厚生労働省の「地域共生社会の在り方検討会議」(座長:宮本太郎・中央大教授)は、1月31日に第8回会合を開き、「1.若者支援の取組」、「2.地域包括ケアにおける地域づくりの取組、住民主体の興味関心から始まる地域づくりの取組」について、議論を交わした。
制度・分野の枠や「支える側と支えられる側」の関係を超えて困り事を解決できる“地域共生社会づくり”の取組の本格的な全国展開に向けて、現状と課題および必要な施策について令和6年6月から検討を重ねてきた同検討会議は、この日で論点を一巡。いよいよ3月末を目途とした中間とりまとめの局面に入った。
若者支援:従来の「支援」というスタイルは、若者には受け入れがたい
この日は、議題1の「若者支援の取組」に関しては、
・支援の現状を踏まえた今後の取組の方向性
・困難を抱えている若者の早期把握・支援の在り方
・子ども期から支援が途切れないようにするための取組の在り方
の3点が論点に据えられた。
構成員からは、困難を抱える若者と接点をつくるうえでの課題として、「若者が相談窓口に来ないのは、業界的には周知の事実。対策として、SNSで相談ができるようにする、一度支援機関に繋がったら自治体を越えて継続的に支える仕組みにするなど、工夫の余地がある」という意見や、「若者たちの世界観を理解しなければ、支援は空回りする。既存の制度のフォーマットが若年層を意識したものになっているかを検証する必要がある」といった意見が出された。
また、支援者の関わり方について、「支援者の家族観やジェンダーのバイアスが、相談窓口から若者たちを遠ざけている。大人として、支援者として、自分が持っている偏見や力についてどれだけ自覚的であるかが問われている」という意見や、「従来の『支援』というスタイルが、若者や子どもには受け入れがたいのかもしれない。繋がることを目的としたアプローチは、支援というよりも“付き合い”、相談というよりも“対話/会話”といった関わり方を徹底する必要があるのではないか」といった意見が出された。
さらに、法制度上の縦割りに関して、「令和6年 児童福祉法改正で、社会的養護のアフターケアの年齢制限が撤廃されたが、それにとどまらず、生活困窮者自立支援制度をはじめとした大人向け施策が10代後半の年代まで射程に入れて、相互に重なり合う必要があるのではないか」という意見が出された。
地域づくり:制度上の制約や評価の見方が、住民のやる気を削いでいる
議題2の「地域包括ケアにおける地域づくりの取組、住民主体の興味関心から始まる地域づくりの取組」に関しては、介護保険制度の地域支援事業として取り組まれている「住民主体のサービス・活動」や「生活支援コーディネーター」を、いかに地域共生社会の推進へとつなげていくかなどが論点とされた。
構成員からは、「住民主体のサービス・活動」について、「例えば、軽度認知症の人が集まるようなデイサービスで、そこへひきこもりの方たちがお手伝いに来る、あるいは精神障害の方が担い手になって短時間就労することも可能。ぜひ連携しながら地域づくりを進めていけたらいい」と、今後の可能性に期待する意見が出された。一方、生活支援コーディネーターによる地域づくりに関して、「地域づくりは住民の創意工夫により想定外に盛り上がって生まれていくところに醍醐味がある。なのに、何回以上実施するように、何人以上の人を入れるように、といった制度上の制約や評価の見方がやる気を削いでいる面がある」と運用の見直しに関する意見も出された。