これからの組織・社会で最も求められる素養
かなり以前に話題になりましたが、“EQ”という言葉をご存じでしょうか?
IQに対して「心の知能指数」の意味であり、「社会的知性」、「ライフスキル(生きていくために必要なスキル)」ともいわれます。このEQとは、いわゆる一般的なコミュニケーションのみならず、も
っと広い意味での人間関係の機微を感じ取る能力を指します。今もまさにそうですが、これからの組織に、社会に、最も求められる素養といえるでしょう。
EQが高い人というのは機転が利き、仕事もでき、周りからの評価も高いものです。一方、どこの職場にも空気の読めない人というのはいるものです。コミュニケーションに課題のある人は、EQに問題があるといわれます。したがって、単にスキルではない、元々もっているセンスのようなところも多分にあります。EQを提唱したサロベイとメイヤー両博士は、「ビジネスで成功した人は、例外なく対人関係能力に優れている」といいます。
私たちが仕事をしていくうえで、最も大きな悩みはやはり「人間関係」です。そこで、お互い気持ちよく仕事するためにも、「目配り」、「気配り」、「心配り」がとても大事な要素になるわけです。私たちは幼少期に、親からよく「相手の気持ち(立場)になって考えなさい」といわれました。しかし、これがなかなか難しいと思いませんか?年齢を重ねてくるとなおさらです。よくも悪くも“自分”が確立されてくるので、自分中心の物の見方になってしまい、しかもそれを変えることがなかなかできません。
まず相手や周囲の感情を知ろうとする意識
そこで、自身のEQ感度を高めるために、「相手に情報がどう伝わっているのか?」、「相手は
何を感じているのか?」そこに思いを馳せてみましょう。それにはまず、自分の感情はできるだけニュートラル(中立)にし、相手や周囲の感情を知ろうという意識をもちます。おそらく、これまでかなり無自覚だった部分です。その際、相手の表情や動作、言動が瞬間的にはわかりやすい情報になりますし、ついそこで判断しがちになりますが、必ずしもそれらと感情は一致していない、という点に留意しなくてはいけません。また逆に、(これが忘れがちになるのですが)あなたも周囲からそのようにみられ、判断されている、ということを念頭に置いてください。
ここで重要なことは、「自分がしてほしいことを、まず相手にしてあげる」という、人間関係の黄金律(ゴールデン・ルール)です。まず自分から与えるという視点です。例えば、笑顔であいさつしたり、明るい言葉をかけたり、ねぎらったり、といったよいストロークを投げかけることによって、まず自分の感情を前向きにすることができますし、こちらから相手の感情面へ働きかけることで、心理的先手をとれる効果もあります。ただ、自分がしてほしいことが必ずしも相手も同じとは限りません。そこで、より進化させた関わりとして、『相手がしてもらいたいことを、相手にしてあげる』という白金律(プラチナ・ルール)があるので、こちらもぜひ意識してみてください。
私たちの態度や物言いなどあらゆる言動は、その時々の自分自身の感情に大きく左右されています。ですが、普段、あらためて気持ちを感じたり、話題にすることはめったにありません。たまには「今、どんな気持ち?」とストレートに問いかけてみる。「私はこんなふうに感じてますよ」とこちらの気持ちも伝えてみる。このようなことを通じて、もっと自分の、そして相手の感情に敏感になり、上手にコントロールすることで、対人コミュニケーションはかなり変わるのではないでしょうか。
●「EQ こころの鍛え方」 高山直 2004 東洋経済新報社
●「EQ こころの距離の近づけ方」 高山直 2005 東洋経済新報社
●「EQ 相手のこころに届く言葉」 高山直 2007 日本実業出版社
※ この記事は月刊誌「WAM」平成26年7月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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