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第2回:高齢者救急に着目した患者獲得機会の創出
    〜救急患者連携搬送料〜

 前回は、2024(令和6)年度診療報酬改定が非常にメッセージ性の強い内容となっていることを具体的な診療報酬項目に沿ってお伝えしました。今回は、介護給付費分科会との意見交換会でのテーマの一つにあげられていた「要介護者等の高齢者に対応した急性期入院医療」に着目し、新設の診療報酬を例に病院経営における活用ポイントを解説します。

救急患者の転院搬送(いわゆる「下り搬送」)に対する評価が新設

 総務省消防庁発出の「救急・救助の現況」によると、高齢者の救急搬送患者は平成22年から令和2年にかけて76.1万人増加し、この10年間で1.3倍増と一貫して増加傾向にあります。また、救急搬送される高齢者のなかでも「軽症」、「中等症」を含む多くの患者が、高度急性期・急性期病院へ救急搬送されることで患者集中を招いているとされています。そのため、高度・専門的治療を必要とする患者の受け入れに影響を与えてしまい、救急医療における大きな課題として問題視されています。

 このような高齢者の軽症・中等症の急性疾患に対する救急需要の増加に対応しつつ、医療機能分化・強化を促進するための手段として、「救急患者連携搬送料」が新設されました。救急患者連携搬送料は初期診療後の救急患者の転院搬送を評価するものであり、救急現場の課題の解消が期待される新しい診療報酬です。

 この「救急患者連携搬送料」は、救急外来を受診した患者に初期診療を実施し、その後連携関係にある他院において入院医療を提供する目的で搬送(いわゆる「下り搬送」)を行った場合に、初期診療を行った病院で算定が可能です。算定区分は、表の通り4つに区分されており、とくに入院必要性を判断し的確に病床活用した場合の初期診療に高い点数が設定されています。

 また、搬送時には医師、看護師または救急救命士の同乗が条件となっており、救急搬送診療料は別に算定できないこととされています。


表1

高度急性期・急性期を前提とした施設基準

 救急患者連携搬送料の施設基準は次の通りです。

(1) 救急用の自動車又は救急医療用のヘリコプターによる救急搬送件数が、年間で2,000件以上。

(2) 受入先候補となる他院の受入可能な疾患や病態について、地域のメディカルコントロール協議会等と協議を行った上で、候補となる保険医療機関のリストを作成。

(3) 搬送患者の診療について転院搬送先からの相談に応じる体制及び、搬送を行った患者が急変した場合等に必要に応じて再度当該患者を受け入れる体制を有する。

(4) 毎年8月において、他の保険医療機関への搬送の状況について報告。



 救急患者連携搬送料を算定する医療機関は、三次救急レベルの医療機関が想定されているため、施設基準の水準はかなり高く設定されています。類似する施設基準は地域医療体制確保加算などがあり、やはり一定水準以上の急性期医療を担う病院を想定したものとなっています。

 では、三次救急以外の医療機関にはまったく関係のない診療報酬なのでしょうか。一概にそうとは限りません。


転院搬送先にとって新たな患者獲得機会となるか

 救急患者連携搬送料は、転院搬送患者を受け入れる医療機関にとっても患者獲得の有効な機会であるといえます。転院搬送先となれば、通常の救急隊からの救急搬送以外の患者獲得手段となるからです。加えて、初期診療を他院で終えてから搬送されてくるため、必要な診療情報を事前に入手することができ、スムーズな受け入れが可能となります。新たな患者を獲得する機会を逃さないためにも、あらかじめ自院で受け入れ可能な疾患・病態像を明らかにしたうえで、受け入れ態勢を整備しておくことが重要です。


@ 自院の診療範囲確認

 まず、自院での緊急入院可能な診療機能や範囲を明確にすることが必要です。どのような手術や治療なら対応できるのか、また院内外含めた情報連携が容易にできる環境(人員体制やハード面も含め)が整備できていなければ、救急患者連携搬送料の届出病院から連携先の候補にはあげられません。


A 近隣急性期病院との位置関係把握

 次に、近隣の高度急性期や急性期病院との位置関係の把握が必要です。転院搬送時には医師や看護師または救急救命士の同乗が必要なため、転院搬送を行う医療機関へのアクセスの容易さは意外と重要です。また、搬送に30分以上を要する場合、三次救急病院等側では救急搬送診療料(1300点)+長時間加算(700点)の方が算定効率がよいこともあり、積極的な連携が見込めない場合もあります。


B 転院搬送受入の需要見込み

 そして最後に自院における転院搬送受入の前年度実績の確認です。すでに転院搬送受入の実績がある医療機関は連携先候補として認知されやすく、救急患者連携搬送料という新設の診療報酬を新たなメリットとして営業し、さらなる紹介患者の獲得の機会とできるのではないでしょうか。

 以上のように一見、転院搬送を行う高度急性期・急性期病院にとってのメリットのみが注目されがちですが、転院搬送を受ける側としても患者獲得という好機として捉えることもできます。


算定要件における留意事項

 厚生労働省より公示されている「医科診療報酬点数表に関する事項」では、救急患者連携搬送料に関する算定上の留意事項が記載されています。そのなかでも算定不可となる留意事項についての抜粋が次の通りです。

(1) 搬送された後に当該患者が搬送先の保険医療機関に入院しなかった場合には算定できない。

(2) より高度で専門的な体制を有する医療機関に搬送する場合や、初期診療を行った医療機関において入院医療の提供を行っていない診療科に係る入院医療を提供するために、他の医療機関に搬送する場合等は算定できない。


 (1)は搬送先で入院治療がなされなかった場合は算定不可とされており、転院搬送先の医療機関において必ず入院措置が行えるよう、受入ベッドの確保が必要です。しかし、いつ転院搬送依頼があるかもわからない状況で、一定の空床確保を行うのは病院経営上大きなロスとなります。受入基準や病床確保方針の明確化が必要です。

 (2)は転院搬送を行う医療機関側の要件で、「どんな症状でもいったん受け入れる」は算定不可であるとされています。連携する双方の医療機関の入院診療機能を適切に把握することが必要です。


高齢者の救急医療ニーズをどう病院経営に活かすか

 救急患者連携搬送料は三次救急等側の視点に立った診療報酬であるものの、転院搬送を受ける側にとって患者獲得機会の可能性を生み出す好機でもあります。この医療ニーズはまた新たな診療報酬へと派生しています。救急患者連携搬送料による入院受入を一定の要件とする「地域包括医療病棟入院料」という新たな入院料や、地域包括ケア病棟入院料における在宅患者支援病床初期加算の対象患者となるなど、高齢者の医療ニーズに呼応する診療報酬が次々と新設・要件変更されています。

 今次改定の流れを踏まえ、自院が果たすべき役割を模索することが病院経営に寄与するポイントの一つとなるはずです。



※ この記事は月刊誌「WAM」2024年5月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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