第8回: 換気量の適正化と全熱交換器の上手な使用法
望ましい室内環境(換気の目的)
人間や建屋等が排出するさまざまな有害化学物質、病原性微生物濃度を適正値以下に保つために、外気の導入(換気)が必要になります。
外気導入量の目安
病院は建築物環境衛生基準規則の対象外ですが、この規則を守るのが好ましい施設といえます。この規則では外気導入量の目安を室内二酸化炭素(CO2)濃度で1,000ppm(*)以下と規定しています。二酸化炭素濃度が1,000ppm を超えてもそれ自体で即悪影響を与えるわけではなく、空気環境の指標としての意味合いがあります。
* ppmは百万分の一の割合を示す単位です。1,000ppm は0.1%に相当します。外気中の二酸化炭素濃度は世界平均では391ppm、最近の東京23 区内では450ppm 程度となっています。
外気導入に対する空調負荷
冷房・暖房をしていない時期(4、5、10、11 月等のいわゆる中間期)は、外気を多めに導入しても大きな問題はありません。しかし冷・暖房をしている時期に必要以上の外気導入をすることは、室内の快適な温・湿度環境を屋外に捨てることになり、もったいないことになります。図1 は高齢者施設におけるエネルギー使用割合の例で、33%が空調負荷となっています。このうち35%程度が外気導入に対する負荷ですので、外気導入にかかわる負荷は全体からみると10%程度となります。この負荷をいかに少なくするかが課題となります。
外気導入負荷の削減
@ 外気導入量を適正量にする
室内の二酸化炭素濃度を測ってください(*)。900ppm 以下でしたら外気導入量が過大です。最大時の値が950ppm 程度になるよう外気導入量を削減してください。大型ブロワ―を使用している場合は管理業者に依頼し、ダンパー調整なりモーター回転数変更を行います。換気扇ないしは分散型全熱交換器を使用している場合はその運転台数を少なくするなり、間欠運転で対応可能です。
A 全熱交換器の運転を適正に行う(設置済みの場合)
全熱交換器(図2)は室内空気を屋外に排気する際、導入されるフレッシュな外気に室内の好ましい温度・湿度環境を伝達する優れものです(効率60%前後)が、誤った設定で運転しているところが数多くあります。冷暖房運転時は必ず全熱交モードで、中間期で冷暖房を使用しないときは必ず換気モードで運転することを周知徹底するとともに操作部に運転法を掲示し、せっかくの優れものを有効活用してください。
※ この記事は月刊誌「WAM」平成25年11月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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