第13回: コミュニケーションの基礎の基礎を振り返る
主体的な姿勢がよりよい関係づくりに効果を発揮
まず質問から入ってみたいと思います。ぜひ紙に書き出すなどして答えてみてください。
「あなたにとって“よいコミュニケーション”とは何でしょうか?」ただ単に目の前の相手と話題を続かせることでしょうか?自分の身の上話ばかりをし、話題を提供することでしょうか?もしかすると、この辺について多少誤解があるかもしれません。
次に、「コミュニケーションによってどのようになったら理想でしょうか?」そして、「コミュニケーションすることで、どんな気持ちになりたいのですか?」このような形で、まず前提として自分なりの基準や定義を設けておくことが大切になります。
コミュニケーションによって信頼関係を築き、スムーズに意思疎通を行い、お互い心地よくなるために重要になってくるのは、実は“主体的な姿勢”です。多くの場合、この点が見過ごされがちになるのですが、私たちは、「あの人がこうだったから、自分はしない」、「今こういう状況だから、私はこうだ」という形で、往々にして受け身になりがちです。それによって、例えば「周りにポジティブな人がいない」、「みんな私語ばかりしている」と他責の傾向になってしまいます。いわば自分のことは棚にあげている状態です。そこで、何ごともまずは「こちらから」というスタンスが、よりよい関係づくりに効果を発揮します。相手の反応、周りの状況はとりあえず関係ありません。
気にしないようにします。相手や周りの状況はさておき、自分からはよいストロークを投げかけるのです。
大きな差がつく挨拶や声かけのコツ
そこで、今スグにできるコツを2点お伝えします。
まず1点目は挨拶です。例えば、「おはようございます」、「お疲れ様です」、「行ってらっしゃい」、「ありがとうございます」といった一言は本当に重要です。場の雰囲気と相手との関係をすぐによくします。挨拶の「挨」という漢字には「押す、心をひらく」、「拶」には「迫る、近づく」という意味があります。つまり、挨拶は自分の心を開いて相手に近づいていくことにより、相手とよりよい関係を築こうとする、非常に主体的なプロセスなのです。この際、相手より一歩先に挨拶することを心がけます。
もう1点は相手の名前を呼ぶことです。何かにつけて「○○さん、○○の件なんですが…」のように要件を切り出したり、声かけします。名前とは、その人の存在そのものです。ただ要件だけを話すのとでは、親しみが違いますし、無意識下で相手のなかに入っていく度合いが変わります。これは日常会話ではもちろんのこと、メールなどでも活用できます。
どちらもすでに自然とやっていることかもしれません。どうして今さら、というような内容です。これらはいわば、コーチングにおける『承認』のスキルであり、「相手の存在をいち早く認識し、それを伝える」というメッセージになります。主体的で、かつ相手を尊重している関わり方です。このようなことを知っている人は非常に少ないため、やったもの勝ちなわけです。
このように一歩進んだコミュニケーションによって場を作り出し、よりよい関係づくりにつなげる。周りや相手の文句を言い、外側が変わるのを待つのではなく、ご自身から選んで変えることができるのです。今回は、些細なことですが、やるとやらないでは大きな差がある一工夫をご紹介いたしました。
●「まんがと図解でわかる7つの習慣」 スティーブン・R・コヴィー監修 2011 宝島社
●「医療・福祉の現場で使える『コミュニケーション術』実践講座」 鯨岡栄一郎 2012 運動と医学の出版社
※ この記事は月刊誌「WAM」平成26年4月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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