感情のスイッチを入れる働きかけの手法
私たちリーダーは立場上、部下に新しい挑戦をさせたり、仕事をお願いする場面が非常に多い。それをやらされ感でなく、自らの意欲が湧き、かつ相手の成長につながるような働きかけをしていく必要がある。結果として「この人のためだったら」と一肌脱いでくれるような状態になったとしたらいかがだろうか。そこで今回は、相手の感情のスイッチを入れるためのテクニックをお伝えしていきたい。(なお、第9回目では、「物ごとの『意味づけ』を変えて行動を促進させる手法」を、第17回では、「相手に変化を起こす言葉の変換術」としてご紹介しているので、ぜひ参照されたい。)
@お互いの意見が食い違っていたとしても、相手の感情に対して否定するのではなく、まずは理解を示し尊重する。そしてAnd型の接続詞によって、こちらの意見をつなげていく。例)「そうだね。では…」「なるほど。それじゃ…」「確かに。だとすれば余計に…」「よく分かるよ。だとしたら…」このようにすると、※ラポールをスムーズに築いて、相手の世界にスルリと入り込むことができる。
Aプリフレーミング:ただ指示やアドバイスをするのではなく、それをすることによって相手に生じるメリットを前もって提示する。例)「こういう理由で、こういうよいことがあるから、」+「.してもらえるかな?」
これと同様に、仕事に対して肯定的な意味を付与してしまうこともできる。例)「面白いプロジェクトを考えてるんだけど、」「これきっと楽しいと思うんだけど、」
人間は意味のないことはやりたくない。しかし、自分にとって“得”や“快”につながるのであれば、喜んでやってしまうものなのだ。
B前置きを一旦入れてから本題を切り出すと、相手に心の準備ができ断られにくい。例)「ちょっと仕事をお願いしてもいいかな?」「今、時間大丈夫?」「折り入ってお願いがあるんだけれど…」「○○さんだからこその頼みがあるんだけど…」「急ぎじゃないんだけど…」「ちょっと相談なんですが…」
※互いに信頼している状態
言葉の使い方で相手の反応は変わる
Cその依頼を遂行するのに適任と感じられる相手のアイデンティティ(存在)を作ってしまう手法。例)「仕事の早い高橋さん、」「アイデアマンの田中くん、」「そうじ上手な佐藤さん、」このように切り出されると、ユーモアが感じられ、相手は思わずYesと言ってしまうだろう。しかも、その仕事をうまく遂行しているイメージを相手に作ってしまう効果がある。
Dアズイフ・フレーム:「もし仮になんだけど、」とあくまで仮定の話という前提で切り出す手法。相手は仮の話ということで、少し突飛な提案でも否定せずに乗ってきてくれる。これによって、この提案に対する相手の反応を確かめることもできる。
E逆提案:意見を戦わせるのではなく、両者の意向が含まれる発展的な折衷案を逆に提案する。この時、妥協ではなく、相乗効果で「第3案」を生み出すのがポイントだ。
F最後に、やってもらって当たり前でなく、終わったら必ず、「ありがとう」「助かったよ」「早かったね」「さすがだね」と感謝・ねぎらいで締めよう。こういった承認の言葉は何よりのご馳走だ。「やってよかった」と相手も感じてくれることだろう。これが繰り返されれば条件づけとなり、自発性や信頼度が高まるに違いない。
以上、いろいろとご紹介していったが、言葉の使い方一つで、相手の反応がこんなにも変わるから不思議だ。相手がどう動いてくれるか、そこがリーダーとしての腕の見せ所だ。ぜひ現場で実践して、自分のものにしてほしい。
●「一瞬で自分を変える法」アンソニーロビンズ 本田健(訳) 2006 三笠書房
●一瞬で『自分の夢』を実現する法」 アンソニーロビンズ 本田健(訳) 2007 三笠書房
●まんがと図解で分かる7つの習慣」 スティーブン・R・コヴィー 2011 宝島社
※ この記事は月刊誌「WAM」平成25年2月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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