第14回: コーチングをモチベーションアップに生かすために必要なこと
相手のニーズや価値観を探りアプローチを変える
施設運営・チームづくりにおいて、職員のモチベーションは欠かせないテーマである。日々多忙な業務のなか、どうしても目の前のことに意識が集中し、本来の意味を見失ったり、心身ともに疲弊していくということは少なくない。そのようななか、どのようにやりがいや楽しさを仕掛けて内的に動機づけしていくかが、リーダーの腕の見せどころになる。
これまでご紹介してきたように、コーチングには、代表的なスキルとして「傾聴」「質問」「ペーシング」「承認」「伝達」「提案」「要望」がある。実は、これらを通じたコーチング的な関わりそのものが相手にモチベーションを生む。例えば、「質問」は相手に気づきを生むきっかけになるし、「傾聴」は相手の考えや話を大事にすることにつながる。「提案」や「要望」も相手の意思を大事にしていることに他ならない。なかでも、「承認」とは、相手の存在そのものを認め、変化や成果にいち早く気づき、伝えてあげることであり、即効性がある。
例えば、自分が尊敬している人や好きな人の一言に、理屈抜きに体が反応し動いてしまった、という経験はないだろうか?私自身、尊敬する上司からのごくまれにあるねぎらいの言葉にどれだけパワーが湧いてきたかわからない。そのモチベーションたるや、である。ねぎらいや感謝を伝えることは強力である。これぞ、「魂のごちそう」ともいうべき状態であり、これには人間は非常に弱い。またそれが欲しいと思い、つい頑張ってしまうものだ。
そのために重要なのが、「どうやったら相手が喜ぶのか?」そして、「何に対して心のスイッチが入るのか?」という視点である。まずその人自身にどんなニーズや価値観、信念がありそうか探り、アプローチを変えていくのである。
常に目標を描かせ未来を意識させる
他にも、何か仕事を依頼するとき、それをすることの意味や得られるメリットを付け加えながら伝えると、相手の受け取り方がまるで変わってくる。人は意味のないことやメリットが感じられないことに関しては、体は動かない。依頼を断るのがもったいない、やった方が絶対に得だ、とベネフィット(利益)を感じられるようにすればよいのだ。
また、例えばミーティングなどの場で、ストーリー(物語)を語ることも相手の気持ちに火を点けることにつながる。ただ業務上の要点や指示だけを伝えるのではなく、どうして自分がそう思うに至ったか。これからどんなふうにしていきたいかのビジョンについて実例や例え話を交えながら伝える。ドラマや映画がまさにそうだが、人はストーリーには無意識に引き込まれてしまうものである。それが知らず知らずのうちに心の琴線に触れ、鼓舞されるのだ。
本来コーチングは「目標達成をサポートする」コミュニケーションスキルであるので、面談などの場面で事あるごとに目標を描かせ、その未来を常に意識させることも、モチベーションアップの大きな一要素となる。
その上で基本となる姿勢が、相手のことを「どうせ出来っこない」と扱うのではなく、「必ずや出来るはずだ」と信じて関わることだ。相手はよくも悪くもこちらの期待どおりになっていく。そういった関わり方すべてが“コーチングマインド”ともいうべきリーダーとしての重要なあり方になるのだ。
●「コーチングの基本」 鈴木義幸 コーチ・エィ 日本実業出版社 2009
●『「仕事ごころ」にスイッチを!』 小阪裕司 フォレスト出版 2002
※ この記事は月刊誌「WAM」平成24年5月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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