第9回: 物ごとの「意味づけ」を変えて行動を促進させる手法
相手が行動したくなるような意味をつける
ある行動をすれば、当然何らかの結果が得られるわけですが、現場において、その行動自体をすんなりできる人とそうでない人、意欲的な人とそうでない人、がいるものです。そこにはどのような違いがあるのでしょうか?
行動は、ある感情が湧き上がって始まります。では、その感情はどこから生まれるのでしょうか?それは、物ごとに対する「意味づけ」です。
「ABC理論」という考え方があります。一般的に、私たちの感情とは何か出来事が起こることにより、その反映で生まれるものととらえられています。つまり、楽しいことが起こったから、楽しくなる。腹立たしいことが起こったから、腹が立つ、といったように。しかし、実は「Consequence(結果としての感情)」は、「Activatingevent(起こったこと・出来事)」に対する「Belief(思い込み)」の結果であり、世の中は受け取り方次第で大きく変わる、ということです。同じものをみても、人によって感じ方が違うのは、このためです。
例えば、業務上、何かトラブルが発生した時に、どう対処するか?何か自分の想定外の頼まれごとをされたとき、どうするか?すんなり挑戦する人と、何か理由をつけて避ける人とがいるはずです。それに対して、従来のように根性で取り組んでもよいのですが、無理せず自然体で行動できたら、それはそれでよいですよね?自分の心にスイッチが入る「意味づけ」がなされていたらよいわけです。あなたは、どのような意味だったら、今すぐ行動できるでしょうか?
また、みなさんの立場上、部下に何かをさせる、頼む、任せるという場面が多々あるでしょう。すんなりやってくれればいいのですが、そうでない場合もあるはずです。その場合、相手が行動したくなるような意味をこちらでつけてしまえばよいのです。
物ごとに対する別のよい面を伝える
その手法の一つに、「リフレーミング」があります。物ごとに対する見方やとらえ方を後で変えてしまう、ということです。何ごとにもプラスの側面があるものです。意味づけが変わってしまえば、それに対する「反応」と「行動」は自動的に変わるのです。
例えば、「積極性が足りない」は「ゆっくりタイプ、慎重派、地道に進む」ということかもしれませんし、「せっかち」は「行動派、チャレンジャー」かもしれませんし、「忙しい」は「順調、充実、儲かっている」ということかもしれません。部下が何か研究発表を頼まれたとして、「何でこの忙しいのに面倒くさいことを…」と思っているとしたら、「君だから頼まれた。ここで飛躍する絶好のチャンスじゃない?」「きっと若手にもいい刺激になるよね」「君のこれまでの経験の集大成になるよ」と返す。その物ごとに対する別のよい面を即座に見つけ出して、伝えてあげるのがコツです。
そして、「プリフレーミング」といって、事前にこちらで意味づけをしてしまって、仕事を頼むことも手です。前述の例でしたら、「自分自身の成長とキャリアアップにつながって、評価にもつながって、施設のアピールにもなる、そしてついでに旅行にも行ける、学会発表をやってみてほしいんだけど、どうかな?」ともし言われたら、いかがでしょう?相手が得るであろうメリットをこちらで先に提示してしまうのです。「面倒」「何で私が?」という意味づけが丸っきり変わりそうです。
新しい時代のリーダーは、ただ単に正論や決まりで「これをやって」と指示命令するのではなく、相手が思わず自分からやりたくなってしまうような働きかけをしていく必要があります。とくに今の若い人たちは、何に対しても「意味」や「理由」を求めています。このような取組みを通じて、職員の意欲、職場の雰囲気や活気はかなり変わってくるのではないでしょうか。
●「未来記憶」 池田貴将 サンマーク出版 2011
※ この記事は月刊誌「WAM」平成23年12月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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