第12回: コミュニケーションレベルをもう1ランクアップさせる方法
自身のコミュニケーションの特徴に気づくことが重要
あなたは、自分のコミュニケーションに自信がありますか?また、満足していますか?そして、どんな特徴があり、それは人にどのような印象を与えているでしょうか?仕事のスキルは上司や先輩に教わりながら高めることができます。しかし、コミュニケーションはどうやって上達させたらよいのか、その術がなかなかありません。人はこのようなことについてあまり教えてくれないものです。
実は、私たちは、自分がどういう言葉を使っているか、どんな振る舞いをしているのか、自分のことは本当にわからないものです。ですので、一番よいのは「自分のことを振り返ってみる」ことなのですが、自分でおかしいと思わなければ、当然振り返ることもしないでしょう。しかも、長年培った癖というのは本当に治りません。それは、自らの特徴に気づいておらず、気づく機会もないからです。
例えば、話の途中で必ず言葉をかぶせてくる方がいます。自分は明るく話しているつもりでも、朝礼での報告のトーンがかなり低い方がいます。笑顔のつもりでも、表情の硬い人がいます。視線を合わせない人もいます。文章を書くと、必ず後ろ向きな言い回しや言葉を使う人がいます。しかし、どれも当人は全くそんなつもりはないのです。そのうえ、こういう人に限って「自分はやっているつもりですが…」、「そんなつもりではなかったのですが…」と自己正当化しがちです。しかし、客観的にはどう見てもやっているようには見えないのです。だからこそ、客観的なフィードバックが必要になってきます。
他者からのフィードバックを受けてコミュニケーションに磨きをかける
もし改善したいと思うのであれば、まず現状を明らかにしなければいけません。そのために一番よいのは、やはり他者からフィードバックをもらうことです。自分のコミュニケーションスタイルはどうか。どんな印象なのか。親しい人や信頼できる人に、ぜひ勇気を出して直接聞いてみてください。もしかすると、内容によっては納得しがたいこともあるかもしれませんし、ショックを受けるかもしれません。しかし、いったん自分自身の特徴を把握し自覚するだけで、かなり違ってきます。
また立場が変わって、例えば部下教育や面談などの場面で、こちらから相手に対してそのようにフィードバックしてあげるとよいでしょう。ここで大事なのは、単なる批判や指摘ではなく「その人がもっとよくなるように」という思いを込めることです。愛をもってフィードバックするのです。
また、“自責の視点”をもつことも大切です。例えば、相手に誤解を与えてしまった、思うように伝わらなかったといった場合、相手のせいにすることは簡単です。しかし、どうでしょう。逆に「自分の伝え方が不十分だったのではないか?」、「もっと違うタイミングで伝えたらよかったのではないか?」、「言葉の使い方やトーンは適切だっただろうか?」こう考えることで、改善や学びの機会になると思いませんか?相手にきちんと伝わっていなければ、伝えたことにはなりません。このようにして、自身のコミュニケーションにより磨きをかけていくのです。
まさに「人のふり見て我がふり直せ」。人の行動や振る舞いを見て、その人の文句や陰口をいうのではなく、自分は果たしてできているかどうか、チェックしてみてください。むしろ「そうするとこのように効果的ではないんだな」ということを知るよい教材にしてしまうのです。こういった視点が、後に大きな差となって現れるのかもしれませんね。
●「医療・福祉の現場で使える『コミュニケーション術』実践講座」 鯨岡栄一郎 2012 運動と医学の出版社
※ この記事は月刊誌「WAM」平成26年3月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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