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サービス取組み事例紹介
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— 福岡県北九州市・医療法人社団翠会 八幡厚生病院 —

段階的に病床削減、地域移行を推進

福岡県北九州市にある八幡厚生病院は、段階的な病床削減を行い、入院患者の地域移行を推進しています。病床削減の取り組みや実践する医療提供の特色について取材しました。

▲ 施設の外観

地域の精神科医療の中核を担う


 医療法人社団翠会(理事長:齋藤雅氏)と社会福祉法人翠生会で構成する翠会ヘルスケアグループは、関東地区と九州地区に拠点を置き、精神科医療や高齢者医療、介護事業を中心に事業を展開している。「『尊厳』、『安心』、『信頼』を基礎に、たゆむことなく技術と感性を磨き、『こころ』と『からだ』のサポートを行います」という基本理念のもと、病院や診療所、介護老人保健施設、グループホーム、居宅介護支援事業所、看護学校、保育所などを運営し、地域に根ざした医療・介護・福祉サービスを提供している。
 福岡県北九州市にある八幡厚生病院は、昭和39年に63床の精神科病院として開設。同市における精神科医療の中核病院としての役割を担ってきた。
 現在の病床数は全315床で、その内訳は精神科救急病棟96床(2病棟)、依存症・摂食・ストレスケア病棟50床、精神科回復期病棟57床、認知症治療病棟112床(2病棟)となっている。入院医療では、幅広い精神疾患の急性期治療を中心に、認知症治療、依存症治療など、専門性の高い治療プログラムを実践している。
 関連施設としては、デイケアや介護老人保健施設、訪問看護ステーション、通所リハビリセンター、地域生活支援センターなどを運営し、退院後の在宅療養を支える体制を整備している。
 同院がこれまで地域で担ってきた役割や地域特性について、前院長の吉住昭氏は次のように説明する。
 「当院は、北九州市で最初に精神科救急病棟を開設し、福岡県における精神科救急システムの中核的な役割を担い、地域医療に貢献してきました。地域特性としては、北九州市は政令指定都市のなかで高齢化率が最も高く、人口減少が進んでいることがあげられます。それに伴い、認知症治療をはじめ、摂食障害やアルコール・ギャンブルなどの依存症治療のニーズが高く、主な柱となっています。また、平成16年から電子カルテを導入し、精神科病院としては早期に運用を開始しており、患者へのケアの充実やスタッフの連携による医療の効率化を図っていることも特色といえます」(以下「 」内は吉住氏の説明)。


段階的に病床を削減し、患者の地域移行を推進


 現在、国において新規入院患者の速やかな退院支援や、長期入院患者の地域生活への移行促進などの施策が進められるなか、同院はピーク時(昭和59年)に431床あった病床数を段階的に315床まで削減し、入院患者の地域移行の推進に取り組んでいる。
 病床削減の流れとしては、平成26年に建物の老朽化が進んだ本館を新築した際に、精神科救急病棟とストレスケア病棟を新設するとともに、病院全体の病床数を410床に削減。さらに、令和5年に実施した病棟再編成で精神科一般病棟と療養病棟を閉鎖し、現在の総病床数315床に削減するとともに、精神科救急の病床機能を強化している。
 また、本館の新築時には著名な建築家に依頼し、閉鎖的ではなく、まちをイメージした明るく開放的な設計とすることにより、療養環境の改善を図っている。


 ▲▼ 精神科救急病棟では、短期集中的な治療を行う手厚い人員配置によるケア体制と充実したアメニティを備える個室を設置 ▲▼ 八幡厚生病院の玄関と総合受付

24時間365日体制で救急患者を受け入れる


 実践する医療の特色としては、精神科救急病棟では24時間365日体制で患者を受け入れ、コロナ禍以前の救急患者の受け入れ数は年間600人を超えている。
 入院医療では、急性期の患者に対して、密度の高いチーム医療を実践し、短期集中的な質の高い治療を提供することにより、3カ月以内の早期退院を目指している。チーム医療の体制は、医師、看護師、精神保健福祉士、臨床心理士、作業療法士などの多職種で構成し、精神療法、薬物療法、家族支援、心理・社会的治療(リハビリテーション)を実施しており、一般的な精神科病院に比べ精神保健福祉士、臨床心理士、作業療法士などのコメディカルのスタッフが充実していることが強みとなっている。
 また、近年は精神科における薬物療法が飛躍的に進歩するなか、治療抵抗性統合失調症の患者に対して、効果が認められているクロザピンの投薬治療にも積極的に取り組んでいるという。
 依存症の専門病棟となるアディクションユニットでは、主にアルコール依存とギャンブル依存を対象にした依存症からの回復プログラムを実施している。
 依存症病棟の入院期間は基本的に2〜3カ月で、専門医の管理のもとミーティングや精神療法、個別面談、認知行動療法などを行うアディクション・リハビリテーション・プログラムを提供。退院後も併設する専門デイケアや、地域の社会資源につなぐことにより、社会復帰を支援している。さらに、依存症は家族を巻き込む疾患になるため、家族を対象としたグループ形式のミーティングを行う家族会を定期的に開催するほか、入院中から依存症に関する地域の自助グループにつなぐことに取り組んでいるという。


最新の専門技法を取り入れた治療プログラムを実施


 うつ病・不安障害などのストレス性疾患や摂食障害の患者を対象にしたストレスケアユニットでは、落ち着いた療養環境で休養してもらいながら、回復にあわせて多職種チームにより専門的な治療プログラムを提供している。
 「現在、ストレスケアユニットは摂食障害の患者が中心となっており、低い自己評価に基づく、心の苦痛を軽減し、健康的な自己評価を回復していくために、弁償法的行動療法(DBT)、マインドフルネス、心理教育のSST(ソーシャルスキルトレーニング)など、最新の専門技法を取り入れていることが特色となっています。摂食障害に対応できる医療機関は少なく、患者は広範囲にわたることから、オンラインで家族会を開催することにも取り組んでいます」。
 精神科回復期病棟では、比較的症状が落ち着いているものの、日常生活を送るうえで何らかの困りごとがある患者に対し、課題に応じた生活訓練や活動、作業などを実施し、自宅や施設などへの退院を目標にサポートを行っている。認知症治療病棟においては、認知症の進行を抑えたり、症状を軽減するために、主に薬物療法とリハビリテーションを組みあわせた治療を行っている。
 これらの取り組みにより、同院の平均在院日数は平成22年度の208.2日から令和4年度は132.9日に短縮し、全国の精神科病院(全国平均276.7日)と比べても大幅に短く、新入院患者1年残留率も約4.9%と低い水準となっている。


 ▲ 多くの窓を用いることにより、施設全体に明るい自然光が差し込む ▲ 病棟の各フロアには中庭を設置
 ▲ ストレスケア病棟のデイルームと病室(2人室)。ストレス性疾患を抱える患者に落ち着いた療養環境を提供

退院後の在宅療養をサポート


 退院後のサポート体制では、デイケアをはじめ、精神科訪問看護ステーション、通所リハビリセンター、地域生活支援センターを運営し、患者の在宅療養を支える体制を整備している。
 定員70人のデイケアは、精神科デイケア、依存症デイケア、復職支援デイケア、ナイトケアのほか、重度認知症デイケア(定員25人)があり、疾病別のプログラムを行っている。
 うつ病などのストレス疾患で休職している人の復職支援を行う「リワーク」は、ニーズが高く、30〜40歳代の働き盛りを中心に、他院から紹介を受けて利用する人も多くなっている。
 「リワーク」では、認知行動療法や心理教育、個人・グループワーク、再発防止ワークなどのプログラムを行い、対人関係やストレスへの対処法などを身につけることにより、半年以内の復職率は85%と高い水準となっている。復職後も定期受診やリワーク交流会などを通じてアフターフォローを継続しているという。
 さらに、平成22年に地域生活支援センターを開設し、地域資源と連携を図りながら退院後のサポートを強化している。
 「地域生活支援センターは、生活や就労などに関する相談支援を行っていますが、相談員は地域のグループホームや就労支援事業所などを訪問し、コミュニケーションを図りながら情報交換を行うことで、利用者一人ひとりに最適と思われる地域資源につなぐことに取り組んでいます」。


 ▲ 見晴らしのよい空中庭園や屋上テラスを設け、入院患者の憩いの場として利用されている

看護師やコメディカルは充足


 医療従事者の確保は全国的な課題となっているなか、同院では看護師やコメディカルの専門職については安定して確保することができているという。
 「その要因として、病床を削減したこともありますが、先進的な治療の実践や精神科の症例数が豊富な当院で学ぶことを希望する人が多くなっています。とくに若い人は精神科救急に携わりたいという人が多く、新卒の看護師を採用することができ、他の精神科病院から入職するケースも少なくありません」。
 また、病床数をピーク時から116床削減したことによる経営面への影響としては、看護師を段階的に減らしているものの、令和5年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大と重なり、病院全体の病床稼働率が約7割に低下したことにより、厳しい状況があったという。現在は、入院患者が以前の水準に戻りつつあり、今年度以降は病床の適正化により経営が安定する見込みだとしている。
 「一方、課題としては、質の高い治療を行い、入院患者の退院を促進することにより、病床稼働率が維持できず、収益が下がるという実態があります。そのあたりは当院に限らず、入院患者の地域移行をさらに促進していくことの障壁になっていると感じています」。
 地域のニーズにあわせた専門性の高い治療プログラムを提供するとともに、患者の地域移行を推進する同院の今後の取り組みが注目される。  


訪問診療で在宅療養を支える
医療法人社団翠会 八幡厚生病院
前院長 吉住 昭氏

 今後の展望としては、精神科医療と高齢者医療の質をさらに高めていくためにも、専門性を担保できる人材を確保していく必要があります。さらに、専門性というところでいえば、診療体制の整備に高いハードルがあるものの、児童・思春期外来の開設についても考えていく必要があると思っています。
 また、精神科に限らず、「入院から外来」、「外来から在宅」という流れがさらに加速していくなか、地域の在宅療養を支えるためにも、訪問診療に取り組んでいかなくてはならないと考えています。



<< 施設概要 >>
理事長 齊藤 雅 病院開設 昭和39年6月
院長 三浦 智史
病床数 315床(精神科救急病棟96床、依存症・摂食・ストレスケア病棟50床、精神科回復期病棟57床、認知症治療病棟112床)
診療科 精神科、心療内科
関連施設 八幡厚生病院デイケア(精神科デイケア、依存症専門デイケア、復職支援デイケア、重度認知症デイケア)/介護老人保健施設ナーシングセンター八幡/サポートやはた(訪問看護ステーション、相談支援センター)
住所 〒807-0846福岡県北九州市八幡西区里中3−12−12
TEL 093−691−3344 FAX 093−603 −7213
URL https://www.yahata-hp.com


■ この記事は月刊誌「WAM」2024年5月号に掲載されたものを一部変更して掲載しています。
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