厚生労働省の「新たな地域医療構想等に関する検討会」(座長:遠藤久夫・学習院大学長)は2024年12月10日に最終会合を終え、18日付で「医師偏在対策」と「新たな地域医療構想」に関する報告書をとりまとめ、公表した。いずれも、社会保障審議会医療部会等で了承を得ており、これらを反映させた医療法等改正案が1月下旬から始まる通常国会に提出される予定となっている。
経済的インセンティブと“負の動機づけ”
医師偏在対策では、地域間・診療科目間で医師の過剰と不足が両極化して医療機能の持続可能な提供が危機に瀕する“医師偏在問題”について、経済的インセンティブ、地域の医療機関の支え合いの仕組みなど、いま打つことのできる対策を示した。
医師不足の地域については、医師確保を優先的かつ重点的に進める必要のある地域=「重点医師偏在対策支援区域」として指定し、派遣医師・従事医師への手当増額や勤務・生活環境改善などの対策を講じられるよう経済的インセンティブを新設。「医師への手当増額」への支援については、財源として医療保険者からの負担を求めることとした。
外来医師数が集中している地域については、新規開業に歯止めがかかるように、既存の仕組みをベースに“負の動機づけ”を強化する。具体的には、都道府県はすでに、外来医師多数区域(全国に330ある二次医療圏のうち上位33.3%に当たる圏域)で新規開業を希望する医師に対し、「夜間・休日初期救急など地域で不足している医療機能への参加」や「医師不足地域への応援」を要請する権限を有しているが、これに上乗せして、外来医師が際立って多い地域については、当該要請を受けた新規開業の保険医療機関の指定期間を短縮し(6年→3年)、要請に応じない場合には指定期間のさらなる短縮を可能とする――などの対策を講じる。要請の事実は公表の対象とし、診療報酬上の対応、補助金の不交付等とも紐づけする。これらの対策は、施行後5年を目途に効果を検証して見直しを図ることとしている。
2040年以降の医療ニーズに照準、
新たな地域医療構想の策定へ
新たな地域医療構想に関しては、「病床の機能分化・連携」を促す中長期計画として2025年度を照準に策定された現行の地域医療構想(2015年度〜2025年度)を「2040年以降の医療ニーズ」に対応できる内容へと刷新するよう求めるものとなっている。
新構想では、入院医療のみならず、外来医療・在宅医療から介護との連携に至るまで網羅することとし、これまで対象外だった精神医療も含めた「医療提供体制全体の将来ビジョン」として位置づけ直す。そのうえで、構想内容を実現するための施策として、従来の病床機能報告制度に加えて、各医療機関が外来や在宅医療も含めた自院の地域内における機能・役割を、「高齢者救急・地域急性期機能」「在宅医療等連携機能」「急性期拠点機能」「専門等機能」の中から選んで報告する「医療機関機能報告制度」を導入する。また、必要病床数の推計及び病床機能報告における病床の機能区分について、現行の@高度急性期、A急性期、B回復期、C慢性期の4区分のうち、Bを「包括期機」という名称に置き換える。あわせて、必要病床数の推計、地域における関係者の協議、取組を推進するための支援等についても見直す。
検討会では、「ベッドはあるが、人がいない」ということのないように、各地域で必要病床数に見合う医療従事者の確保のための対応を求める意見や、病床機能や医療機関機能について「国民への丁寧な周知が必要」とする意見が、とりまとめ段階で出された。