第11回: 「分けるということはわかるということ」
活用できない書類は無駄な情報
書類の整理を始めると、まず直面するのは書類の分類方法です。入手した、あるいは自分で作成した書類をどのように管理するのか?ここでいう管理とは、「必要なときにすぐに取り出せる」、「使用した後はまたすぐにしまうことができる」ということです。これを実現するためには、一定のルールや整理する方法、保管する場所や期限などの基準をつくる必要があります。そういった、いわば管理の仕組みを構築する上で一番大切なことは、「タイトル」をつけるということです。
書類のファイルやフォルダに名前をつけておけば、たとえばパソコンのマイドキュメントの中に入れても、素早く簡単に後で探し出すことができます。また、制作日や入手日の「日付」をつければ、さらに探しやすくなります。そして、「同じようなグループ」の書類はまとめてひとつのファイルに保管するような仕組みにすれば、たくさん並んだ「名前」の中からではなく「グループ名」から探せるので、「管理」はさらにしやすくなります。
しかし、こういった書類の整理の中で一番困るのが、どのタイトルのファイルにしまえばよいかわからないものがあるということです。そこで新たにファイルのタイトルを作ってしまうと、無限にファイルが増えていき、見つけ出すことが容易にできなくなります。整理とは「必要な書類がすぐに取り出せる」という状態が理想であり、使えない資料、活用できない書類は、無駄な情報ということを認識しましょう。
手にとった書類を保管すべきか処分すべきか「判断」できる。次に、その書類は何の書類でどの分類に属すか、中身が理解できて「分類」できる。これは、その書類の必要性(重要性、意味)がわかっているということです。“わかる”ということで結果、「分ける」ことができるのです。さらにそれをどこに保管、格納するかも判断できるので、「その書類を活用する仕事」を俯瞰(ふかん)できているともいえます。
これまで、書類を整理することは仕事をする上で欠かすことのできない工程の一つとお伝えしてきました。また、不要なものを捨てることも仕事の一部ともいいました。不要なものかどうか「わかる」ということが、ある意味、整理の基本でもあります。
整理のレシピ
情報の入手とその整理をわかりやすく説明するとき、私は料理に置き換えて説明をします。情報の入手とは、いわば料理をつくるための材料を用意するということです。次に整理とは、その材料を「調理するために処理や加工をして、冷蔵庫などの最適な場所に分類して収納する」と捉えてみてください。たとえば献立を考え、必要な材料をリストアップして買うように、仕事においても必要な情報はスピーディに漏れなく入手します。そして、手に入れたものは素早く“調理”(整理整頓)していきます。生鮮食料品はさっと調理して冷蔵庫にしまうように、チームのメンバーに役立つ情報は“新鮮”な素材と同様で、すぐに部内で回覧したり、掲示板に張り出すなどしましょう。
長期的に保管したり整理する情報は、これも料理の材料でたとえてみれば、缶詰や瓶詰のようにまとめて収納庫に保管するようにすればよいでしょう。食品ストッカーにタイトルをつけて分類整理しておけば、さっと取り出せるばかりでなく、在庫があるのにまた買ってきてしまうという無駄もなくなります。
また、整理のためのタイトルには「一定のルール」を決めましょう。タイトルの他に以下のような記載があれば「その書類」をどこに保管すればよいかも判断でき、またタイトルだけより確実に探し出すことができます。
● 日付
● クライアント名(あるいは大分類、中分類、小分類など)
● 年度
● 作成日
● 作成者
● 管理部門名
● 他
私は単身赴任を経験したおかげで、整理整頓ができるようになりました。健康的で清潔な生活環境を整えるには、整理の技術は必要なことです。「ゴミ屋敷」になる前に気づく必要があるのです。それと同じように、ビジネスでいえば机の上に書類がうず高く積み重なる前に、手を打ちましょう。
※ この記事は月刊誌「WAM」平成25年2月号に掲載されたものです。
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