第19回: “アサーティブ”とは − 言いたいことを率直に伝える技術 −
リーダーに求められるアサーティブな対応
あなたは部下に対して、遠慮せず、またお互い波風が立たないように物を言えているだろうか?コーチングでは、「アサーティブ」という言葉がある。アサーティブな態度とは、「自分と相手をお互い尊重しながら、自分の言いたいことを伝える」ことである。逆に、アサーティブでない状態は、相手を尊重するあまり、言いたいことを我慢したり、相手の意にそぐわないことを強要したりという状態である。
リーダーは、常にアサーティブであることが求められる。というのは、部下に対して言いづらいことも時にストレートに伝える必要があるからである。
アサーティブでいることによって、感情的にも落ち着いて気持ちよい状態でいることができる。また、何か問題が発生しても、お互いに知恵を出し合って、共同で解決していこうという、非常に建設的で前向きなスタンスになる。
そこで今回は、アサーティブに対応するための具体的な手法を以下にご紹介したい。
@『I(アイ)メッセージで自分の感情を表現する』
「私」を主語にして述べると、自分の立場における感情や希望を、相手を評価したり責めたりすることなく、伝えることができる。自分の内側に起こっている反応をそのまま表現する。
例)
「私はそうされることは非常に不快ですね」、「今回の君の行動に関しては、僕は心底がっかりしているよ」。
A『壊れたレコード』
これは、不当な抵抗にあったら、その都度、自分の要求を繰り返して述べるという技法である。
例)
相手:「君のこのアイデアは使えないな」
私:「今回はこのやり方で行こうと思っています」
相手:「前例がないし、難しいと思うんだ」
私:「ですよね。だからこそこれで行きたいと思ってるんです」
相手:「今までのやり方でも別によかったんじゃないの?」
私:「ええ、さらにこれでやりたいと考えているんですよね」
大切なことは優劣をつけることでなくそのまま伝えること
B『のれんに腕押し』
これは、相手があなたを批判しても、その言葉の一部に限定的に真実を見出し、それに賛成するという技法である。相手の言ったことの一部分であったり、原則的なことだけなら、賛意を表明することが可能である。
例)
「その部分に関しては、確かにおっしゃる通りです。そこで〜
(と一部は素直に認めてしまい、自分の意見につなげていく)」
「Focus」にて※GuyFarmer氏は、自己主張をしつつも攻撃的にならないようバランスを取って仕事を進めたい時、アサーティブになるための心得を書いている。例えば、「常に自分の要求は率直に」、「相手が同じように率直に要求を伝えてきた時もオープンに」、「『物事はこうあるべき』という先入観にとらわれすぎないようにする」などである。
大切なことは、やり取りの中で勝ち負けや優劣を決めるわけでなく、かつ怒るわけでもなく、伝えるべきことをただそのまま伝えてあげることである。場合によっては、感情的にならず、勇気をもって「叱る」ことも重要だ。今まで、場面によっては言うのを躊躇したり、感情に任せて言ったりすることもあったかもしれないが、何も我慢せず、アサーティブになる権利も自分にはあるのだ、と考えると、少し楽に感じられるのではないだろうか。
※リーダー向けのチームビルディングやコミュニケーションに関する研修トレーナー
●「起きていることはすべて正しい」 勝間和代 ダイヤモンド社 2008
● ウィキぺディア「アサーティブネス」
● lifehacker 「自己主張をしつつも攻撃的にならない話し方『アサーティブ』になるための心得」
http://www.lifehacker.jp/2011/06/110606_assertive.html
※ この記事は月刊誌「WAM」平成24年10月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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