こども家庭庁の「こども誰でも通園制度の制度化、本格実施に向けた検討会」(座長:秋田喜代美・学習院大学文学部教授)は2024年12月26日、2025年4月から法制化される「こども誰でも通園制度」について、利用対象・利用時間・対象施設・人員配置・設備・実施の運用方法など制度の骨格を検討会として了承し、報告書をとりまとめた。また、同制度の実施主体である市町村や、受託する保育事業者にとっての業務マニュアルとなる「手引き」の素案が事務局から示され、これをもとに議論が交わされた。
対象年齢は0歳6か月〜満3歳未満、月10時間まで
こども誰でも通園制度は、3歳未満で保育所等に就園していない乳幼児について、保護者の働き方等にかかわらず時間単位での通園を受け入れて、同年代の子どもと触れ合う機会や「遊び」の時間を提供し、かつ、保護者の不安感・孤立感が軽減するよう必要に応じて助言・相談対応を行う制度である。検討会内では、短縮して“誰通”などと呼称されている。
「こども未来戦略(2023年12月22日閣議決定)」に基づいて事業化され、2024年度から一部市町村で試行的事業を開始。同年6月に成立した子ども・子育て支援法等改正によって、2025年4月から法律に根拠を置く事業となる(児童福祉法上の「乳児等通園支援事業」)。さらに2026年度からは子ども・子育て支援法上の給付制度に格上げされ(乳児等のための支援給付)、公定価格を設定のうえ全国共通のサービスとして本格実施される流れとなっている。
検討会が取りまとめた報告書で示された「令和7(2025)年度の制度の在り方」の主な内容は、以下の通り。
・利用対象:保育所等に通っていない0歳6か月〜満3歳未満
・利用可能時間:月10時間(国による補助基準上の上限)
・人員配置:一時預かり事業と同様の人員配置基準※
(※乳幼児の年齢及び人数に応じた保育従事者を配置。うち1/2は保育士であること)
・設備:一時預かり事業と同様の設備基準
・補助単価:年齢に応じて単価設定+障害児・医療的ケア児・要支援児童に係る加算
この日の議論では、「全てが保育士でなくてもいいということだが、専門性を持った人材の確保をぜひ進めてほしい」「本制度を根付かせるには、前提として保育者の処遇改善が不可欠」「3歳未満のこどもの育ち・学びにとってどのくらいの時間が「適切な時間」といえるのか、今後議論していただきたい」などの意見が出された。
年度内の「手引き」とりまとめに向け議論、「困りごと事例集」のアイディアも
検討会には、“誰通”実施にあたっての「手引き」の素案や、児童福祉法上の設備運営基準(案)や、誰通を含む支援施策の全体像を整理した資料(下図)も示された。
「手引き」は、市町村担当者、保育事業者、保育従事者が誰通を適切・円滑に実施できるように解説した業務マニュアルで、現場向けには「安全確保」「通園初期の対応」「年齢ごとのかかわり方」「計画と記録」「保護者への対応」「要支援家庭への対応」などを詳記した内容となっている。
この日の議論では、「安全確保の内容はもっと強調したほうがよい」「事業者同士の連携を促す『連絡会設置』を盛り込めないか」「計画や記録が現場の負担にならないよう工夫してほしい」「好事例集のみならず、困りごと事例集やヒヤリハット事例集をつくって、検討会などの場で解決策を考えていく仕組みを設けてはどうか」といった意見が出された。今後さらに検討を重ね、年度末までに正式にとりまとめて公表する予定。
参考資料6:妊娠期から2歳児までの子ども・子育て支援の全体像