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連載コラム
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トラブルに学ぶリスク対策

介護現場で起きた事例を踏まえ、原因とその防止策のポイントをお伝えしていきます。



<執筆>
株式会社安全な介護 代表取締役
山田 滋(やまだ しげる)
<プロフィール>
介護現場で積み上げた実践に基づくリスクマネジメントの方法論は、「わかりやすく実践的」と好評。著書に『安全な介護』(筒井書房)、『介護施設の災害対策ハンドブック』(中央法規)など多数

事例㉕:口腔内に差し歯が刺さり対処を巡りトラブル

こんな事故が起きました!

あるデイサービスの昼食後に、認知症の利用者の差し歯(ブリッジ)が口腔内上部に突き刺さっているのを職員が発見しました。看護師は利用者が服用している血栓予防薬に配慮して差し歯を抜かずに消毒だけをして、そのまま近所の歯科医を受診しました。しかし、歯科医は「これは口腔外科の分野なので紹介状を書きますから」と言って、大学病院宛の紹介状を書いてくれました。タクシーで大学病院を受診し、切開して差し歯を抜き処置を終えたのは事故から3時間後でした。デイサービスは利用者のご主人に「差し歯が刺さるとは思わなかった」と説明しましたが、ご主人は対処にもたついたことに不満をもらしました。

事故原因と防止対策

デイサービスの職員がどんなに注意しても、差し歯が口腔内に刺さるという事故は防ぎようがありませんから、事故を未然に防ぐことは不可能です。ちなみに、口腔外科の医師によれば食事中に差し歯が口腔内に刺さることはほとんどなく、くしゃみや咳をした時に刺さることがあるそうです。どちらにしても、差し歯が刺さるのを防ぐことはできませんから、この事故に対してデイサービスが責任を問われることはありません。

しかし、ご主人が言うように差し歯が口の中に刺さったまま3時間も放置されたのでは、痛みを我慢している本人はたまったものではありません。では、どのように対処すればよかったのでしょうか?

差し歯が口腔内に刺さっても重篤性も緊急性もありませんから、救急車を要請しなかった看護師の判断が誤りというわけではありません。かと言って、このような事故に備えて口腔外科のある病院を調べておくというのも無理があります。実は他のケースも含めて、軽度のケガで処置に困り救急車を要請するほどでもないような時、大変よい方法があるので覚えておくとよいでしょう。

看護師自身が119番に電話をして「私はデイサービスの看護師ですが、口腔内に差し歯が刺さった患者がいます。応急処置と受診に協力してください」というと、応急処置のアドバイスや緊急受診先の手配などさまざまな協力をしてくれるのです。救急車は緊急性のある重症患者を優先するので、看護師に対しては処置のアドバイスから専門医の紹介まで手厚く対応してくれるのです。デイサービスのみならず、多くの介護施設には看護師が配置されていますから、処置の判断に迷った時には相談してみるとよいでしょう。医療資格をもっている看護師であれば、119番の協力のもとに適切な対処が可能なのです。

口腔内に差し歯が刺さり対処を巡りトラブル

あるデイサービスでは、間違えて舌をひどく噛んで出血した患者に対して、看護師が止血剤を塗布するなどの処置をほどこしましたが、出血も止まらず傷が悪化してその後の治療が難しくなってしまいました。後に炭酸レーザー治療ができる歯科を受診して処置を受ければ、止血も早く傷の治りも早いことが分かりました。

口腔内の傷は軽視すると予後が悪くなり、食事ができなくなれば低栄養などの二次的な危険もあるので実は厄介なのです。

トラブルを避ける事故対応

上記のように口の中の傷は、下手な処置をすれば治りが遅くなり食事の摂取に影響を与えますから、デイサービスではその後のフォローをきちんとしなければなりません。デイサービスの過失ではないからと利用者や家族任せにしておくと、適切な治療を受けるかどうかの保証もありません。特に老老世帯などでは、看護師がその後の傷の経過をお聞きして、場合によっては治療の相談に乗ってあげることが必要になるかもしれません。

※ この記事は月刊誌「WAM」2017年4月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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