第20回: 行動を左右する“ビリーフ”とは − 自分の感情のクセを理解する −
自分だけの正しさで考え方が縛られることも
私たちが意思疎通がうまくいかなかったり、物ごとがうまくいかない原因の一つとして「ビリーフBelief(信条、信念、思い込み)」がある。本連載第9回(2011年12月号)でも、「意味づけ」をテーマに「ABC理論」についてご紹介した。ビリーフはその人の判断基準であり、生まれ育った環境、過去の経験、過去に下した判断に基づいている。それによって、ある物ごとが起こった時の感情や行動が決まってくるのだ。
人はそれぞれ固有の「〜すべき」「〜しなければならない」をもっている。また、時として「それって常識でしょ?」と言ってしまうことがあるが、それはもしかすると、あなただけの常識(ルールブック)かもしれない、ということだ。しかも、厄介なことに、それはなかなか自分では気づけないのだ。
そのような人それぞれの正しさや尺度が行動を推進したり、目標に到達したりと、よい方に作用する分には構わない。しかし、それを相手に押しつけたり、自分自身がその考え方に縛られてしまうと、人間関係や普段の生活がとても窮屈なものになってしまう。
ビリーフには、@合理的なビリーフとA非合理的なビリーフの2種類がある。例えば、新しい物ごとに取り組むときに、「失敗とは、単なる経験や学びである」「物ごとはやってみなければわからない」というビリーフをもっていれば、行動は推進するだろう。しかし、「常に完璧でなければならない。失敗は許されない」「一回で決めなければ」と信じていれば、ミスを恐れ、行動が委縮してしまうだろう。
ビリーフを書き換えるセルフコーチングの手順
実は、この非合理的なビリーフを書き変えて、合理的なものに見直すことができる。そこで、以下の流れで、セルフコーチングを行ってみてほしい。
@まず、自分の中にある「非合理的なビリーフ」を特定しなければならない。あまりよくない感情が起こったとき、自分の思考に少し距離を置いて観察して、その背景にどんな非合理的なビリーフがあるのかを探ってみる。その時、目標に向かうための「最も効果的な行動」を妨げているビリーフは何だろうか?
A次に、以下の質問をしてみよう。「それが真実だという根拠はあるか?」「それを信じることで、何を得ようとしたのか?」「それを信じることで、どんな弊害があるのか?」「それを信じることは、私の望む人生の実現にどんな影響をもたらすか?」
Bそのビリーフに対する反論を書く。それによって、「そのビリーフが現実的、合理的、論理的ではないこと」「そのビリーフが損失や弊害をもたらすこと」を証明させる。多くの場合は、そこに根拠はなく、単なる自分の強固な思い込みであることがわかる。
Cそのうえで、もし自分のビリーフを自由に変えることができたら、どんな文章に修正するだろうか?そして、味わう感情はどのように変化するだろうか?文体としては、「〜するに越したことはない」「時には〜することもあるかもしれない」と表現することで非合理的なビリーフを弱めていく。
D上記の流れで生まれた「新しいビリーフ」を何度も唱えて、自分のものにしていく。
この手順を通じて、物ごとのとらえ方に柔軟性が生まれる。そんな自分に承認を与えながら、行動が推進するための効果的な考え方をぜひ採用していこう。そうすることで、組織でのあなたの動きが、大幅に変わるに違いない。
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● 「CTP Module19」 EQ エモーショナル・クォーシェント 株式会社コーチ・トゥエンティワン
● 「池田貴将通信Vol.17」 池田貴将 株式会社オープンプラットフォーム 2012
※ この記事は月刊誌「WAM」平成24年11月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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