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介護施設でのロボット・ICTの導入

全6回に渡って、介護施設でのロボット・ICTの導入の現状やポイントについてをお届けします。


<執筆>
  国際医療福祉大学大学院
  福祉支援工学分野 教授 東畠 弘子 氏


第3回:機器の“進化”をみて導入時期の検討を

改良で成長する

 介護は奥深い仕事だと思います。介護を必要とする人たちの排泄介助、言葉かけ、それぞれの場に応じた適切な対応が求められます。介護職員は介護福祉士が多くなったとはいえ、新卒で入職した人、転職してきた人、年齢、経験、資格やバックボーンはさまざまです。それだけに、施設での研修やOJTが重要です。その点、介護ロボット(以下、機器)は、稼働させればよいだけですから、いつでも使用が可能です。しかし、本当にそうでしょうか。機器は、日々進化しています。ヒトのように新人から、中堅、ベテランになるといえるのかは不明ですが、市場に出されてからも改良を重ねていきます。機器によっては常に同じバージョンではないということです。

 今回は、睡眠計測センサー「眠りSCAN」(パラマウントベッド)の開発の変遷から説明したいと思います。施設での導入を考えるとき、その機器が現在、どの段階かということも考えてほしいからです。なお、同社と筆者との間には利害関係はありません。また執筆に際して参考としたのは公開資料(ホームぺージ、ニュースリリース)であることを申し添えます。

睡眠計測センサー「眠りSCAN」の変遷

 同社のホームページをみると、「眠りSCANはマットレスの下にセンサーを設置し人の体動を捉えることで、睡眠・覚醒・起き上がり・離床といった状態の変化や呼吸数を測定」(注1)とあります。介護現場の人たちがこの製品を知るようになったのは、ここ5〜6年ではないでしょうか。機器の導入による介護職員の業務効率化、負担軽減とケアの質の向上が叫ばれるのと歩調をあわせるように認知されてきた気がします。

 2018年の全国介護老人保健施設大会埼玉大会では、「AI・ロボットは介護をどう変えるか?」をテーマにシンポジウムを行い、筆者は座長を務めました。口頭発表は認知症ケア、リハビリテーションから、災害対策など多岐のテーマに分かれて行われましたが、そのなかに「介護ロボット・AI」のセッションがあったのは、よく記憶しています。導入事例報告が主でしたが、その報告にはコミュニケーションロボットと、「眠りSCAN」が幾つもあったからです。

しかし、「眠りSCAN」の出発は、同社によると2009年とのことですから、今から十数年も前になります。マットレスの下に敷いて睡眠計測するシートセンサーというコンセプトは同じですが、当時はそれほど広がらなかったようです。筆者も、製品化されていたことを知りませんでした。これを第一世代とすると、介護施設に認知されたのは第二世代からだと思います。

2014年9月25日に出された同社のニュースリリースでは、「非装着型睡眠計をリニューアル」として「眠りSCAN」に呼吸数やベッド上の起き上がり動作の検知機能を新たに入れています。「要望の多かった機能」とニュースリリースに書いてあることから、初期の製品を導入した施設からの要望事項だったのかもしれません。

睡眠・覚醒がわかることは、施設にとっては利用者が起きているか、寝ているかの指針ではありますが、それを介護業務にどのように活かすかとなると、むしろ施設にとっては、夜間の転倒・転落の不安、認知症の人の徘徊といった心配が先立つと考えられます。1台導入しても活かす道が少ないかもしれません。起き上がり・離床状態が端末に表示されることで、とくに夜間の人員が少ないときの介護職員の負担軽減につながると考えられます。第一世代の睡眠・覚醒の検知から、機能を付加して介護職員の業務に、より直結した形です。また2009年の製品は、PCと通信できる台数が限定されていたそうですが、2014年に発売された第二世代はPCと通信できる台数の拡大や、スマートフォン端末でのチェックなど、起き上がり動作の検知も含めて介護施設での活用を考えた改良版でした。「眠りSCAN」は介護ステーションのPCで利用者の状況が表示されますが、スマートフォン端末でも見守り、確認ができます。

さらに2019年には、より心拍数の把握や通信方法を改良させた第三世代が登場しました。機器の周辺環境という意味では「眠りSCAN」とPC端末など一式をレンタルする仕組みを導入し、初期投資にかかる負担軽減を図りました。さらに2020年には赤外線タイプの離床センサーを発売し、「眠りSCAN」との連携機能を搭載していますから、「眠りSCAN」を軸にした周辺機器の開発などは今後も進んでいくことが想像されます。

表4

(注1)パラマウントベッド https://www.paramount.co.jp/learn/reductionworkburden

導入時期を見極める

 福祉用具のなかには、市場に出て一定の実績や評価を受けているものがたくさんあります。他方で、とくに介護ロボットと呼ばれる機器は、製品開発し、市場に出てからも改良を重ねていくことは決して珍しくはありません。ユーザーである介護施設・職員が使っていくなかで「もっとこうしてほしい」という声に応えていくのは、開発側にとっては責務かもしれません。また通信環境も、現在と10年前、あるいは20年前では格段の違いがあります。

 そうなると施設にとっては、いつ導入をするのか、という判断が難しくなるかもしれません。この点について、施設がその機器を開発までにモニターしていた、あるいは「ともによい製品を生み出していこう」という意向があるのなら、市場に出て間もない製品であっても自らの施設で使ってみては、と著者は考えます。もちろん、職員の負担軽減などに活かせると考えたら、という意味です。しかし、その機器の機能はわかったけれど、それ以上に判断材料が乏しいというときは、試しに、この機器は当初の開発から何世代目にあたるのか、と担当者に尋ねてみてはいかがでしょうか。

 筆者は市場の評価を得るためには一定の期間が要ると思うからです。改良点を踏まえて話してもらうことで、その機器に対する理解が深まりますし、そうした話をしてくれる担当者なら、信頼も置けるかもしれません。


編集部より:本編は機器改良の一例を示したもので、特定の機器を推奨するものではありません。

※ 2022年5月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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