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介護現場でのICT活用
〜企画・導入・運用〜


 全12回に渡って、介護施設でのICTの導入における企画・導入・運用のポイントについてをお届けします。


<執筆>
 社会福祉法人善光会 理事 宮本 隆史 氏


第3回:介護現場におけるICT機器導入に向けた手順(後半)

 本稿では、第2回に引き続き、介護現場におけるICT機器導入に向けた手順について記載します。介護現場における、生産性と業務品質の向上の両面から、ICT機器の活用が求められています。社会福祉法人善光会では、介護現場へICTを導入する手順として、5つの項目(図1)を段階的に設けており、この5つの項目のうち、後半として「ケアテック(介護現場におけるICT機器)の選定から導入・評価」までについてご紹介します。


ケアテックの選定

 現場で解決したい課題やその解決方針が定まったところで、まずは、実際に導入に向けた組織内の体制整備を進めます。「ケアテック導入プロジェクトチーム」を立ち上げ、ケアテックの導入選定からトレーニング、使用状況の確認・評価・見直しまですべてのプロセスにかかわっていくことが大切です。チームメンバーは、介護職に限らず、ケアマネジャーや、看護職員、相談員などの専門職に加え、必要に応じて総務や経理などの事務職なども含めた体制を構築します。組織を横断して多職種を組み入れ、多角的な視点で意見を交わせるようにすることが大切です。

 プロジェクトチームを立ち上げ、体制が構築できたら、選定のためにさまざまなケアテックを調査します。本当に施設内の課題を解決してくれるのかという視点を持ち、さまざまな角度から候補となるケアテックの情報を収集しましょう。メーカーのサイトを参考にするだけでなく、展示会に参加して実機を見て触れることや、販売業者への問い合わせを行うなど、解決したい課題に対し効果を発揮できるか、積極的に調査をしていきます。実機を試用できることもあるので、例えば1週間程度は試験的に導入して使用感を試してみることは効果的です。

 調査の次はいよいよ選定に入ります。ここでのポイントは「課題の解決力」と「コスト」です。「課題の解決力」とは、それぞれの製品が課題の方向性に沿った機能をどれだけ有しているのかを示します。例えば同じ見守り支援に関するロボットでも、機能にはそれぞれ差があり、できることやできないことがあります。機能の優先度を考えて整理していきましょう。また、機器の精度や使い勝手なども含めて、表を作成し整理してみましょう。また、「コスト」についても事前の十分な調査が必要です。製品の初期導入費用だけでなく、使用できる環境を整えるための初期整備費用がかかります。センサー類は、Wi-Fiなどの通信環境を必須とする場合も少なくないので、注意しましょう。さらに実際に導入した機器を使用できる期間を示す想定耐用年数や、導入後に発生する追加資材・消耗品・メンテナンスなど、継続的に発生する費用も洗い出しましょう。このように総合的にコストを算出し、必要な予算を設定することが重要です。また導入にあたっては、補助金の活用も検討します。申請できる時期や補助率などの情報も収集し、申請の準備をすすめます。申請にあたっては、事業所の所在する自治体などの情報を十分に確認しましょう。

ケアテックの導入

 現場に導入するケアテックが決まったら、実際に導入するための導入計画を策定します。ここで最も重要なことは、介護現場へスムーズに浸透するように何をすべきかを考えることです。ケアテックが導入されても、これまでのやり方から変わることへのストレスや、使い方がうまく掴めないことにより、機器が現場の片隅に放置されるようなケースもあります。介護職員が導入の目的や効果を理解し、介護現場に定着することで、課題の解決に向かって活用されるよう熟慮しましょう。

 導入計画にあたっては、各介護事業所の状況に合わせて策定されるべきではありますが、とくに「ケアテック導入講習会」と「マニュアルの作成」は組み込むことをおすすめします。「ケアテック導入講習会」は、職員の労働時間帯に合わせて複数回参加できるように設定が必要です。講習会では、機器の説明に限らず、導入の目的や、利用者へのメリット、具体的な利用シーンや活用方法など、利用する介護職員にとって、使用するイメージがわきやすいように説明することが重要です。また、導入後は慣れるためのトレーニング期間が必要となりますが、習熟度は人それぞれでもあるので、全職員への浸透に向けた「マニュアルの作成」を進めます。マニュアルは、介護現場内で見やすい場所においてすぐに確認できるようコンパクトかつ、写真などにより視覚的にイメージ可能なものが望ましいです。一度作成したマニュアルも、運用の進捗や職員からの意見に応じて更新していきましょう。計画の策定が進み、準備が進んだらあとは実践するのみです。プロジェクトチームを中心に、職員全員が前向きに取り組めるよう進めていきましょう。

ケアテックの評価

 ケアテックの導入後は、導入効果の測定と改善が必要となってきます。当初の目的であった課題の解決に対して効果が出ているかを確認し、検証をすすめましょう。そもそも課題の解決の設定は、もともと利用者にとって理想のケアを考え、それを最も効率的かつ職員の負担が軽減されるようなオペレーションを実施するために考えられたものです。だからこそ、基本的にはケアテックの具体的な評価の視点は、利用者の方のどのようなケアに対して、介護職員の何が改善されたのかを検証する必要があります。具体的な導入後の評価事例(図2)をみてみましょう。

 この図は見守りセンサー導入後の具体的な改善イメージです。@は、音を発して注意喚起するような居室センサーを導入している場合です。これまでは、センサーが発報すると、その都度居室にいかないと様子がわからないので、別の利用者に排泄介助をしていても一時中断して確認に向かいました。しかし、見守りセンサー導入後は、手持ちのスマートフォンに必要な通知が届き、スマートフォンから映像で居室の様子を確認できるようになったので、緊急性がなければ、進めていた別の利用者への排泄介助等を止めることなく完了してから、訪室すればよくなりました。また、Aは、センサー導入前、深夜の時間帯に1部屋ごと訪室し、呼吸や睡眠状態を確認している場合ですが、導入後は遠隔モニタリングで呼吸や睡眠状態を確認することができるようになったので、夜勤の介護職員の身体的負担が大幅に減少したという効果が得られている事例です。

 ここでは上手くいった事例を紹介しておりますが、当初の目的であった課題の解決として、利用者にとっての理想のケアや、オペレーションにおける職員の業務効率や負担が、軽減できているかを検証することが重要です。プロジェクトチームとして、介護現場に勤務する職員への調査や意見交換、また必要に応じたヒアリング調査やケアの実施状況の分析などを行い、うまくいっていない場合は、改善策を検討しましょう。場合によっては、導入した機器メーカーに問い合わせ、改めて使用方法について、相談してみることも有用です。

※ この記事は月刊誌「WAM」2022年12月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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