近年、複合的なニーズを抱える高齢者が増加し、ケアマネジャーの職務が重要視されるなか、従事者の数は横ばいもしくは減少傾向にあり、なり手の確保が喫緊の課題となっている。このような状況下、ケアマネジャーが幅広い専門性を発揮し、質の高いケアマネジメントを実現するためにはどのような取組みが必要か。厚生労働省は昨年(2024年)12月12日「ケアマネジメントに係る諸課題に関する中間整理」を行い公開した。報告書は昨年4月から6回にわたり開催された「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」(座長=田中滋・埼玉県立大学理事長)に基づく。
従事者数は減少傾向、業務負担減と「なり手」の確保策が急務に
高齢者介護の現場では、独居、認知症、複数の医療ニーズをあわせもつ高齢者が増えたため、ケアマネジャーは世帯内で解決しがたい複合的課題に対し、法定業務以外の業務を含めた対応を余儀なくされている。さらにケアマネジャーの従事者数は減少傾向にあり、現時点での年齢構成を前提とすれば、10年以内に急激な減少が始まる公算が高い。そこで、業務負担を軽減しつつ、なり手を確保するための有効な対策を講じることが急務となり、本検討会が設置された。
中間整理に先立ち開かれた第6回検討会(12月2日)では、次のような意見が交わされた。
〇 シャドウワークと呼ばれる法定業務以外の負担軽減(独居・認知症・複数の医療ニーズ等を併せもつ高齢者や複雑化・複合化する世帯の課題への地域のインフォーマルサービスを含めた社会資源創出。これらを市町村主導で行うべき)
〇 主任ケアマネジャーの役割の明確化・位置付けの再確認(特に居宅介護支援事業所と地域包括支援センターのケアマネ兼務は未だ再検討の余地あり)
〇 居宅介護支援事業所における処遇改善の実施(施設系サービスではすでに行われているが、居宅介護支援事業所では未だ実現されておらず、迅速な対応が求められる)
〇 人材確保(10年以内にケアマネジャーの担い手が急激に減少していくことを鑑み、最優先の重要課題とすべき)
〇 ケアマネジャーの受験要件(合格者数増加への方策の一環として、相談援助技術が重要要素を占める新たな資格を中心に追加を行う)
これらを踏まえ取りまとめられた同報告をもとに、今後、社会保障審議会介護保険部会等で論議を深め、次期介護保険制度改正や報酬改定に向け審議が進められる。骨子は以下の通り。
<中間整理骨子>
1.ケアマネジャーの業務の在り方
・専門性を生かし、利用者へのケアマネジメント業務に注力するための環境整備
・主任ケアマネジャーの制度的位置付けの明確化や役割に応じた評価・柔軟な配置の再検討
2.人材確保・定着に向けた方策
・他産業・同業他職種に見劣りしない処遇の確保
・ケアマネジャーの受験要件の緩和(新たな資格の追加・実務経験年数の見直し)
・潜在ケアマネジャーの復職支援
3.法定研修の在り方
・経済的・時間的負担を可能な限り軽減
4.ケアマネジメントの質の向上に向けた取組の促進