サービス取組み事例紹介
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▲ 適切な支援につなげるため、法的支援と生活支援のケースカンファレンスを定期的に開催している |
住居支援では、公的支援につながるまでの間に所持金が尽き、頼れる先がなくホームレス状態に陥った難民に対して、一時的に滞在できるシェルターを設置した。首都圏内(神奈川、千葉、埼玉)に生活に必要な寝具、電化製品などを備えた8室を確保したほか、首都圏外の相談に対応するため、難民支援を行う他団体と連携し、大阪府に3室を確保した。
「住居支援のニーズは高く、のべ43人にシェルターを提供しましたが、公的支援につながるまでは通常2〜3カ月を要するため、常に満室で多くの待機者がいました。路上生活者は東京都でも冬場は凍死する恐れがありますので、難民のセーフティネットとして身の安全を確保する住居支援は欠かすことはできないと考えています」。
また、長期にわたり経済的に困窮した生活を送る難民申請者は、路上生活で体調を崩したり、医療機関の受診が必要になることがある。日本語がわからない難民も多く、日常会話ができる人でも症状をうまく伝えたり、質問をすべて理解するのは難しいことも多く、医師にとっても正確な診断が難しいといった問題があるという。そのため、医療機関の受診に同行し、双方の言葉を適切に伝える通訳者の養成研修を実施した。
養成研修では、医療通訳者の養成・派遣を行うNPO法人から講師を招き、医療機関に同行する職員やボランティアに対して、治療に影響する誤訳とならない適正な通訳方法や、患者を不安にさせないコミュニケーションスキルの習得を図った。また、研修内容をもとに「難民支援のための医療通訳ハンドブック」を作成し、他団体を含めた支援者に配布することで、医療同行通訳者の資質向上につなげている。
そのほかにも、東京都社会福祉協議会等と連携し、医療受診を必要とする難民に対して、無料低額診療事業を実施している医療機関との調整を行い、のべ216件の医療同行を実施した。
難民の医療アクセスの向上と、医療現場の難民をはじめとする在日外国人を受け入れる力の向上への取り組みでは、難民が多く住んでいる地域にある病院と協働し、ワークショップを開催するとともに、コミュニケーションツール「ゆびさしメディカルカード」を開発・作成した。
「病院でのコミュニケーションは、医療側と難民側の双方から対応に困っているという声が寄せられていました。難民と医療関係者とが協働して開発した『ゆびさしメディカルカード』は、病院で必要なコミュニケーションをゆびさしで伝えることができます。例えば、『今日はどうしましたか』など受付や検査でよくある会話や、痛みの大きさを数字やイラストで示すことで、理解しやすい内容になっています」。
ニーズが高い5言語(英語、フランス語、ビルマ語、トルコ語、ネパール語)を各100部作成し、難民や医療機関に配布している。難民からは「自力で病院に行けるようになった」という声があり、病院からも「コミュニケーションがとりやすくなって助かる」と好評だという。
受診のほかにも、難民のメンタルサポートを目的としたグループワークを開催。日本で暮らす難民の多くは、知り合いがいないことや、文化になじめないなど地域社会のなかで孤立しやすい状況にあるため、同じ境遇の難民同士が自由に語り合える場を提供している。グループワークでは、ただ話し合いの場にするのではなく、ソーシャルワーカーを配置し、日本で生活していくうえでの情報や知識を伝えるとともに、日本の文化に触れる機会をつくることで、地域社会での暮らしに適応できるようになることも目指している。
▲ 助成事業で開発・作成したコミュニケーションツール「ゆびさしメディカルカード」。難民、医療従事者の双方にとって受診、診察がしやすくなった | ▲ グループワークでは居場所づくりとともに、日本で生活していくうえでの情報提供を行っている |
難民が経済的に自立するための就労支援の取り組みでは、就労資格をもつ難民を対象に就労準備プログラムを実施した。プログラムは就労のための日本語教育をはじめ、日本で就労していくうえで必要となる企業文化の理解を深めるとともに、コミュニケーション力やマナー教育の講座を開催している。
その後、当協会が開拓した企業と難民のニーズをマッチングし、職場見学やOJTの体験を経て、就労するかたちとなる。平成26年度はプログラム参加者のうち、5人が採用につながったが、採用後も悩みの相談や日本語教育などのフォローを継続するなど、包括的な就労支援を行っている。
さらに同協会では、難民と企業のマッチングを目的とした合同説明会を2回開催した。難民は就労準備プログラムの参加者を含めた47人、企業は全国から多様な業種19社が参加し、3人が就職を実現した。
「現在、国内市場が縮小して進んだ技術や商品をもった中小企業経営者の多くは生き残りをかけて海外展開を視野にいれていますが、社員の外国人に対する言葉と心の壁が高く、社内の国際化が大きな課題です。合同説明会では、多様な経験や能力を持つ難民の採用を通じて社内の国際化や活性化を期待する企業が多く参加し、社会貢献的な意味合いではなく、企業が戦略的に難民の雇用を考えていることは大きな意味があると感じています」。
▲ 就労支援で実施した日本語教育の様子。採用後も職場に講師を派遣し、継続的に支援している | ▲ 難民と企業のマッチングを目的とした合同説明会には、難民の雇用に積極的な多くの企業が参加した |
そのほか助成事業では、他団体との連携により、首都圏外で暮らす難民への適切な支援につなげるために、支援ネットワークの拡充を図っている。新規ネットワークの開拓として、長野県松本市、静岡県浜松市、福岡市、長崎市、山口市で難民や困窮者支援を行う団体を訪問し、各地域の難民や外国人の受け入れ、支援状況などの情報交換をするとともに、今後の協力を呼びかけている。
すでに連携体制のある愛知県と大阪府の難民支援団体に対しては、支援の広がりを確認するとともに、これまで同協会が培ってきた支援ノウハウを伝えることで首都圏と同じ受け入れ体制ができつつある。
助成事業の成果について、石川代表理事は「決して十分ではありませんが、助成事業により生活に困窮する難民に対する最低限のセーフティネットが確保できたのではないかと考えています。また、支援ネットワークの拡充では、連携団体の活動の質や量があがるとともに、これまで支援体制がなかった地域で新たに支援を始めようとする動きが出てきました。日本社会で難民を支援する体制や関わる人たちが増えてきていることを実感しています」。
難民一人ひとりに寄り添い、包括的に支える取り組みがネットワークの拡大とともに全国に広がることが期待される。
法人名 | 認定特定非営利活動法人 難民支援協会 | ||
住所 | 〒160-0004 東京都新宿区四谷1-7-10 第三鹿倉ビル6階 |
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電話番号 | 03-5379-6001 | FAX | 03-5379-6002 |
代表理事 | 石川 えり | 法人設立 | 平成11年7月 |
URL | https://www.refugee.or.jp/ | ||
助成実績 | 平成26年度 「在日難民の脱貧困ネットワーク確立事業」(助成額:2,841 万円) |
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事業概要: 日本に滞在する難民申請者は、公的支援が限られているため、その多くの人たちが生活に困窮し、地域社会で孤立している。このような現状に対して、難民を包括的に支援するシステムを確立し、経済的な自立を促すとともに、首都圏内外の支援団体と連携し、ネットワークの拡充を図る事業 |