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— 兵庫県神戸市・医療法人社団渾深会 介護老人保健施設 鵠芭(たづは) —

在宅復帰に向けてオーダーメイドのリハビリを提供

福祉医療機構では、地域の福祉医療基盤の整備を支援するため、有利な条件での融資を行っています。今回は、その融資制度を利用された兵庫県神戸市の介護老人保健施設「鵠芭」を取りあげます。同施設は、リハビリ専門施設として在宅復帰に向けてオーダーメイドのリハビリを提供しています。施設概要や実践する取り組みについて取材しました。

▲ 施設の外観

地域に根ざした医療・介護サービスを提供


 兵庫県神戸市にある医療法人社団渾深会は、「困っている人を、医療・介護を通して助ける」という法人理念のもと、地域に根ざした医療・介護サービスを提供している。
 法人施設は、昭和34年に開院した奥知外科医院をはじめ、訪問看護ステーション「神楽」、小規模多機能型居宅介護と認知症高齢者グループホームの複合施設「更紗」を運営し、主に神戸市の兵庫区、長田区、中央区の在宅医療・介護を支えている。
 同法人は、地域で在宅医療を行う医療機関が少なかった開院当時から往診を開始するとともに、訪問看護ステーションを立ち上げた際には、訪問リハビリにも力を入れ、地域の支援ニーズに対応するかたちで事業を展開してきた。認知症高齢者の増加に対しては、グループホームとともに、「通い」、「宿泊」、「訪問」を一体的に提供する小規模多機能型居宅介護を併設することにより、地域で生活し続けることを支えている。
 現在、訪問看護ステーションは、看護師20人を擁する市内でも有数の規模となっており、垂水市にサテライトを開設してエリアを拡大しているという。
 さらに、同法人は令和4年9月に神戸市の公募事業の採択を受け、介護老人保健施設「鵠芭」を開設した。
 老健を開設した経緯について、理事長の奥知博志氏は次のように説明する。
 「神戸市は、全国と同様に高齢化が進行し、要介護認定者が毎年2000人ほど増加するなか、市内全体の老健の定員数は平成27年から20床の増床にとどまり、直近4年間(令和3年度時点)で新規開設した老健はありませんでした。とくに、開設地の兵庫区は市内でも高齢化が進んだ地域にも関わらず、介護施設が少なく、在宅復帰の機能を担う老健へのニーズが高かったことから老健の新設を計画しました。もともと、当法人では新規の事業計画を考えていたところで、土地の確保で目途がついたタイミングでもありました」。


リハビリ専門施設として短期集中型のリハビリを実践


 令和4年9月に開設した同施設は、「『できる。』よろこびを大切に」という理念を掲げ、リハビリ専門施設としてリハビリとケアを短期間で集中的に行うことにより、利用者の在宅復帰につなげている。
 建物は地上6階建てで、1階にはリハビリテーション・トレーニングルーム、地域交流スペースが入り、2〜5階が居室フロアとなっている。入所定員は80人で、従来型多床室、個室、ユニット型個室と、多様な居室を用意することで利用ニーズに対応している。
 施設設計の特色や工夫について、リハビリテーション課課長の福島飛鳥氏は次のように説明する。
 「リハビリ専門施設として在宅復帰を目的としているため、外観や内装は地域にあるホテルやカフェをイメージし、施設らしくないデザインを採用しました。浴槽やトイレなどの設備も、あえて家庭用のものを使用し、福祉用具の種類、手すりの位置、高さなどの細部にこだわることにより、一人ひとりの利用者にあったものを見つけてもらい、自宅に戻ったあとも自分でできるような環境をつくっています。また、身体機能の改善には食事も大事であるため、料理がおいしく見えるように食堂は暖かみのあるオレンジ色、覚醒を促すトイレや廊下は白色の蛍光灯を組みあわせるなど、照明も工夫しています」。
 さらに、リハビリテーション・トレーニングルームには、豊富な最新のリハビリ機器を取り揃え、急性期の大学病院などで使用される、痛みの除去や筋力増強、関節をやわらかくすることで可動域を広げるなど、さまざまな効果があるラジオ波や電気治療器を導入。居室フロアでもリハビリができるよう廊下幅を広くとったり、屋上テラスに歩行コースを設け、外に出る意欲を引き出す環境をつくった。


 ▲▼ 高性能なリハビリ機器を多数取り揃えたリハビリテーション・トレーニングルーム。屋外の環境でリハビリに取り組むことのできるスペースを併設する  ▲▼ 各ユニットに設置した共有スペースと個室

リハビリの質と量を確保


 リハビリの提供体制では、理学療法士12人、作業療法士2人のほか、健康運動指導士2人を配置し、全国の老健と比較しても手厚い体制をとっている。
 「入所リハビリでは、理学療法士による1日30〜60分の個別リハビリを週6日実施し、作業療法士が利用者ごとに必要なADLに関するリハビリを提供しています。それに加えて、足りない分を健康運動指導士が補ったり、介護スタッフや看護師が24時間365日体制でリハビリにつながる生活支援を行うことにより、リハビリの質と量の両方を確保しています」(福島氏)。
 実践するリハビリの特色としては、利用者全員のWBI(Weight Bearing Index)を測定し、一人ひとりにあったオーダーメイドのリハビリを提供している。WBIは体重支持指数を指し、下肢の運動機能評価の指標として用いられ、性別、年齢に関係なく適用できる数値として目標設定から評価に至るまで活用されている。そのデータをもとに、総合的に筋力や可動域、バランスなどをすべて数値化し、リハビリメニューを組み立てることに活かしている。
 「導入した機種は、WBIの測定と筋力トレーニングを兼ね備えており、利用者には個人登録したカードを配布し、マシンにカードを挿入すると、利用者ごとの設定が自動で入ります。測定したWBI の数値は、立ち上がり、歩行、日常生活動作などの評価に活用することができます。例えば、立ち上がりの場合、自立に最低必要なWBIの数値は20%で、よりスムーズにするためには、50%が必要というように、現時点でどの段階にあるのかを数値で示すことができます。根拠をもって客観的に評価できるため、目標設定も明確になり、利用者が意欲的にリハビリに取り組むことにつながっています」(奥知理事長)。


ハイブリッドリハビリテーションを実践


 独自の取り組みとしては、利用者の状態に応じて専門的な手法を組み合わせるハイブリッドリハビリテーションを実践している。ハイブリッドリハビリテーションは、ただマシンを使用して筋トレをするのではなく、ラジオ波や電気治療器で刺激を加えながら筋トレを行い、そのあとに排せつや買い物の自立など、利用者が目標とする日常生活動作の訓練を組みあわせて実施する。異なるリハビリ要素を組みあわせることで相乗効果が生まれ、高い効果が得られるという。
 さらに、脳卒中や心臓、運動器・廃用、呼吸リハビリなど、さまざまな疾患に対するリハビリにも対応している。摂食・嚥下機能のリハビリでは、連携する歯科診療所の歯科医師に来所してもらい、施設内で嚥下内視鏡検査を実施し、利用者の状態に応じた食事形態を調整している。介護スタッフや看護師などの多職種が一緒に映像で確認することにより、利用者の喉の状態を知ったうえで安心して食事の介助をすることができ、利用者の改善につながっているという。
 ショートステイにおいても、レスパイトケアだけでなく、すべての利用者に個別リハビリを提供し、体力向上等に関する1カ月間の集中的なリハビリにも対応している。
 通所リハビリテーション(定員25人・1日2クール)は、主に心身機能やADLが低下した人を対象とし、食事や入浴支援を行わず、リハビリと運動のみに特化した90分の短時間集中型として実施している。とくに、男性や運動だけをしたい人から好評で、開設1年間で登録者数は120人を超え、毎月10件ほどの新規申し込みがあるという。


 ▲ 廊下幅を広く設計したことで、利用者の安全確保を図るとともにリハビリスペースとしても活用 ▲ ラジオ波・電気治療器を用いて、刺激を加えながら筋トレや生活訓練を行うハイブリッドリハビリテーションを実践し、高い効果を得ている
 ▲ 各フロアのトイレは、手すりの位置をすべて変えることで、どのような身体状態の利用者も使用可能に ▲ 利用者のWBI を測定し、運動機能評価を数値化することにより、リハビリの目標が明確となり意欲的に取り組むことにつながっている

「超強化型老健」に向けた取り組み


 これらのリハビリの取り組みにより、同施設の在宅復帰率は70%以上と高い水準で推移している。老健の施設類型は「在宅強化型」で、在宅復帰・在宅療養支援機能が最も高い「超強化型」の要件を満たすことを目指している。
 「超強化型老健に向けた取り組みとして、在宅復帰率や回転率はクリアできているものの、質・量とも高いリハビリを提供し、基本的に3カ月での在宅復帰を目指していることから、どうしても稼働率が下がるという課題があります。稼働率や回転率を高い水準で維持するためにも、地域の医療機関やケアマネジャーなどからの紹介に対し、一つひとつ結果を出し続けるとともに、当施設が実践するリハビリの取り組みを説明し、認知してもらうことが重要だと考えています」(福島氏)。
 そのほかにも、言語聴覚士を確保し、支援体制を強化していきたいとしている。  

     
 ▲ 屋上テラスには歩行コースを設け、利用者が外へ出る意欲を引き出す環境をつくった ▲ リハビリテーション課 課長 福島 飛鳥氏

大学と教育・研究分野の連携協定を締結


 医療・介護スタッフの確保が全国的な課題となっているなか、法人としては初の入所施設の開設にあたり、多くの専門職を確保する必要があったが、リハビリ職は比較的安定して確保することができたという。
 「リハビリ職については、最新機器を用いた科学的なリハビリを学びたいという人からの応募が多くありました。当施設は大学や専門学校から実習生を積極的に受け入れていることもあり、スタッフは若い人が多く、20歳代が半数以上を占めています。また、職員の育成では、専門スキルを学ぶ研修とともに、虐待や接遇に関する研修にも力を入れており、法人から研修補助費(年2回、2万円)を支給し、外部研修の受講も推奨しています」(奥知理事長)。
 毎週開催しているリハビリ職の勉強会では、ベテラン・若手職員に関係なく、全員が持ち回りで企画・進行を担当し、ケース紹介や自分の得意分野に関する発表を行うことに取り組んでいる。
 さらに、福島氏は神戸学院大学の臨床講師を務め、同大学の総合リハビリテーション学部と臨床・教育・研究分野に関する連携協定を結んでいる。大学教員が施設に出向いて指導を行ったり、大学から実習生を受け入れるなど、相互に教育・研究に関する連携が図られているという。
 在宅復帰、在宅療養支援のための地域拠点として、先駆的なリハビリ提供を実践する同施設の取り組みが今後も注目される。  


地域の在宅復帰・在宅療養支援の中心を担う
医療法人社団渾深会
理事長 奥知 博志氏
 今後の展望としては、老健本来の役割を全うし、専門性の高いリハビリや介護を通して、在宅復帰・在宅療養支援における地域の中心を担っていきたいと考えています。そのためにも、実践する取り組みを地域の医療機関や専門職等に説明し、当施設の認知度を向上させることが必要となっています。
 また、医療・介護分野は労働集約型産業の最たるものであり、地域ニーズに応えた医療・介護サービスを提供すると同時に、事業を安定的に運営して職員の生活を守らなければなりません。法人は職員を守り、職員は法人を支えるという意識を浸透させていきたいと思います。



<< 施設概要 >>
理事長 奥知 博志 開設 令和4年9月
入所定員 80名
併設施設 ショートステイ、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーション
法人施設 奥知外科医院/訪問看護ステーション「神楽」/認知症対応型共同生活介護・小規模多機能型居宅介護「更紗」
住所 〒652−0041 兵庫県神戸市兵庫区湊川町6丁目4−12
TEL 078−578−3333 FAX 078−578−3335
URL http://tazuha.com/


■ この記事は月刊誌「WAM」2023年11月号に掲載されたものを一部変更して掲載しています。
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