第4回: 部下のやる気を高める「承認」「フィードバック」の力
信頼されるリーダーにある「承認力」
あなたは最近、部下のことを褒めているだろうか?また、部下のモチベーションを上げるために、どのような関わりをしているだろうか? アメとムチの効力がなくなった現代、従来のような外的要素ではなく、内発的に動機づける手法が注目されている。コーチングがマネジャーの必須スキルといわれて久しいが、日々の関わり方・あり方を通じ、どうしたら相手のやる気を効果的に引き出せるか、その術を知る必要がある。信頼されるリーダーとそうでない者を分けるのは、まさにこの「承認力」なのである。
「承認」とは、単に褒めることだけでなく、相手の行ったことや存在そのものを認め、伝えること。そして相手の変化や成果にいち早く気づき、伝えることだ。どのような立場の人であれ、他者から認められたい、という欲求がある。それを満たしてあげることができれば、より良好に関係を構築し、相手からの信頼を得ることができる。
例えば、「あいさつ」「笑顔」「名前を呼ぶ」「共感する」「任せる」「感謝する」なども承認の重要な要素である。そして、思いを肯定的な言葉で伝えること。何か実行すると、ポジティブなフィードバックが返ってくる、という図式ができあがると、一種の条件づけになり、「じゃあ次もやろう」という気になる。相手が何らかの行動を起こした場合、たとえそれが些細なことであっても、確実にフィードバックしてあげることが重要である。それにより、相手はさらなる行動へと動機づけられる。何より、「ちゃんと私を見てくれているんだ」という安心感を与え、それにより自己肯定感が高まり、自信につながる。
新たな気づきや成長につながる
くれぐれも、仕事だからやって当たり前と思って関わりをおろそかにしないこと。「〜をやりました」と報告を受けたら、「〜したんだね?」と繰り返し、具体的な行動をフィードバックする。また、相手がミスしたり、やらなかったことに対しても叱責ではなく、「できなかったんだね?」という形で承認することが大切である。より効果的に承認するには、相手をよく観察しなければならない。あえて相手の強みやよい部分に焦点を当て、それを「ここぞ」というタイミングで伝えてあげることだ。
「承認」には即効性があり、それだけでかなり職場の雰囲気が変わる。チームの状態や雰囲気は上司の内面が反映したもの、ともいわれる。上司が承認にあふれたあり方で接すれば、それは部下たちに伝わり、良好な風土に変わっていく。ストレートかつさりげなく、「いいねぇ」「なるほどね」「面白いね」「うれしいな」から始める。最初は照れくささもあるかもしれないが、慣れの問題。板についてくれば、それが自然になってくる。おだてたりお世辞を言うのではなく、事実をそのまま伝えればよい。
人は、往々にして自分自身のことはよくわからないものである。だからこそ、今どのような状態なのかを、良い悪いという評価は抜きに伝える。それによって、自分というものがよくわかり、新たな気づき・発見・成長につながるのだ。
●「やる気に火を灯す承認・伝達のスキル」 作業療法ジャーナル 鯨岡栄一郎 三輪書店 2011年4月号
●実践コーチング・マニュアル 伊藤明 ダイヤモンド社 2002年
※ この記事は月刊誌「WAM」平成23年7月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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