第4回「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会(座長代理:松原由美・早稲田大学人間科学学術院教授)が3月3日に開催された。第2回・第3回で、地域における先進的な取り組みを行う自治体や事業者に行ったヒアリング結果をもとに、「議題と論点に対する構成員の意見・ヒアリング内容を踏まえた検討の方向性等(案)」が示され、中間とりまとめに向けた論点整理と対策の方向性(以下4項目)について、踏み込んだ議論が交わされた。
1.人口減少・サービス需要の変化に応じたサービスモデルの構築や支援体制
地域における人口減少・サービス需要の変化に応じて、「中山間・人口減少地域(→サービスの需要減少に応じて、既存の補助や報酬体系で対応可能か検討が必要)」「大都市部(→サービス需要の急増に応じたサービス基盤と住まいの確保が課題)」「一般市等(→サービスを過不足なく確保するための対応が必要)」3つに分類。その地域の状況に応じたサービス提供体制や支援体制構築についてさらなる意見を求めた。
各委員から最も活発な意見が出されたのは、「中山間・人口減少地域」におけるサービスモデルのあり方についてだった(以下参照)。
〇 人手不足の状況下で人員配置など一定の要件緩和が必要だが、それにあたりサービスの質をどう担保するか、「見える化」することが重要
〇 介護・医療だけでなく他領域との連携も進め、トータルパッケージで考えていく必要性がある
〇 サービス提供を維持していくために、事業者が直面する困難を軽減するような施設基準や報酬体系のあり方を検討すべき
〇 特養からみなしの訪問介護、老健からみなしの訪問看護を特例的に認める等、不足しているサービスの代替を考慮するのも一つの手段となる
〇 高齢者に限らず分野横断的な拠点づくりを、地域特性・事業所特性を踏まえ進めることが求められる
2.介護人材確保・定着、テクノロジー活用等による生産性向上
人材確保については、近年の物価高や賃上げに対応し、全産業平均の動向も注視したうえで、賃上げ・処遇改善等を継続的に推し進めることが必須となる。人材定着においては、事業者の適切な雇用管理が重要となり、ハラスメント対策や働きやすい職場環境づくりに取り組む姿勢が問われるとした。
さらに、介護現場における職場環境改善・生産性向上によって生み出された時間を、本来の直接的なケアの業務に充てて質の確保に努め、残業の削減や休暇取得等にも結びつけるとしている。これらに対しても多数の意見が挙がった。
〇 人材確保は喫緊の課題。3年に1度の報酬改定時だけの処遇改善では追いつかない。年次ごとの対応が必要
〇 処遇改善は、ケアマネジャーなど介護職員以外の他の職種にも適応していくべき。現状他職種については、法人内で利益を取り崩して処遇改善に対応しているところも多い
〇 ハローワークや福祉人材センターが十分に活用されていない現状をまずは改善すべき
〇 複数の事業者が1人の人材をシェアするという考え方も必要
〇 介護業務のタスクシフトを行うべき。介護助手の活用を促進し、介護福祉士など中核的介護人材の位置付けと対応について再考すべき
〇 介護DX推進のために、思い切って補助金を10分の10にしてはどうか
3.雇用管理・職場環境改善など経営の支援
介護事業者が抱える人材不足、経営効率化、DX化などの課題は、そのまま日本の中小企業が抱える課題でもある。自治体や公的機関が経営支援に注力すること、また、中小零細である介護事業所がM&A等のみに頼るのではなく、大企業と同様のメリットを享受できるような協働化、事業者間連携に最優先で取り組むことも重要であると示され、特に大規模化・協働化に対しては次のような意見が出た。
〇 大規模化を推奨することだけを良しとしない。むしろ協働化(社会福祉連携推進法人等)を模索し、これによるスケールメリットを活かして、いかに効率的な経営ができるかを考えることも必要
4.地域包括ケアと医療介護連携、介護予防・健康づくり、認知症ケア
地域包括ケアシステムを深化させるため、今後増加するであろう医療と介護の複合ニーズを抱えた85歳以上の要介護者の受け皿をどうするか。また、介護予防の健康づくりに関する効果検証を行うとともに、専門職と連携して通いの場などを支え、地域共生社会の実現を目指す。さらに、独居の認知症高齢者への対応については、生活支援や権利擁護、意思決定支援に加え、地域のインフォーマスサービスの果たす役割にも着目し、認知症ケアパスの再構築にも言及した。このテーマに関する意見は以下の通りである。
〇 地域における介護予防支援のため、フレイルの疑いのある人をどう地域資源につなげるかが課題
〇 閉じこもりがちな人に対するアウトリーチをどう行うかも重要である
以上を踏まえ、次回(第5回)検討会では中間取りまとめ案を提示し、報告書を作成する。第6回以降は、他の福祉サービスも含めた共通の課題について話し合い、2025年夏をめどに最終とりまとめを行う予定。