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第3回:経営改善の優先順位は収益確保が最優先

 厚生労働省が実施している令和5年度介護事業経営実態調査(以下、「実態調査」)では、介護老人福祉施設の令和4年度決算における収支差率は、新型コロナウイルス感染症関連の補助金収入や物価高騰対策関連の補助金収入を除くとマイナス1%という結果になっています。

 具体的には、介護事業収益等は増加しているものの、介護事業費用の給与費およびその他の費用が増加したことにより収支差が赤字になっていると推察されます。

 このように、介護保険サービスであっても経営状況の分析・対策・実行・管理・改善を細かく行っていかないと赤字になる可能性が高まっています。

経営を維持・改善するための経営分析から管理

 経営状況の見直しを行う場合、法人事業の”現在地“を正確に把握することが重要です。そのためには、各種指標を活用する方法があります。例えば実態調査では、「1施設・事業所当たり収支額、収支等の科目」のみならず「地域区分別」や「定員規模別」などの指標を確認することができます。また、独立行政法人福祉医療機構が実施している経営分析参考指標やリサーチレポート(※)などでは、黒字・赤字別の経営状況が確認できます。これらの指標を活用し、法人事業の収益や費用、人員配置などの分析をすることで、経営における課題や課題になる可能性がある要因の抽出につながります。そして、抽出された課題への対策を計画的に実行・管理することが経営維持・改善につながります。

(※)…https://www.wam.go.jp/hp/keiei-report-r6/

収益確保の優先順位

 実際に経営状況の見直しを行う場合には、収支の見直しは不可欠です。一般的に経営改善を行う場合、費用割合が高い人件費の見直しを行い、同時に収益アップを目指すという手法があります。しかし、介護保険サービスの場合、そもそも労働集約型産業であり、人員配置の基準があるため極端に人員配置が多い場合以外、人員を減らすことは簡単ではありません。そのため、収益確保の可能性を最優先として検討します。

 収益確保の可能性を検討する場合に用いる指標として、「利用者1人当たり収入」があります。これは、法人事業の収入合計を延べ利用者数で割ることで算出できます。これを指標と比較した時に、指標より数値が低い場合、ベッド稼働率や加算未算定が原因としてあがる場合が多くあります。

 ベッド稼働率が低いことが理由で収益が落ち込んでいる場合は、ベッド稼働率が上がらない要因を分析し、対策する必要があります。近年の介護老人福祉施設の場合であれば95%前後のベッド稼働率がないと赤字になる傾向があります。

 ベッド稼働率が上がらない要因としては、@入院などによる空床が発生している、A待機者が不足している、B職員不足により新規受け入れができない、などがあります。例えば@の場合は、入院の原因を分析します。入所前からの持病の悪化による入院などもありますが、その場合は、入所時点で空床利用の許可を得ることで短期入所の利用でフォローすることが可能です。また、Aの場合は、周辺の施設との情報共有を行うことで地域ニーズが低下しているかの判断を行い、ニーズが低下しているようであれば違う地域に対する周知活動を実施することで申込数の増加を目指します。Bの場合は、一つひとつの介護業務から直接介助、間接介助、間接業務などを区分けします。そして、資格を必要とする業務と必要としない業務に対して適正な職員数の設定を行います。このようにすることで、どの業務にどれくらいの職員が必要なのかが明確になるため採用活動も効率的に行うことができ、改善に至るケースがあります。このような取り組みを行うことで収益の土台となるベッド稼働率の向上を目指します。

 最近では、物価高騰対策として保険外利用料の値上げを行うケースもあります。しかし、介護老人福祉施設などの場合、居住費や食費などは、基準費用額が設けられているため、値上げをしたとしても、負担の減額の適用を受けている利用者の割合によっては、あまり効果が出ないことがあります。

 加算算定については、利用者の単価を上げる重要な要素となります。法人によっては、「利用者負担額が上がるから加算の算定は控えている」、「職員の負担に対してもらえる単位数が少ないから加算算定を控えている」という声を耳にすることがあります。しかし、現在の介護保険制度では、基本報酬のみでの経営は困難を極めます。また、以前、加算として設定されていたものが改定により基本報酬に包含される場合もあります。そのため、介護老人福祉施設でベッド稼働率が例えば95%以上の事業所が収益改善を行うとしたら、加算算定の見直しを行うことが優先されます。利用者負担額の増加を懸念するのであれば、他法人が算定している加算の算定から始めてみるのも一つの手であると考えられます(表参照)。

機会損失を防いで収益を確保するための施設管理者の役割

 介護老人福祉施設の場合、制度として求められているものの一つとして看取り介護があります。しかし、算定率は看取り介護加算(T)(死亡日)で24.04%、看取り介護加算(U)(死亡日)では7.91%に留まっています(表参照)。看取り介護を行っていない場合、利用者の入院の機会が増えるため、たとえ短期入所の利用でフォローしたとしても収益低下につながることは必然です。

 実態調査の「介護老人福祉施設 1施設・事業所当たり収支額、収支等の科目」の介護料収入を延べ利用者数で割ると、利用者1人当たり1万278円/日となります。仮に利用者1人が7日間入院した場合、7万1,946円の機会損失になります。

 この機会損失を防ぐためには、現場も含めた組織としての対策が必要です。ベッド稼働率の向上も加算算定も施設管理者のみで対応し、解決できることは多くはありません。しかし、方向性を示し、それに向かって進んでいるかを管理することが施設管理者の役割であり、法人事業所の経営を維持・改善するための重要な第一歩になります。


※ この記事は月刊誌「WAM」2025年6月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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