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介護施設でのロボット・ICTの導入

全6回に渡って、介護施設でのロボット・ICTの導入の現状やポイントについてをお届けします。


<執筆>
  国際医療福祉大学大学院
  福祉支援工学分野 教授 東畠 弘子 氏


第5回:介護ロボット相談窓口、リビングラボとの連携

全国に実証評価や相談の拠点

 介護ロボットの開発を加速するための方策として「開発実用化支援事業」があります。厚生労働省は、開発企業と介護現場の双方が意見を出しあったり、相談ができる窓口などを整備しています。プラットフォームともいわれますが、その1つにリビングラボがあります。リビングラボとは「実際の生活空間を再現し、新しい技術やサービスの開発を行うなど、介護現場のニーズを踏まえた介護ロボットの開発を促進するための拠点」です。開発を支援するための実証評価やアドバイスを行います(図1)。

 月刊誌WAMで連載を開始してから筆者のところにも相談が寄せられるようになりました。「試してみたいがどれがよいかわからない」、「試用貸し出しをしてほしい」というものです。そのようなとき、プラットフォームの一環として整備された全国17カ所の相談窓口が役に立つのではないかと思います。このプラットフォーム事業は、NTTデータ経営研究 所が厚生労働省からの委託を受けて実施しています(https://www.kaigo-pf.com/)。介護現場での導入事例や補助金に関する相談など、誰でも自由に相談ができますし、貸し出しについては企業に取り次いでもらえます。相談は無料です。相談機関は北海道から福岡、鹿児島まで全国にあります。横浜市総合リハビリテーションセンターのように、もともと展示や相談機能を持つところもあります。同センターは臨床評価の機能を持っており、協同研究もしているそうで、2020〜2021年度の相談対応は約1000件だそうです。試用貸し出しは287件でした(図2)。

 リビングラボでは、開発する企業が知りたい製品評価や、効果検証に対するアドバイスが得られます。「メーカーの技術優先ではなく、現場のニーズが大事」と、ニーズとシーズの融合が指摘されますが、介護ロボットに参入する企業は、介護とは無縁の企業もあり、それだけに開発にあたってのアドバイスは重要なのです。量産に至る前のプロトタイプができたときも、その評価や効果の検証、職員の操作・使用方法の検討、何より安全性についてなど、検討事項は多岐にわたります。これを1つの企業ですべて行うには荷が重く、実証フィールドすら得ることも困難です。

 リビングラボは、企画段階から試作(プロトタイプ)、製品化へ、それぞれの段階に応じての助言と支援が得られ、国立長寿医療研究センターはじめ全国に8カ所あります。8カ所には研究機関や、施設を持つ社会福祉法人があり、研究実証型か現場実証型か、それぞれのリビングラボの特性を生かす仕組みになっています。介護ロボットはロボット技術を用い た介護に役立つ製品ということですから、福祉用具の1つといえます。福祉用具全体の底上げにつながります。

善光会の取り組み

 ところで、リビングラボの1つに社会福祉法人善光会があります。2005年に設立され東京・大田区を拠点に、特別養護老人ホームをはじめとする入所型と通所型の複合施設を展開しています。社会福祉法人の歴史としては比較的新しいといえますが、介護ロボットとの関連で注目されています。というのは、2013年に介護ロボット研究室を作り、2017年にはさらに発展させたシンクタンク機能を持つサンタフェ総合研究所を設置し、現在、介護ロボットの開発支援、実用評価などを行っています。宮本隆史理事・最高執行責任者の講演を聞く機会がありました。以下、善光会の取り組み経緯です(注1)。

 介護ロボットの導入は2009年、装着型ロボットスーツが最初でした。以後、単に導入するのではなく、介護現場で実際に使用するなかで、効果検証を行い開発企業にフィードバックしていったそうです。2009年には介護職員の業務分析を行い、負担の大きい業務が何かを明確化し、その業務から改善に向けた取り組みを集中的に実施したそうです。「専門職でなければできない仕事をするためにも、他の業務は効率化・アウトソーシングが必要」(宮本COO)とし、記録などはICTを活用して効率化を図ったといいます。介護ロボット・ICTを活用するためには、「自施設の課題を特定すること」であり、「導入時は一時的に職員の業務量は増えるが、それをいかにマネジメントするかが経営層の課題」という言葉は、筆者には腑に落ちるものでした。福祉用具もそうですが、「導入することで業務負担が軽減されると思ったら、慣れるのに大変」という声はよく聞くからです。これまでと異なるモノに対して習熟や理解が必要であり、導入すれば即時的に負担減少とはならないからです。介護のどの部分の負担減少や効率化を求めるか、という目的のないままに、漫然と導入しても活用は難しいと考えます。現在、善光会では年間50件の相談・実証研究を行っているそうです。

(注1)国際医療福祉大学大学院乃木坂スクール2040年に向けた支援機器の活用4月26日講演資料

法人間の連携

 社会福祉法人や介護施設は、善光会のような職員500人規模の施設ばかりではありません。むしろ中小規模の法人が多いと思います。導入に助成がある間はよいですが、自前で介護ロボットを導入するには費用がかかります。5月号(連載2回目)で述べたように、ファシリテータ、職員への研修も必要です。そうなると、「今後を見据えると必要性はわかるが、ウチの施設では難しい」と断念しないための手立てが求められます。

 その1つは共同購入や共同研修です。1法人で完結するのではなく、垣根を超えた介護ロボットなどの機器の購入や、活用のための研修という意味です。共同購入は、数がまとまることで、単価の引き下げにつながりますし、製造企業にとってもメリットがあります。

 介護ロボットの試用や導入相談をした後の具体化の方策の1つとして、「共同」ということも念頭に置いてもらえれば幸いです。

※ 2022年5月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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