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介護現場でのICT活用
〜企画・導入・運用〜


 全12回に渡って、介護施設でのICTの導入における企画・導入・運用のポイントについてをお届けします。


<執筆>
 社会福祉法人善光会 理事 宮本 隆史 氏


第4回:タブレット型介護記録システム導入効果・注意点

 これまで本連載では、2回に渡り「ICT機器の導入に向けた手順」を解説してきました。第4回目となる本稿では、介護事業所向けの代表的なICTである「タブレット型介護記録システム」の導入効果や注意点について、具体的な事例を交えながら解説します。なお、社会福祉法人善光会では、2009年から介護記録の電子化(自社システム開発)に取り組んできました。現在、特養などの入所系サービスは、各ユニットと浴室にiPadを1台ずつ配置し、介護スタッフが介助の傍らで介護記録を入力できる環境を整えています。また、介護ソフトは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)から助成を受けて自社開発した「SCOP(スマート介護オペレーションプラットフォーム)」を使用しています。

タブレット型介護記録ソフト導入効果

 タブレット型介護記録ソフトの主な導入効果は、以下の3点です。1つずつ見ていきましょう。

@ 記録や申し送りに関する業務の時間削減

 現在多くの高齢者施設では、介護記録の記入が業務負担となり、介護スタッフの休憩時間の短縮や残業が発生しています。タブレット型介護記録ソフトを使用すると、記録業務の効率化を実現し、この問題の改善に寄与します。

 例えば、PCで使用する介護ソフトと手書きの介護記録を併用している場合、手書きで記入した記録(食事・水分摂取・排泄、等)をPCで転記するという重複作業が発生しますが、タブレット型介護記録ソフトを使用すると、この重複作業が原則すべてなくなります。また、手書きの連絡ノートを用いて申し送りを行っている場合、ご利用者の傷や皮膚トラブルの状況を文章でわかりやすく表現することは介護スタッフの多大な労力となりますが、タブレット型介護記録ソフトを使用すると、写真や動画を使って少ない手間で正確に情報共有することができるようになります。

 実際、弊会の場合は、介護記録を電子化したことで、それまで記録にかかっていた時間を▲76.1%、申し送りや伝達にかかっていた時間を▲74.1%削減することに成功しました(図1参照)。また創出した時間は、職員の休憩時間の確保に加えて、レクリエーションや個別ケアなどのQOL向上に繋がる支援の充実にあてることができています(図2参照)。

A ケアの質の向上

 タブレット型介護記録ソフトは、導入することで、職員の業務負担が軽減されるだけではなく、ケアの質の向上にも寄与します。なぜなら多職種を含めた職員同士の連携や連動が促進されるためです。

 例えば、高齢者施設によっては、慢性的な人手不足の影響で、施設ケアマネジャーが作成したケアプランを担当フロアの介護スタッフが充分に確認できずにケアを行っているという実態もあるとうかがいます。しかし、タブレット型の介護記録ソフトを導入すると、介護スタッフはファイリングされたケアプランを所定の場所に取りに行かなくても、タブレットで簡単に確認することができるようになるため、個別ケアの促進に繋がります。また、看護師やケアマネジャー、PT/OT/ST、栄養士などの専門職は、介護スタッフが入力した記録の中から自分が必要とする情報にいつでもアクセスでき、そのうえ、写真や動画を使ってご利用者の状態にあわせた支援方法(臥床の姿勢や処置の方法等)をチームで効率よく共有できるようになるため、さらなるケアの質の向上に繋がります。

B ペーパーレス化の促進

 高齢者施設では、令和3年度の介護報酬改定によって、それまでローカルルールだった「記録の電子保存」が全国的に認められることとなりました。タブレット型介護記録ソフトを導入すると、それまで紙の状態で3〜5年間も保管していた介護記録が、ハードディスクやクラウド上に保管できるようになるため、ペーパーレス化が大幅に進みます。

 実際、導入した施設からは「ダンボールで50箱もあった紙の介護記録が、処分できるようになった」などの声や「倉庫がすっきりしたので、消耗品が適切に在庫管理できるようになった」、「各フロアに災害時の備蓄品を置くスペースが取れるようになった」などの施設内環境が改善されたという声をお聞きしています。このように、タブレット型介護記録ソフトの導入は、大幅なペーパーレス化によって、施設内環境の整備にも寄与します。

タブレット型介護記録ソフト導入時の注意点

 ここまで説明した通り、タブレット型介護記録ソフトにはさまざまなメリットがあります。一方で、スムーズに導入していくためには、以下の2点をしっかり留意していくことが肝要です。

@ 文章入力方法の選択肢の充実

 今日、多くの高齢者施設では、10代〜20代の若手から60代以上のシニアまで、幅広い年代の介護スタッフが勤務しています。各年代によって、得意としている文章入力方法が異なるため、タブレット型介護記録ソフトを導入する際は、文章の入力手段を充実させることが重要です。

 例えば、タブレットでは、Bluetooth接続のキーボードを使った「ローマ字入力」ができるようにすることに加えて、「フリック入力」や「ひらがな入力」もできるように初期設定することをお勧めします。また、職員の中には、自分のスマートフォンを持っておらず、タッチパネルで文字を入力することに慣れていない人もいるため、タブレットは「音声入力」や「デジタルペン」も活用できるように環境整備するとよいでしょう。

A 適切なデバイスの選定

 初めてタブレットを購入する施設は、介護記録ソフトの対応状況や相性だけでなく、介護記録ソフト以外での使用用途も考慮して選定することをお勧めします。

 例えば、値段が安いという理由から画面の小さいタブレットを購入したものの、「ご利用者がオンライン面会の時に、画面が小さすぎてご家族を認知できなかった」、「オンラインで社外研修に参加した際、研修の資料が小さくて読めなかった」などの失敗事例は、全国各地で発生しています。また、「Android端末を導入したものの、その後新たに導入したケアテック機器が、iOSにしか対応していなかったため端末を買い替えることになってしまった」等のケースも耳にしています。このような失敗を回避するために、デバイスを選定する際、必ず現在・将来の使用用途をしっかりと吟味し、適切なスペックの機器を選択しましょう。

※ この記事は月刊誌「WAM」2023年1月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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