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人材確保難時代の経営戦略について

 全6回に渡って、「人材」をテーマにお届けします。


<執筆>
 社会福祉法人伸こう福祉会 理事長 足立聖子 氏
米国ウィスコンシン大学社会学老年学専攻B.A卒業後、製薬会社勤務を経て、2000年社会福祉法人伸こう福祉会(神奈川県)に入職。「特別養護老人ホーム クロスハート栄・横浜」施設長、「横浜市屏風ヶ浦地域ケアプラザ」所長等を経て、2010 年同法人理事長に就任。2014 年優れた社会企業家を発掘・支援する「シュワブ財団」による「社会企業家2014」に同法人創業者とともに選出。


第1回:「人材難」って・・・?

予想より早く「人手不足感」が蔓延

 社会福祉法人伸こう福祉会理事長の足立聖子と申します。これから6回、皆様に「人材」をテーマにいろいろとお伝えしてまいります。
 さて、ここ2〜3年、いたるところで「人材難」という言葉を聞くようになりました。福祉業界のみならず、サービス業や飲食業、小売業、建設業など、いずれも「人」が支えている仕事ばかりです。要因としてまず考えられることは、2011年の東日本大震災です。8年以上が経った今でも、被災地の復興の進み具合には地域差があります。順調に復興が進んだ自治体であっても、インフラ整備に多くの人手を必要としたことで、別の場所で人手不足が生じたということもあるそうです。震災以外にも、2020年のオリンピック開催や外国からの観光客、いわゆる「インバウンド」の急増等によってサービス業、飲食業、小売業などの需要が増え、その結果、働く人も足りなくなってきたということです。
 実際、完全失業率と有効求人倍率のデータをみると(図)、有効求人倍率が上がっているのに対して、完全失業率は下がっていることがわかります。
 震災やオリンピック、インバウンド需要などが現在の人手不足を加速させたことは間違いないのですが、人口統計をみれば、少子高齢化による働き手不足は、ある程度以前から予測されていました。
 少子化の事前予測は難しくても、人口の高齢化は急に生じるわけではありません。また人間が年を取れば、当然、病気や虚弱化で生活上の支援が必要となるのですから、介護需要が増加していくことは周知の事実であったわけです。
 しかし先に述べたいくつかの「予想外の」出来事が重なり、企業による求人数自体がぐっと増えたことで、介護から別の業界に転職する方も増えました。また求職者にとっても選択肢が増えました。そこで予測より早く、すでに数年前から「人手不足感」が介護業界全体に蔓延するようになったというわけです。
 日本の総人口は8年連続で減少しています。国の予測によると、人口減少はこれから一層進んでいくとのことですから、仕事の数自体が減らない限り、もしくは労働人口の定義を変えない限り、今後も人手は充足しないでしょう。介護業界の人手不足は、もはや一時的なものではなく、未来永劫、これからも報酬改定(とくに報酬引き下げ)と並んで、福祉経営者の頭を悩ませる深刻な問題となり続けるのです。
 私たち福祉経営者にとっては、社会が抱える問題の解決こそが、自らの事業のミッションとイコールかもしれません。多額の補助金や税制優遇などの恩恵を国や自治体から受けている私たち社会福祉法人は、地域や社会の問題に真っ向から向きあい、解決に向けた策を提供していくことも必要だと、私は考えます。

完全失業率と有効求人倍率のデータ

問題を解決する具体策は

 具体的に問題を解決するためには、次の3点が必要だと考えています。

(1)労働人口を増やす

(2)仕事(求人)の数を減らす

(3)仕事のやり方を見直す

 まず(1)の「労働人口を増やす」ために、必要なことは2つあります。ひとつは、実際に人口を増やすこと。残念ながら、このテーマに対しては、われわれ福祉経営者が行えることは非常に限られます。子育て支援等を通じて女性が子どもを産み、育てやすい社会づくりの一端を担う…くらいでしょうか。もし自法人が保育所を運営しているのであれば、働く親が安心して就労できるように、質の高い保育を提供していくことも重要です。
 もうひとつ「労働人口を増やす」ために行えること、それは人々の意識を変えて、実際に労働に携わる人を増やしていくことです。総務省統計局のホームページには、労働力人口とは「15歳以上の人口のうち、『就業者』と『完全失業者』を合わせたもの」とあります。完全失業者とは「本人が仕事を探しているが、仕事ができていない」人ですから、そもそも就労意欲がない方は対象になっていません。では、現在仕事をしていない人たちに就労してもらうことは可能でしょうか? 私は、そこに福祉の出番があると思っています。
 たとえば、元気な高齢者や就労可能だが機会に恵まれていなかった障害者、専業主婦の方に「私でもできるかもしれない」と思ってもらえるよう、研修や就労の機会を提供することや、資格取得の後押しをすること。また、留学やその他の在留資格で暮らしている多くの外国人に介護の仕事に挑戦してもらうことは、人手不足解消の解決策になるかもしれません。
 そして(2)の「仕事(求人)の数を減らす」について。すでに多くの産業でロボットやAIを使うことによって人手を補うことや、サービスの無人化に成功している企業もあります。少し前ですが、「AIによりなくなる職業」が話題になったことがありました。介護士や保育士といった福祉職は、「残る職業」とされていましたが、仮に残ったとしても、現状のような深刻な人手不足が続くようであれば、自法人の経営自体が成り立たなくなってくるという懸念があります。
 そこで(3)にあげた「仕事のやり方を見直す」ことが、今、もっとも福祉経営者にとって手っ取り早く行える、そして行うべき「人材不足解決策」であると私は思います。
 2000年に介護保険法が施行されて以来、介護施設は「利用者から選ばれる施設」となるべく、さまざまな努力を重ねてきました。またこの法律をきっかけに、高齢者介護という領域が「家庭のなかの営み」から、「社会資源のひとつ」となり、格段に認知度があがりました。とりわけ認知症ケアや看取りなどについて多くの人が興味を持ち、考えるようになったことは、素晴らしい変化だと思います。しかしその反面、介護現場はずいぶんこの20年間で多くのプレッシャーにさらされるようになり、やるべき仕事も増えてきました。
 介護のプロとして、多くの方に必要とされることは、とても喜ばしいことです。しかし、プレッシャーや身体的な負担が高まることで、離職に追い込まれる介護職がいるのも、また事実です。では、福祉経営者は何をすべきか?
 改めて施設の仕事の流れを見直す時期であると思います。施設の構造、業務の流れ、これまで当たり前になっていた独自の方針…このうち、ひとつでもスタッフにとって過度に時間や心身的な負担となっているものがあれば、また離職する職員がいるのであれば、経営者としてはある一定の資金を投じてでも、そのやり方を変えなくてはなりません。
 なぜならば、「人」(利用者でもスタッフでも)がいなくなった施設は、もはやその役割を果たせず、福祉施設とはいえないからです。
 今まで採用経費に使っていたお金の一部を、「仕事のやり方の改善」に使うことを考えてみてください。たとえばITやAIを使った見守りや記録システムなどにはずいぶんよいものがたくさん出ています。持ち上げない介護、「ノーリフト」導入により、短期的にはひとつの業務に時間がかかるようになっても、腰痛で離職を余儀なくされるスタッフが増えるより、長期的に見れば経営数字はよくなるかもしれません。
 少し先の未来を見据え、今、どこに投資するか? これから一緒に考えていきましょう!

※ この記事は月刊誌「WAM」2019年10月号に掲載された記事を一部編集したものです。
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