厚生労働省の「医療介護総合確保促進会議」(座長:田中滋・埼玉県立大学理事長)が3月3日に開催され、地域医療介護総合確保基金の執行状況、令和5年度交付状況等及び令和6年度内示状況などについて事務局から報告を受け、議論を交わした。
事務局によれば、医療分野では過去9年間で7,739億円が交付され、うち5,909億円が執行済み(執行率76.4%)。介護分野では過去8年間で7,552億円が交付され、うち5,838億円が執行済み(同77.3%)とのこと。執行率を都道府県別にみると、医療分も介護分も50%台から90%台まで、バラツキがみられた。構成員からは、都道府県間で執行額や執行率の格差が生じていることへの懸念が表明されたほか、「人材確保・養成」や「介護ロボット・ICTの導入」に優先して活用されるよう注文が相次いだ。
超高齢化に対応した医療介護の提供体制整備を進める財政支援
「地域医療介護総合確保基金」は、超高齢化にともなう地域の医療ニーズの変容や介護需要の増加に対応した医療介護の提供体制を整えるため、@病床の機能分化・連携、A在宅医療・介護の推進、B医療・介護従事者の確保・勤務環境の改善、などに取り組む医療機関や介護サービス事業所に対し、各都道府県が計画的に財政支援を行う制度のこと。平成26年の消費税引き上げ(社会保障と税の一体改革)の際に、増収分を活用して実施することとされ、医療介護総合確保推進法(地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律)によって法定化。国が3分の2、都道府県が3分の1を拠出して基金を設置し、毎年度、地域の実情に応じた体制整備に助成を行っている。
「医療介護総合確保促進会議」は、患者・利用者等、地方自治体、医療保険者、医療機関、介護サービス事業者、関係団体、学識経験者などで構成され、同法に基づく「総合確保方針」(地域における医療及び介護を総合的に確保するための基本的な方針)の作成・変更や、基金の使途及び配分等について、検討を行うものとされている。
基金による取組み例:
病床機能転換/元気高齢者の介護助手活用/介護ロボット・ICTの普及促進
3月3日に開催された第21回会合では、年度ごとの基金の規模や執行状況のほか、主な取り組み事例として、次のような例が紹介された。
・過剰と見込まれる病床から不足とされる病床への機能転換にかかる必要な施設整備費・設備整備費の支援(医療分)
・病床機能再編の実施に伴って減少する病床数に応じた給付金の支給(医療分)
・在宅療養を支える多職種を対象とした歯科支援の普及啓発にかかる研修の実施(医療分)
・病院薬剤師の復職プログラムの作成や復職のマッチング支援(医療分)
・医師の労働時間短縮に向けた取り組みへの支援(医療分)
・地域密着型サービス施設等の整備の支援(介護分)
・小中校生、主婦層、離職者、高年齢者ごとの介護仕事体験会の実施(介護分)
・地域の元気高齢者の「介護助手」としての育成の支援(介護分)
・介護ロボット・ICTの普及促進に関する研修の実施(介護分)
・介護事業所等による外国人留学生向けの奨学金の貸与・給付(介護分)
「制度が知られていない」「財政力が乏しい県はやりたいことをやれない」
「ハコもの整備より従事者確保に活用を」
構成員からは、制度の改善点について意見が出された。
都道府県ごとの執行率の差異に関しては、「都道府県によって、基金が使えたり使えなかったりという差があると聞くが、ローカルルールがあるなら是正が必要ではないか」という意見や、「事業者に制度が知られていないのではないか。基金を活用した事業の拡充について周知を図る必要があるのでは」といった意見が出された。
また、介護従事者の確保に関する事業で、令和5年度交付分の東京都の基金規模が突出していることに言及して、「財源の3分の1が都道府県負担となっていることで、財政力の乏しい県ではやりたいことがやれない状況が起きている。都市部への人材流出が懸念される。都道府県の財政力にかかわらず、人材確保のための取り組みを行えるようにしてほしい」と改善を求める意見も出された。
今後の基金の活用のあり方に関しては、「介護現場では極端な人員不足に陥っている。施設整備に財源をつけて新たな施設をつくるより、従事者の確保に使いきってほしい」「介護ロボットやICT導入支援等に資金が行き届くように、都道府県任せではなく国一括で補助を実施したり、現場の事業者の負担が極力少なくなるような要件緩和をお願いしたい」といった意見が出された。