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介護施設でのロボット・ICTの導入

全6回に渡って、介護施設でのロボット・ICTの導入の現状やポイントについてをお届けします。


<執筆>
  国際医療福祉大学大学院
  福祉支援工学分野 教授 東畠 弘子 氏


第6回:検討から準備・試用まで、介護ロボット相談窓口を活用

導入評価の考え方

 施設での介護ロボット・ICTの導入を検討する際には、まずは情報収集からと誰もが思いますが、インターネットには情報があふれています。メーカーの動画を闇雲に見ても、そこから何を自施設に必要な情報として抽出するか戸惑うと思われます。そのようなときは、助成やイベントの案内、報告書などを網羅している厚生労働省(以下厚労省)の「介護ロボットの開発・普及の促進」(注1)ページは役に立つでしょう。厚労省は昨年度、介護現場におけるICTの活用について各地でセミナーを開催しましたが、その動画も公開(注2)しています。

 その他、参考になるものとして、三菱総合研究所の報告書(表・注3)では介護ロボット導入手順を検討段階から準備、試用、運用までの 4 段階にわけて詳しく説明しています。評価手法や評価に活用できるツールについても紹介されています。軸となる評価の考え方として「活用の範囲/利用者への効果/職員・家族への効果/組織への効果/機器の利用」の5 項目をあげています。

 「活用の範囲」とはこれまで筆者も指摘してきたように、「誰に利用するのか、どのような場面で利用するのか」という利用対象範囲です。「職員・家族への効果」は利用者の自立支援、職員の負担軽減につながるかどうか、「組織への効果」は導入により経費節減ができるかなど、経営に役立つかということです。「機器の利用」はその機器の使い勝手とともに、安全性やメーカーのサポート体制なども含んでいます。評価は即効性としてわかるものと、時間経過をたどらないと検証できないものがあります。例えば、コミュニケーションロボットを抱きあげた途端に笑顔になった利用者がいたとしたら、利用者への即効性があったといえるでしょうが、1 カ月もすると飽きてしまって触らなくなったとしたら、効果があったとはいえなくなります。

 また、「移乗用の装着型ロボットをつけると腰への負担が楽になった」と職員が答えたとしても、それが、職員の腰部負担による離職防止になるかどうか、さらには、装着にかかる時間も長期的にみていく必要があります。経営者としては「組織への効果」を前提に、介護ロボットを導入するのだと思いますが、導入の目的は、「利用者」と「職員」のケアの質向上を含めた「支援と負担軽減」であり、そのためには「活用の範囲」を見定めること、利用に関するメーカーや販売店のサポート体制を確認し、試用した上で導入することをお勧めします。そうした試用のためにも、介護ロボット相談窓口があります。

(注1)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000209634.html

(注2)https://www.mhlw.go.jp/stf/kaigo-ict.html

(注3)三菱総合研究所 介護ロボットの評価指標に関する調査研究事業報告書 2020 年 3 月

横浜市・反町の介護ロボット展示場

 第5回で介護ロボットの相談窓口について述べましたが、その1つである神奈川県横浜市の反町福祉機器支援センター内にある介護ロボット展示場に行ってきました。動画をみるだけではわからないことを、触れて、その場で尋ねることができるのが展示場のよさといえます。

 東横線反町駅から徒歩 5 分程度の街中にある同センターは、横浜市総合リハビリテーションセンターのブランチの位置づけです。福祉用具の相談や開発評価などに長年取り組んできたところです。

 スペースは決して広くはないですが、浴室があり、入浴用リフトなどを設置したときのイメージがつかみやすいように工夫されています。介護ロボットは約 20 種類が展示され、手に取って試すことができます。展示場の正面に、コミュニケーションロボットが置かれ、声をかけると反応するので見学者を笑顔にさせていますが、私が驚いたのは、センサーマットが複数展示されていたことです。

 連載第3回で体動を検知する「眠りSCAN」について紹介しましたが、このような体動・心拍・呼吸を計測するセンサーマットが複数ありました。展示場の方に尋ねると、ベンチャー企業による開発など、最近はいくつか出ているそうで、見比べてもらうようにしているそうです。

 手に取ると思いのほか軽く薄いことに驚かされます。いずれも施設での利用が主ですが、それぞれに特徴があります。実際に触ってみて、それぞれの違いをその場で聞くことができるのは便利です。展示会では、規模の大小によらず、出展する企業のブースに個別に行かなければならないからです。製品の利点は開発企業に聞くことができますが、他社と比べてどうかというのは、答えるのは難しいでしょう。その点、展示場の相談員は中立の立場で、説明してくれます。反町の展示場では、装着型の移乗用スーツも複数あるのでサイズ感や重量など、感じることができます。また 2021 年度から介護保険の特定福祉用具販売の対象となった「排泄予測支援機器」もありました。マネキンのお腹に装着されているので、どの程度肌に触れるのかということも確認することができます。

 介護保険制度施行以後、福祉用具貸与事業所は全国にありますが、介護ロボットを「これから導入を検討したい」というときには、こうした展示場が必要です。見て触れて、尋ねることができるのは、初めの一歩になります。繰り返し相談に行くのもよいと思います。前項で述べたように、検討段階、準備段階、試用段階、それぞれの段階で相談し、どこに効果があり、どこが問題なのか、問題点の洗い出しや、解決に向けたアドバイスを得られると思うからです。

おわりに

 繰り返しになりますが、施設に「介護ロボット・ICT」を導入することが目的なのではありません。ロボットもICTも手段に過ぎません。夜間の訪室・巡回の負担を減らしたいのか、移乗時の腰にかかる負担を減らしたいのか、あるいはレクリエーションのマンネリ化を解消したいのか等々、自施設での課題は何なのか、そこを見定めることから始まります。

 本連載はこれでおしまいです。施設の皆さんから問い合わせをいただくなど、筆者も勉強になりました。またどこかでお会いしましょう。ありがとうございました。

※ 2022年5月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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