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戦略的医療経営について


 全6回に渡って、経営戦略理論を用いた医療機関経営についてお届けします。


<執筆>
国際医療福祉大学大学院教授 羽田 明浩 氏


第1回:2025年問題に対応した医療機関の経営戦略を考える

 これから全6回にわたり、経営戦略理論を用いて医療機関経営について解説していきます。もともと軍事用語であった「戦略」が経営学の概念として登場したのは、1960年代のアメリカにおいて企業の中長期的な目標と取るべき行動の選択肢が述べられたことが背景といわれています。この経営戦略理論をベースに、医療業界にとってパラダイムシフトともいえる「2025年問題」という外部環境の変化が医療機関の経営に及ぼす影響について、述べていきます。
 「2025年問題」とは、わが国のいわゆる団塊の世代(1947年〜1949年生まれ)がすべて75歳の後期高齢者となり全人口の18%を占め、また65歳以上が全人口の30%となることが予想される2025年までに、社会保障のあり方を見直そうとすることです。  超高齢化社会となる2025年の医療と介護のあるべき姿は「病院から地域へ」の転換であり、すでに診療報酬改定と医療計画等の見直しによる政策等が実施されています。2025年問題に向け医療政策は大きく変革する予定であり、医療機関にとっては業界を取り巻く外部環境が大きく変わることになります。

2025年問題に対する政策

 2025年問題に対応する政策として、社会保障制度改革国民会議の報告書では大きく、子ども・子育て、医療・介護、公的年金制度の3分野についての方向性を打ち出しています。これら3分野のうち、医療・介護の方向性として以下を掲げています。

@「病院完結型」から、地域全体で治し、支える「地域完結型」へ。
A受け皿となる地域の病床や在宅医療・介護を充実。川上から川下までのネットワーク化。
B地域ごとに、医療、介護、予防に加え、本人の意向と生活実態に合わせて切れ目なく継続的に生活支援サービスや住まいも提供されるネットワーク。

 そして、同報告書が打ち出す医療・介護の改革の内容は以下のようになっています。

@医療・介護サービスの提供体制改革。
A病床の機能分化・提携、在宅医療の推進等。
B病床の機能分化と連携を進め、発症から入院、回復期(リハビリ)、退院までの流れをスムーズにしていくことで早期の在宅・社会復帰を可能にする。在宅医療・介護を推進し、地域での生活の継続を支える。
C地域包括ケアシステムの構築。介護が必要になっても住み慣れた地域で暮らせるよう、介護・医療・予防・生活支援・住まいが一体的に提供される地域包括ケアシステムを構築するため、医療と介護の連携、生活支援・介護予防の基盤整備、認知症対策、地域の実情に応じた要支援者への支援の見直し、マンパワーの確保。
D国民の健康増進、疾病の予防及び早期発見等を積極的に促進する必要。

 このように、これまでの医療が病院を中心として診療と治療を担っていたのに対して、2025年問題に対応する社会保障制度の改革は、これまで以上に医療機関間の地域連携の強化が図られることを想定しています。

地域医療ビジョンの策定

 各医療機関は病棟単位で、以下区分別の医療機能について現状と今後の方向を都道府県に報告しています。

医療機能の区分
・高度急性期機能は、急性期の患者に対し状態の早期安定化に向けての診療密度が高い医療提供機能である。
・急性期機能は、急性期の患者に対し状態の早期安定に向けての医療提供機能である。
・回復期機能は、急性期を経過した患者への在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供する機能であり、とくに急性期を経過した脳血管疾患や大腿骨頸部骨折の患者に対し、ADLの向上や在宅復帰を目的としたリハビリテーションを集中的に提供する機能である。
・慢性期機能は、長期にわたり療養が必要な患者を入院させる機能と、長期にわたり療養が必要な重度の障害者、筋ジストロフィー患者、または難病患者等を入院させる機能である。

 この病床機能報告制度により、医療機能の現状と地域ごとの将来の医療需要と各医療機能の必要量が明らかになります。そして将来の病床数の必要度の達成を目指して、医療機関の自主的な取り組みと医療機関相互の協議により、病床機能分化と医療連携の推進が図られる予定になっています。各医療機関は自院の目指す医療提供体制を踏まえて、診療機能分化と地域医療連携を有機的に推進することが可能となると見込まれています。

2025年問題に対応した経営戦略の策定について

 2025年の社会保障の一体改革によって、地域医療構想において病床機能の見直しと医療機関同士の連携強化が図られることは、医療機関にとっては従来の経営戦略を見直し、新たな経営戦略の策定が必要になるということです。
 2025年問題を見据えた医療機関にとっての経営戦略の策定は、そもそもの経営理念・ビジョンの見直しが必要になります。そして、地域医療における自院ポジショニングを見直したうえで、ドメイン(診療領域)の見直しも必要になります。さらに、勤務するメディカルスタッフなどの配置を検討し、医療機器等の必要な設備投資を図ることが必要になります。
 その場合、自院の立地する地域医療動向に合致した診療機能の提供を図り、近隣医療機関との連携のうえ、不足する経営資源はお互いに補完しあうことで、安定的な経営を図ることが肝要になってきます。
 経済産業省の伊藤レポート(2014)は、高いパフォーマンス企業の特徴を次のように述べています。「高いパフォーマンスを維持している企業に見られる共通項目は、他社との差別化で顧客に価値を提供しており、自社の存在が不可欠となるポジショニングと事業ポートフォリオ最適化に取り組んでいる。他社との連携も視野に入れた継続的なイノベーションを行っている。変化を恐れず、時代や自社にあった経営革新に合理的、積極的に取り組んでいる」。
 同レポートが述べていることは、一般企業だけでなく医療機関においても同様のことがいえます。自院の存在が不可欠となるポジショニングと事業ポートフォリオの最適化、他院との連携も視野においた継続的なイノベーションは不可欠です。そのうえで、外部環境の変化等の厳しい環境下にあっても、最適なポジショニングを見出し、地域医療連携等の他医療機関との連携によるイノベーションを行い、地域の医療ニーズに合致した絶え間ない経営革新に取り組むことが必要になってきます。
 2025年問題に対応した社会保障の提供体制の見直しという外的環境変化が医療機関経営に及ぼす影響について、経営戦略論の文脈を用いて第2回以降で具体的に述べていきます。


<参考資料>
・武藤正樹(2013)『2025年へのロードマップ』医学通信社
・経済産業省[平成25年8月6日]「持続的成長への競争力とインセンティブ 〜企業と投資家の望ましい関係構築」プロジェクト(伊藤レポート)最終報告書

※ この記事は月刊誌「WAM」平成29年4月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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