トップ背景

トップ

高齢・介護

医療

障害者福祉

子ども・家庭

知りたい

wamnetアイコン
検索アイコン
知りたいアイコン
ロックアイコン会員入口
トップアイコン1トップ |
高齢アイコン高齢・介護 |
医療アイコン医療|
障害者福祉アイコン障害者福祉|
子どもアイコン子ども・家庭
アイコン



勤怠管理システム・勤務シフト作成支援システム
福祉医療広告

高齢・介護
医療
障害者福祉
子ども・家庭

福祉医療経営情報
トップ

戦略的医療経営について


 全6回に渡って、経営戦略理論を用いた医療機関経営についてお届けします。


<執筆>
国際医療福祉大学大学院教授 羽田 明浩 氏


第5回:経営戦略論から地域医療連携推進法人を考える

地域医療連携推進法人とは

 第5回では、地域医療構想の一環として2017年4月から創設が可能になった地域医療連携推進法人を経営戦略論の枠組みで考えます。
 「地域医療連携推進法人」は、医療機関相互間の機能の分担および業務の連携を推進する目的で2015年の医療法の一部改正により2017年4月から創設が可能になった法人です。法人組織は一般社団法人であり、設立に際して2人以上の社員が必要で、社員は自然人以外の法人が加わることも可能です。社員には以下の者が加わることができます。医療連携推進区域において病院等を開設する法人(医療法人、社会福祉法人、公益法人、NPO法人、学校法人、独立行政法人、地方独立行政法人、地方自治体等)、介護事業等に係わる施設や事業所を運営している法人の他、地域において良質かつ適切な医療を効率的に提供するために必要な者(個人開業医、会議事業を行う個人、大学他医療従事者を養成する機関開設者、地方自治体、医師会、歯科医師会等)です。
 都道府県知事により認定され、主な認定基準には以下があります。地域医療構想区域を考慮して病院等の業務の連携を推進する区域を定めること、地域関係者等を構成員とする評議会が意見を述べることができるものと定めていること、参加法人の予算や事業計画等の重要事項について、地域医療連携推進法人の意見を少なくとも求めるものと定めていること。
 「地域医療連携推進法人」の行う医療連携推進業務には以下があります。病院相互間の機能の分担および業務の連携の推進を図ること、医療従事者の資質向上を図るための研修、医薬品、医療機器等の供給、参加法人への資金貸付、債務の保証および基金の引き受け、医療機関の開設が可能です。


コーポレート・アライアンスとシナジー(相乗効果)

 コーポレート・アライアンスとは、2つ以上の組織の結びつき方を表わしています。「地域医療連携推進法人」の参加法人にとっては、地域の医療法人間のコーポレート・アライアンスと捉えることができます。
 Barney(2002)は、組織がアライアンスを行う理由として、規模の利益の追求、競合からの学習、リスク管理とリスク分担、暗黙的談合の促進、不確実性への対処などをあげていますが、いずれの場合も戦略的提携を通じたシナジー(相乗効果)を活用する試みであると述べています。
 そしてGoold & Cambell(1998)は、コーポレート・アライアンスによって得られるシナジー(相乗効果)は次の6形態のうちのどれかが得られると述べています。それは、@ノウハウの共有による利益獲得、A戦略の調整による優位性向上、Bタンジブルアセット(有形資源)の共有によるコスト節減、C垂直統合による製品サービス流通の調整による優位性向上、D交渉力の集中によるサプライヤーへの影響力向上からの調達コスト節減、E新ビジネス創造の優位性、です。


「地域医療連携推進法人」に参画する参加法人が得られるシナジー(相乗効果)

 「地域医療連携推進法人」の業務内容として掲げているもののうち、参加医療法人にとってのシナジーとして期待されるものは、医療機関相互間の機能の分担および業務の連携の推進です。これは、地域医療におけるポジショニングの見直しにおいて、医療法人の医療機能分化を図ることで得意な診療領域の機能を高めるとともに、不足する経営資源等を他医療機関に依存することで戦略の調整による優位性の向上を図ることができます。さらに診療機能の分化によって、川上から川下までの診療ネットワークにおけるバリューチェーン形成において診療機能調整による優位性向上を図ることが期待できます。
 医療従事者の研修を「地域医療連携推進法人」が担うことは、参画医療法人等にとっては教育研修費用の削減によるコスト削減を図ることができるとともに、教育研修等を協働で行うことでのグループナレッジの共有を図ること等、ノウハウ共有による優位性を向上することも可能になります。
 また、医薬品等の供給を「地域医療連携推進法人」が窓口となって共同購入することは、交渉力の集中によってサプライヤーへの影響力を向上することから調達コスト削減を図ることができます。さらに担当職員間のノウハウの共有によるナレッジシェアリングを図ることでの優位性の向上も期待できます。
 資金貸付等については、「地域医療連携推進法人」が窓口となって金融機関から借り入れたのちに参加医療法人等への融資を行うことは、医薬品の供給と同様に交渉力を集中することで銀行等への融資交渉力等が向上し、調達コスト削減につながるとともに、担当者間のノウハウ共有によって資金調達能力の向上が図られ、調達コスト削減を期待することも可能となります。
 このように「地域医療連携推進法人」の参加法人は、業務内容からシナジーが期待できることからアライアンスを形成すると捉えることができます。


まとめ

 Pfeffer & Salancik(1978)は、組織は外部環境から諸資源を獲得するように環境との係わりなしには存続できず、諸資源を所有する他組織に依存することから資源の獲得を巡った組織間関係が形成・維持されると述べています。ある組織が他組織と資源を交換しあう関係に入るのは、組織存続のために必要な資源を他組織が保有しているからです。
 「地域医療連携推進法人」への参加を検討する医療法人等にとっては、自組織が持っていない経営資源等を他の医療法人等が保有しており、参加することでシナジー(相乗効果)が得られると期待される場合は「地域医療連携推進法人」への参加を検討することも必要であろうと思われます。



<参考資料>
・厚生労働省 医政局長通達(2017)「地域医療連携推進法人制度について」

※ この記事は月刊誌「WAM」平成29年8月号に掲載された記事を一部編集したものです。
月刊誌「WAM」最新号の購読をご希望の方は次のいずれかのリンクからお申込みください。

ページトップ