情報を受け取る際はまず、その主旨をつかむこと
第11回において、効果的な報連相の仕方をお伝えいたしました。仮に報告や連絡をきちんとしたとしても、各種情報を相手にきちんと的確に伝えるというのは、思いのほか大変なことだと感じます。とにかく現場は日々情報の渦。申し送りをしても抜けやミスコミュニケーション(発信者と受信者の意図が違うこと)が起こることは少なくありません。
伝達以前に、自分が言ったことや言われたことを忘れてしまう、という現象もよく起こりがちです。メモをとったとしても、それ自体忘れてしまうこともよくあります。実際、現場での行き違いとは、そのような些細な要因が多いのではないでしょうか?
実は、ここに人間のコミュニケーションの特徴が隠されています。そもそも、相手の話をわかったつもりでいて、その内容をよく理解し覚えていられるわけではありません。とくに、トピックがいくつも重なり、長いセンテンスになると全部記憶するのは困難です。人は話を聞いているようで、実はあまりよく聞いていません。自分が聞きたいように相手の情報を受け取るものです。しかも、自分に都合よく情報を変えてしまう特徴があります。また、伝え方にしても完璧ではありません。言葉や情報を端折って伝えることが多々あります。そこに言葉や状況に対するお互いの認識のズレが重なると、どうしても行き違いが起こりがちになります。
そこで、情報を受け取る際には、まず「主旨は何なのか?」をつかみ取ることが重要になります。情報を木に例えると、枝葉というよりは、幹がどこなのかを瞬時につかみ取ることを重視します。話を聞く際も早合点せず、「言った言わない」の問題を防ぐためにも、何時何分にこういう電話や話をしたというメモを残しておくとよいでしょう。
双方の記憶に残りやすい伝達方法とは
伝える側になった時は、きちんと伝えるためにも、月並みではありますが、5W2H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように、どのくらい)を押さえておくと間違いありません。よく「何が言いたいのかわからない」方がいますが、要点があちこちに行き、この辺が支離滅裂になっているのです。
情報の抜けを補うために、例えば、覚えているうちにすぐ、関係者に伝達してしまうことも有用です。ときに複数の人に同時に聞いてもらうことも、記憶を補う意味と、より早く情報を広げることにつながります。
また、「以前も言ったと思いますが」といった前置きで再度伝えてみることや、相手の話のなかであいまいだったり、不明だったりした場合には、「○○ってどういうことですか?」、「と言いますと?」のような質問をしてみるとよいでしょう。
相手の言ったことの要点を、例えば「■■までに△△をまとめるということですね?」のように復唱することは、双方にとって有効です。伝える(口に出す)ということは自分の記憶にも留めやすくします。その手法もメモやメール、内線など、双方の記憶に残りやすい工夫を複合的に組み合わせて行うことが有効です。もし状況のなかで、「先方が忘れているかも?」ということを感じたら、「あの件ってどうなっています?」というかたちで、確認と思い起こしをしてあげるとさらに親切です。
そもそも、コミュニケーションというのはズレるものだ、という前提に立って、可能な限り抜けを防いでいくことが、一歩進んだ関わり方になります。当事者意識をもち、「相手にきちんと伝える」という視点と、自分も「相手の意図をきちんとくみ取る」という視点が大事なのではないでしょうか。
●WAM 2 月号 「 職場のコミュニケーション力」 鯨岡栄一郎 2014 法研
●「医療・福祉の現場で使える『コミュニケーション術』実践講座」 鯨岡栄一郎 2012 運動と医学の出版社
※ この記事は月刊誌「WAM」平成26年5月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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