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連載コラム
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トラブルに学ぶリスク対策

介護現場で起きた事例を踏まえ、原因とその防止策のポイントをお伝えしていきます。



<執筆>
株式会社安全な介護 代表取締役
山田 滋(やまだ しげる)
<プロフィール>
介護現場で積み上げた実践に基づくリスクマネジメントの方法論は、「わかりやすく実践的」と好評。著書に『安全な介護』(筒井書房)、『介護施設の災害対策ハンドブック』(中央法規)など多数

事例㉘:過失のある事故を放置、2年後に賠償請求

こんな事故が起きました!

Mさん(68歳・要介護2)は特養のショートステイ利用中に、職員のミスが原因で歩行介助中に転倒骨折して入院治療を受けましたが、歩行不能となり要介護度5に認定変更になりました。施設から事故の責任についての説明はなかったものの、キーパーソンの長男はその後の利用を考え施設に何も請求せず、ウヤムヤになりました。ところが、2年後に長男が亡くなり次男が引き取ると、次男は2年前の事故の事実を知り、施設に損害賠償請求をしてきました。施設では「2年前に長男が賠償請求しなかった。事故は終わったはずだ」と主張しましたが、次男は施設を相手取って訴訟を起こす構えです。

事故原因と防止対策

事故が起きた時、その事故が施設の過失なのか不可抗力なのか、施設に損害賠償をする意思があるのかないのか、明確に説明している施設はまだそれほど多くはありません。つまり、施設が賠償する意思表示をしているのに、家族がこれを辞退しているのではなく、事故の損害賠償責任をウヤムヤにしているのです。では、施設の事故の過失や賠償義務などの説明をせず、これを家族が咎めもせず終わってしまっていたら、本事例のように後で蒸し返された時にどうなるのでしょうか?

本事例の場合、明らかに過失のある事故であるのに、施設は過失の説明も賠償の意思表示もしていませんから、長男は損害賠償を辞退していません。ですから、この事故の賠償関係は相変わらず存続していて、終わってはいないのです。ですから、次男が訴訟を起こして施設の過失や事故の損害額を立証すれば、施設はおそらく支払いを免れないでしょう。「2年も前に終わったはずだ」と施設長は考えていたようですが、賠償請求の時効は10年なのです。結論を出さずウヤムヤになった事故は10年間いつでも賠償請求が可能ということになります。ちなみに、Mさんは当時68歳で下肢機能全廃の後遺症を負い要介護2が要介護5に変更になっていますから、後遺症の慰謝料や17年分(68歳の平均余命)の介護費などを合算すると、数千万円になるかもしれません。

どの施設にも事故対応マニュアルは整備されていると思いますが、事故後の家族対応マニュアルが備わっている施設は少ないのではないでしょうか?事故が起きた以上はたとえ過失があってもなくても、契約上の債務不履行に当たる恐れがあるのですから、きちんとした事故状況の調査を行い過失の有無について判断しなければなりません。とくに、利用者が傷害を負い治療費などの費用の損害が明確になっている事故は、必ず過失の有無を明らかにしなければなりません。

過失のある事故を放置、2年後に賠償請求

ある法人で過去1年間の事故を調査したところ、施設すべてで損害賠償未対応というウヤムヤ事案が見つかりました。多い施設では事故の半数で家族に過失や賠償の説明がなされていませんでした。ある施設長に、「10年間はいつでも賠償請求されるので今のうちに白黒つけた方がよいですよ」というと、「でも今さら寝た子を起こすようなことしてもね」と笑っていました。

トラブルを避ける事故対応

施設利用者の家族は事故で被害に遭っても、遠慮して費用などを請求してきません。ただ、遠慮深いのではなく、その後もサービスを利用するため「ことを荒立てたくない」のです。このように、介護サービスでは利用者が亡くならない限り、事故後もサービスを利用するため、賠償請求しにくいのが当然なのです。ですから、運営に関する基準には「賠償すべき事故が生じた場合は速やかに賠償すること※」という規定があるのです。つまり、過失のある事故で損害賠償未対応の案件が10件あれば運営基準違反が10件あると考え、運営基準の趣旨を重く受け止めて欲しいと思います。
※短期入所生活介護の場合は「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」37条3項

※ この記事は月刊誌「WAM」2017年7月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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