財団 光明会 明石こころのホスピタル

COO 副院長 看護部長 岡山 多寿氏

 当院は救急・急性期に特化した精神科病院として、患者さんと同じ目線で医療を提供できることにこだわってきましたが、質の高い医療を標準化し、継続していくことが精神科医療の目標だと感じています。
 今後の構想としては、外来に力を入れていきたいと考えています。これまで医師・看護師のほか、臨床心理士を配置していたのですが、作業療法士も加え、外来でチーム医療を推進していくことを来年度の目標にしています。現在はさまざまなプログラムづくりに着手しているところで、退院された方もプログラムを受けながら過ごしていける体制をつくりたいと思います。
 また、新病院になった影響から初診患者数が大幅に増加しています。診察の質を維持するためにも来年度はクリニックを開設し、受診しやすい環境をつくることを構想しています。


職種全体のスキルを高める
医療法人財団 光明会
 明石こころのホスピタル
CEO 院長代行・副院長 熊野 肇氏(精神保健指定医)

 当院のいちばん大きな特色は、各職種の垣根がなくフラットであることだと感じています。今後の医療は、いかによい人材を確保・育成していくかが課題となりますが、とくに精神科の場合は多職種が集約されたかたちのケアを提供することが重要なため、職種全体の能力を高めていきたいと考えています。
 また、経営面でいうと、あらゆる精神疾患に対応していることが当院の売りである一方で、すべての専門性に特化することは人材的にも厳しいため、ある程度スリムにすることを決断していく必要があります。
 当院だけでよりよい精神医療は実現できませんので、時代の求めるニーズとともに、地域の精神病院のビジョンなどに応じて判断していくことが今後の大きな課題になっています。



<< 施設概要 >>
施設の概要 276床(精神科救急入院料病棟200床、精神科急性期治療病棟54床他) 施設開設 昭和6年7月
理事長/院長 西村 宏一
診療科 精神科、神経内科、心療内科
法人施設 精神科デイケア・デイナイトケア、訪問看護、リワークデイケア
住所 〒673−0044兵庫県明石市藤江1315
電話 078−923−0877 FAX 078−923−8262
URL http://www.akashihp.com/


■ この記事は月刊誌「WAM」平成28年12月号に掲載されたものを一部変更し掲載しています。
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