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第3回:地域包括医療病棟入院料の転換に向けた考察

 2024(令和6)年度改定で最も注目すべき改定の一つが、地域包括医療病棟入院料(3050点/1日)の新設ではないでしょうか。前回も触れたとおり、高齢者の救急搬送の受け入れや、軽症・中等症の高齢者の入院受け入れは大きな課題とされています。加えて、急性期病院入院中に高齢者のADLが低下し、在宅復帰を困難にしているとのデータも示されています。そうしたニーズに対応するために新設されたのが、地域包括医療病棟入院料です。今回は、地域包括医療病棟入院料について、転換を行う場合に留意したい点を考察します。

施設基準と包括範囲から見る特徴


@ 特徴的な施設基準

 地域包括医療病棟入院料の特徴は、高齢者の救急受け入れと早期の在宅復帰を想定している点です。特徴的な施設基準をあげてみます。@入棟初日の重症度、医療・看護必要度B項目該当患者割合が5割以上、A入院患者に占める救急搬送患者割合が15%以上(他院でC004-2救急患者連携搬送料を算定し直接入棟した患者を含む)、B第二次救急医療機関または救急告示病院、CADL低下患者割合が5%未満、D在宅復帰率8割以上などを病棟ごとに満たす必要があります。


A 他の入院料との比較

 表は、地域包括医療病棟入院料へ転換が見込まれる入院料と施設基準を比較したものです。


表1


 地域包括医療病棟入院料は包括点数のため、出来高の急性期一般入院料と一概に点数の比較はできません。よって本稿では施設基準による比較を行います。施設基準上、大きな違いは看護職員配置と平均在院日数、重症度、医療・看護必要度です。看護職員配置基準が異なるということは、人件費の大部分を占める看護師が少なくて済む、つまり、地域包括医療病棟は7対1に比べると低コストで運用できるのです。具体的には、40人の入院患者に対し7対1配置は3交代制で看護職員が1日18人以上必要なのに対し、10対1配置は3交代制で1日12人以上で済みます。

 地域包括医療病棟入院料は包括入院料です。包括範囲は検査(心臓カテーテル検査、内視鏡検査、検体採取料等を除く)、投薬・注射(除外薬剤除く)、1000点未満の処置等となっています。そのため、包括範囲の医療行為が少ない患者や、リハビリや手術を除いた単価が低い患者を一定程度受け入れている医療機関は、転換検討の余地があるでしょう。まずは自院の入院患者における対象となり得る患者を洗い出し、これらの患者で施設基準を満たせるのかを確認する必要があります。

施設基準クリアのポイントと厚生労働省の狙い

 地域包括医療病棟入院料は、在宅復帰率80%以上を満たす必要があります。実績にカウントできる施設等には、介護老人保健施設(療養型・その他型以外)と回復期リハビリテーション病棟が含まれます。高い在宅復帰率要件を満たすには、既存の受け入れ先以外に、これらの施設等を活用する必要があります。一方で、回復期リハビリテーション病棟以外の病棟への転棟・転院は在宅復帰率の評価対象とはなりません。回復期リハビリテーション病棟入院料対象疾患の治療を地域包括医療病棟で行い、回復期リハビリテーション病棟に転棟させるといった活用が想定されます。

 こうした点からも、高度急性期病床機能の一部を地域包括医療病棟入院料に担わせようとする、厚生労働省の狙いがわかります。

 また、一般病棟から地域包括医療病棟への転棟は5%未満とされています。内科系患者を一般病棟から地域包括ケア病棟へ転棟させ稼働率を上げている医療機関が転換を検討する場合は、地域包括医療病棟と地域包括ケア病棟で役割を明確にすることが必要です。


今後の展望

 病床を転換し、その後も機能を維持できるかといった不安はつきものです。急性期一般入院料1も含めた地域包括医療病棟入院料の今後を考察します。


@ 急性期一般入院料1の今後

 昨年(2023年)の中央社会保険医療協議会では、全国の病床数推移について「届出病床数は、急性期一般入院料1が最も多く、平成26(2014)年以降減少傾向であったが、令和3(2021)年から微増している」と評価しています。

 2024(令和6)年度診療報酬改定では、急性期一般入院料1の平均在院日数要件が短縮され、重症度、医療・看護必要度の該当患者割合と項目は厳格化されました。厳格化により、医療機関間の機能分化をより押し進めようとしているのです。この流れは、近年継続しており、医療機関間の機能分化が一定程度進んだと厚生労働省が判断するまで続くことが予想されます。急性期一般入院料1を算定する中小病院にとっては厳しい状況が続くでしょう。

 そうした医療機関で転換先として検討にあがるのが、地域包括医療病棟ではないでしょうか。


A 地域包括医療病棟入院料の今後

 厚生労働省は2040年に全国での入院患者数がピークを迎え、そのうち65歳以上が約8割を占めると見込んでいます(図)。高齢者の救急と入院の受け皿として、高度急性期以外の病床、つまり、地域包括医療病棟入院料などの病床機能が必要と考えられます。2040年ごろまでは、地域包括医療病棟への転換促進や機能維持に向けた政策が採られると推測できるでしょう。

 一方、基本点数や施設基準は今後、どのような変遷をたどるのでしょうか。診療報酬に関する議論を行う中央社会保険医療協議会では、「入院料本来の役割を果たしているか」、「医療資源投入量にみあった点数か」などといった点で議論が行われ、改定に反映されます。実際に、地域包括ケア病棟入院料では医療資源投入量が入院初期以降は急激に下降するデータが示され、2024(令和6)年度改定で入院料が入院期間に応じ逓減する2段階の点数とされました。

 地域包括医療病棟入院料は「高齢者の救急受入と在宅復帰」が役割として想定されています。次期改定以降は、例えば救急受け入れ15%以上の要件厳格化やADLのアウトカム評価の導入など、さらなる厳格化が図られることもあり得ます。しかし、厳格化が進められていくとしても徐々に行われると考えられることから、新設時の比較的施設基準が緩い時点での届出が有利です。

 今後の医療需要を踏まえた経営施策の一案として、病床機能転換を視野に検討してみてはいかがでしょうか。


図1


※ 弊社ホームページ(https://www.kawahara-group.co.jp)にて、地域包括医療病棟入院料の詳細な転換シミュレーション事例を掲載しています。あわせてご覧ください。



※ この記事は月刊誌「WAM」2024年6月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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