第22回: 質問のスキルでコミュニケーションを促進する
相手の話を引き出し、答えを広げるための手法とは
あなたは初対面の人との信頼関係づくりがうまくできますか?また、目上の人と話さなければならない時、どうやって話をつなげていったらよいか困った経験はないでしょうか?このような時に使えるのが、「質問のスキル」です。
上手なコミュニケーションとは何かと考えた時、一般的には「何を話すか」というところに意識がいきがちです。しかし、実際には「どのような質問を投げかけるか」。そして「いかに相手の話を引き出すか」というのが上手なコミュニケーションなのです。
代表的な質問のスキルとしては2つあります。1つはチャンクダウンといって、相手の話を具体化させるスキルです。「それって、どういうこと?」、「具体的に言うと?」、「それ、どのぐらいやったんですか?」など、相手のあいまいな言葉をさらに深掘りしていきます。5W2Hによってオープンクエスチョン(開いた質問)をすると、答えが広がりやすくなります。
もう1つはスライドアウトといい、相手の話を横に水平展開していく質問です。「他には?」、「あとはどう?」というような質問です。人は、質問は「一問一答方式」という思い込みがあります。しかし実際には、このように聞かれると、またさらに頭を回転させ、答えを探し出すものです。これによって相手は面白いように話してくれます。答えはまだまだある、ということがわかります。
この2つのスキルさえあれば、無理に場をつなごうとして、何もこちらから目新しいトピックを見つける必要はなく、相手の話を具体化していくうちに、相手が喜ぶポイントというのがつかめるはずです。あまり意識しすぎず、純粋な興味を元に質問を展開していくとよいでしょう。
よい質問は気づきを生み、問題解決に結びついていく
この時に気をつけなくてはいけないのは、くれぐれも質問攻めにするのとは違うという点です。人は信頼関係が十分にできていないのに、矢継ぎ早に質問ばかりされるのは嫌なものです。質問はシンプルに、1回に1つだけが鉄則。また、相手が答えたことは、当然しっかり聴かなくてはいけません。相手が答えたことを取りかかりにして展開していく。そのやり取りのなかで、ところどころで褒めたりねぎらったり、自分の情報も自己開示しながら話していくと、双方向でとてもよい形の会話になっていくでしょう。
よい質問をすることで、相手の意識や感情がよい方向に変わります。しかも、それを興味津々という態度で聞けば、相手も喜んで話してくれますし、それによって自分に対する親近感、印象というのも格段によくなるでしょう。そのなかで、互いの共通点がみつかることもあります。それによって心理的な距離が近づき、親近感が湧くわけです。
また、例えば仕事上で何か指摘したい事項があった場合も、議論を戦わせるだけでなく、「これについてどのように思われますか?」、「どうだろう?」、「今どんな風に感じられます?」、「どんなもんなんでしょうね?」、「今すぐ出来ることって何でしょう?」といった質問を投げかけることがとても効果的です。それに答えるうちに相手も気づいてくれることが多いのです。人は質問があって初めて思考が生まれます。そして、よい質問は気づきを生みます。このプロセスを通じて、自分の考えが整理され、問題解決にも結びついていくのです。
ぜひ何か言わなければという前に、何か質問してみてください。これまでとは違った反応が返ってくるはずですよ。
●『コーチングのプロが使っている質問力ノート』
ルパート・イールズ=ホワイト[著] 戸田ちえ子[訳] 2004 株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン
●『 しつもん仕事術』 松田充弘 2012 日経 BP 社
※ この記事は月刊誌「WAM」平成27年1月号に掲載されたものです。
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